いきなりの衝撃的展開!
ここで、いきなり難しい話をするわね。
アタシたちムーサイは神だけど、一度やってしまったことは、途中でナシにはできないの。
それは、他のオリュンポスの神ももちろん同じで、アポローンさんだって、完璧な未来予知はできるけど、現状を曲げて、未来を変えることはできないわ。
どうしてかというと、物事は複雑に関係していて、ひとつを動かすと、他のものもつられて動いてしまうからなのね。
だから、どっかの神さまが、自分に都合のいいように過去の何かを動かしてしまったとすると、現在が変わってしまって、他の神さまの邪魔をしてしまうのよ。
ということで、もしアタシたちが何かをやり直そうとしたら、物語が終了してから、ふたたびスタート地点まで戻って、やり直しをする、という手順を取らなければならないのよ。
ストーリーが終了した時点で、それらが未来に与える影響を精査し、やり直しの可能な範囲を測定するの。
影響範囲が確定すると、それを超えない範囲でやり直しするって段取りなのね。
それが、余計な影響を他に与えないための、厳正なルールなの。
……とはいえ、目的を果たすまで、同じ時間を繰り返すアルテウスの一件は、オリュンポスの約束破りだから、ここだけのハナシね。
そういうことで、いままでうかうかと進んでしまった主人公(仮名)ちゃんの物語を、今いきなりひっくり返すわけにはいかないし、デウス・エクス・マーキナーを投入することも、現状ではままならないってことが、おわかりになるでしょう?
全く、それというのも、メルポメネーの邪魔のせいなんだから!
……???
いや、なにかおかしいわ。
アタシの中で、何かが引っ掛かっているのよ。
そもそも、どうしてメルポメネーは、わざわざアタシの邪魔を何度もするのかしら?
その行動に、まともな意味が見いだせないけど。
……それが、本当に、ただの邪魔やイタズラだと考えるならね。
でも、別に意味があれば?
たとえば……陽動とか。
ぎくりとするアタシ。
まさかっ……!
手賀沼公園の、親水広場まで、集まった人たちを先導したキースズは、ひといきついていたわ。
まだ時刻は午前中で、親水広場では、子供たちとそのお母さんが一緒に遊んでいるの。
キースズは、集まった人たちの中に、異彩を放つ人物が紛れ込んでいることに気が付いたのね。
その人は、仕立てのいいスーツを着込んでいて、背も高くスリムで、顔も知的かつハンサムな、すごい二枚目の外人なの!
って、やっぱり!
アポローンさんじゃないの!!!
なんで、そんなところに?
ここでアタシは視点を変えたわ。
でも、まさか、そんな……?
ない!
脇役(仮名)ちゃんの、視点がないわ??
つまり、彼女は……もう、この世にはいないっていうこと……よ。
そして、元カレくんの視点も……。
ひどい!
アポローンさんと言えども、ひどすぎるわ!!
いくら人間だからって、好き勝手に殺すなんて、あんまりよ!
なにより、あの二人はアタシのストーリーに出てくるキャラクターなのに……。
アポローンさんは、顔を上げたわ。
アタシを見てる……。
目が、合ってしまったわ?
整った白皙は全くの無表情。
でも、まだ何かを待っているほのかな光が、双眸をたゆたっている……。
危険を察知したアタシは、とっさに主人公(仮名)ちゃんのところへワープ。
主人公(仮名)ちゃんは、待ち合わせ場所だった、鳥の博物館の前、手賀沼公園を囲む道路で電話しているわ。
その目の前、まさに鳥の博物館から、ガベジくんが出てきたの。
その二人が、お互いに道路を渡り……。
その瞬間、実体化したアタシは、二人に声をかけたわ。
「危ない! その場から動かないで!」
ア――――――――(゜Д゜;)―――――――――ッ!!!
春になると思いだすのが、昔、からあげくんをテーブルの上に置きっぱなしにして、窓を開けたまま出かけていたら、侵入した野良猫にからあげくんをとられてしまったことを思い出すわね。しかも、ノミを置き土産にしてくれちゃって、最初、一体何の虫だか分らなかったのよ?
ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?




