おっぱい好き過ぎりょうたくん
いや~、パンダって、意外とでかいのね……。
しかも、ぜんぜんやる気なくて、アタシが見てる間、ずーっと、ごろごろしてたわ。
まあ、気持ちもわからないでもないけどね。
そりゃ一日中見られてりゃ、今アタシ、超目立ってる! なんて楽しさは吹っ飛んじゃうかもねぇ……。
なかでも、いちばんおっかしいよね~と感じたのは、パンダが汚れていて、白いはずの部分が、茶色になっていたことよ。
白と黒ってのがすでにパンダの代名詞になっているのに、ジャロって何じゃろ?ってカンジよね。
まあ、いいわ。
結局、アタシの間違った期待があったせいで、がっかりしちゃっただけだし、こっそり侵入したから、お金は損してないし、ペンギンちゃんたちが想像以上にかわゆ~だったから、後悔はしていないわ。
ちょっとおなかがすいたから、そろそろご飯にしましょうかね。
さっき、ビッグイシューという雑誌を販売している新聞売りっぽいおじさんとしゃべってて、宿もお金もないって話をしたら、気の毒がって、賞味期限切れのクリームパンをもらってしまったわ。
ニホン人って、みんなとてもやさしいのね!
本屋でケンカしたラカンブンマイさんの言うとおりだったわ!
さっそく、上野公園のベンチでいただきます!
あま~い!!!
マリオさんは、幸いなことに峠を越えて、命に別状はなくなったわ。
まだ、意識は戻っていないけれど、主人公(仮名)ちゃんは、付き添いで、一晩中病院にいるハメになったのよ。
で、朝っぱらに、病室で居眠りしている主人公(仮名)ちゃんは、数人の足音や声で、叩き起こされたわ。
三十代前半くらいの女性と、小さな子供が二人だったの。
女性は言ったわ。
「マー君! 大丈夫? 単身赴任なんて、やっぱりやめればよかったのに!」
「パパー! 何やってんのー?」
「まま、ぱぱ、ねてるー」
寝ぼけた頭で、事態が呑み込めない主人公(仮名)ちゃん。
入ってきた女性は、主人公(仮名)ちゃんに、不思議そうにじっと見ながら言ったわ。
「付き添ってくださって、ありがとうございます。
あなたは……?」
「バ、バイトっす。
昨日は、店長と飲んでて……ちょっとグチ聞いてもらっちゃってて」
とっさに嘘をつく主人公(仮名)ちゃん。
「どうも、ご迷惑をおかけしてしまいまして……マリオに代わりまして、お詫びいたします。
初めまして、マリオの妻の、ピーチです。
こっちは子供……こらっ! おとなしくしなさい!」
「あ……そうすか」
結局、マリオさんには、実はお嫁さんとお子さんがいたのね。
事態を察した、主人公(仮名)ちゃんは、すぐに脇役(仮名)ちゃんをスマホで呼び出したわ。
ぐったりして助手席のシートに沈み込む主人公(仮名)ちゃん。
ハンドルを握る脇役(仮名)ちゃんは、大あくび。
「あー、うちもオールだよ。
昨日、またドンキでショッピングしててさ~
ガベジが金返しに来てさ」
「あいつの話題はあまり聞きたくないな……。
どうも、黄金色が頭に染み付いちゃって。
脇役(仮名)は、いいよね、毎日が充実してて」
「主人公(仮名)もジュージツしてたんじゃねーの?
男の家に泊まったんだろ?
どうだった?」
「どうもこうもないよ。
途中で、心臓が止まっちゃったんだからさ」
「あれ?
マリオのキノコ食ってねーの?
下の口から」
「食ってねーよ!
寸止めだった」
「そりゃマリオ、カワイソーだったな。
スーパーキノコは食えても、オンナは食えなかったか~」
「でも、ちゃっかりピーチ姫はゲットしてたけどね。
やる前に、キノコ食わなかったから、ダメだったんじゃない?」
「いまどき、キノコはねーよ。
今は、風船のがはやってるらしい」
「フーセン?
そういえば、マリオさんゴム着けてたっけ」
「そればっかだな。
そんなにヤリたい雰囲気味わいたいんだったら、AVでも見れば?」
「見たことあんの?」
「うん。
昔のカレシに見せられたことある。
Hなお笑いみたいだったな~、おっぱい好き過ぎりょうたくんとか、そんな変なヤツ。
あーゆーの作ってんのって、完全にバカだわ」
「ちょっと借りてみようかな……じゃさ、駅の近所のゲオに降ろしてよ。
郵便局の近く」
「マジで借りんのかよ!」
「ついてきて。
経験者の目で、一番雰囲気あるやつ教えて~!」
なんだか迷走しているようだけど、主人公(仮名)ちゃんも良かったじゃない!
下手に妻子持ちに深入りすると、オンナの旬を捨てちゃうおそれもあるんだから、気を付けるのよ!
このところ、レンタルDVDといえば、ツタヤかゲオばかりになってしまったわね~。
十年位前は、VHSとDVDが半々で、個人経営みたいなところも結構あったのにね。
もっとも、個人経営のところと、ツタヤとかゲオが並んでたらどっちはいるかって言ったら、当然、ツタヤだけどね。
ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?