ふたりのプロトコル
アタシの格好ってヘンだったのかしら? 急に日本来たから、わかんないことだらけだわ。
そういえば、アポローンさんが手配してくれたホテル来たとき、その辺を歩いていたお年寄りの人たちが、
『あんたもコスプレかい?』
とか、言ってたわね。『コスプレ』がちょっとよくわかんなかったけど、当然アタシは、
『仕事です』
と返すと、しゃっしゃっしゃっしゃっ! とか笑ってたよね。
で、せんろっぴゃくえん払って、ホテルにチェックインしたわけだけど、東京ニトロ?っていうのに乗ろうとしたら、旅行者らしき集団に、
『オー、××××××××××』(←よくわかんなかったの)
とか言われて、いっぱい写真とられたわ。
でも、握手したり、いっしょに手でハート作ってツーショットとったりして、すっごく好評だったんだけど!
アポローンさんって、意外とセンスないのかも。そう思わない?
「メシ食わしてよ」
あがりこむなり、いきなり食事を要求するなんてずうずうしい子ね!
そういえば、脇役(仮名)ちゃんのプロフィールを教えてなかったわよね。
身長157センチ、体重48キロ、バスト79センチ、ウエスト61センチ、ヒップ80センチ
金髪のナチュラルストレートボブで、お肌は小麦色なのよ? 春先なのに、平成27年なのに。
「なにがいいの?」
脇役(仮名)ちゃんの要求にも動じることなく、平然と返す主人公(仮名)ちゃん。
ふと、にやっと笑って、
「カーレ? チャハーン?」
脇役(仮名)ちゃんも、にやっと笑って
「チャハーン」
二人で顔を見合わせると、
「「ウククク」」
と笑ってるわ。
イケメン(仮名)くんは、首をかしげて、
「あ? 何言ってんだよ」
と不思議顔。あと、ちょっとオラついているわね。カッコいいわぁ。
そしてさりげなく提案。
「つか、近所にガチでラーメンのウメーとこあっからよ。そこ行かね? いきなりメシ作らせるって、なんかワリーじゃん」
それに、優しい! これじゃ主人公(仮名)ちゃんが一目ぼれするのも、仕方ないわねぇ。
すると、脇役(仮名)ちゃんが、
「あーわりい。ダメだわ、こいつラメーン嫌いだから」
と、主人公(仮名)ちゃんを指さして、脇役(仮名)ちゃんはイケメン(仮名)くんの提案を却下。
イケメン(仮名)くんは、顔をしかめて、
「あ? 何だよそれ」
「しょーがねーじゃん、好き嫌いなんだからさ」
「ちげーよ。そのヘンな言い方、なんなんだよ。ラメーンとかってよ。ラーメンだっつってんだろが」
「あ? ラメーンだよ。な?」
なにげに険悪な空気の中、いきなり振られてドギマギする主人公(仮名)ちゃん。びくつきながら、
「う……うん、ラメーン」
そして、二人は顔を見合わせて、笑うわけ。
「「ウククク」」
うんざりしたようなイケメン(仮名)くんと、脇役(仮名)ちゃんを居間に置いてきぼりにして、主人公(仮名)ちゃんは、キッチンへと退避。
でも1Kだから、二人の会話が、わりとダイレクトに聞こえてきたわ。
「つか、オレ、手料理って食えねーんだよ。なんか人の作ったモンとかって、口に入れるのためらったりしねえ? おにぎりとかもう、ぜんぜんダメだわ」
「ラーメンだって人が作ってんじゃん」
「あーゆーのはイイんだよ。人が作ってるってわかりづれーじゃん。でもよー、知ってる奴の手で作られるカンジのは、ガマンできねー」
「そーゆーなって。主人公(仮名)のはマジでウメーから。うち、いつも食わしてもらってんもん」
聞き耳を立てていた主人公(仮名)ちゃんは、すっかり落ち込んでしまったわ。
無表情に冷蔵庫をがバッと開けたの。そしたら、納豆のたれが数袋(使い残した)と、表面がちょっとカピってるかまぼこ半分、ブロッコリーの幹?しか入ってなかったわ……。
でも、ごはんはいつも炊いてあるのが、主人公(仮名)ちゃんスタイル。
(どーせ、わたしのゴハン食べたくない人に食わすんだから、こんなもんでいいや……。つか、ここからがわたしの本領発揮ってやつ? ふへへ)
さっそく主人公(仮名)ちゃんは、シンクのわきに置いてある消毒スプレーをぷしゅぷしゅと手のひらに吹いたの。
夏場のご飯って、ラップかけて冷蔵庫に入れて、水滴だらけになるよりは、保温で炊飯器に入れっぱなしにしておくほうが、腐らないような気がしない? ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?