はじまりのはじまり
ところでアタシって、いつも木蔦のティアラつけて、白のキャミワンピ着て、ショートブーツをはいてるんだけど、ほかに持ち物あるわけ。ヘンな仮面でしょ? ラッパでしょ? あと、メガホン。
なんでっていうか、これ制服みたいなもんなのよ、アタシらムーサイの中で決めたのね、すっごい昔に。
で、こないだアポローンさんに会ったんだけど。
アイツさ、なんかブランド物のスーツでばっちしキメちゃってんの!
で、アタシに言うわけ。
『キミさ、なんでそんなチンドン屋みたいなカッコしてんの?』
……はあぁ?
っつーか、別に好きでやってんじゃないんですけど!
こっちだって、もっとシャレオツしてえよ!
でもリーダーがうるっせーから従ってるだけだっつーの!
あ~あ、カリオペーの仕切り、ガチでウゼえ……。
時は現代。ところは日本。
ある地方都市のワンルームマンションで、一人暮らししてる女の子が主人公。
身長175センチ、体重70キロ、バストが108センチ、ウエストは68センチ、ヒップなら110センチ。
髪は黒で腰まであるウェービー、いわゆる天パ。
目も黒。ド近眼だから、メガネ着用。
カオはフツー。メガネとっても美女にはならないわ。ジミ顔。
日焼けはしてないの。だってほとんど家に引きこもってるからね。
当年とって20歳。
名前は……え~……名前はね……そおねえ、名前は…………あー、とりあえず、今は
主人公(仮名)ちゃん
にしとくわね!
で、主人公(仮名)ちゃんは今日も今日とて、真昼間から惰眠をむさぼっているわ。
布団にくるまって、ふかー、くすー、とか寝息を立てて、あまつさえヨダレまでも、たらしているのよ。
季節は春だし、一番寝るのに気持ちいい時期だし、バイト以外にやることないから、ほんと自由でいいわよね。
と、そこへドアホンがポロンピロン鳴りだしたの。
のそのそ起き出した主人公(仮名)ちゃんは、枕元のメガネをかけて、ぼさぼさアタマで、スエットのまま、ドアホンの画面を見ると、
『おーい、起きたー? うちだよーん』
としゃべっているのは、おともだちの……う~ん、おともだち……のぉ……そーね、ま、この子もひとまず
脇役(仮名)ちゃん
とでもしとくわね。ストーリー進行に、何も支障ないでしょ? だったらいいじゃないの。
「まだお昼なのに……」
ぼんやりとつぶやく主人公(仮名)ちゃん。
『重大発表!』
と、ドアホンががなってるわ。
だるそうにドアを開ける主人公(仮名)ちゃん。
入ってきた脇役(仮名)ちゃんは、とってもいい笑顔。喜色満面ってやつ。
でも、主人公(仮名)ちゃん的には、気色悪いってカンジ。
「なに? こんな時間に、非常識だよ」
と優しく諭す主人公(仮名)ちゃんに、脇役(仮名)ちゃんは、
「もう、お昼になってるやでー!」
と、これ見よがしの、いわゆる関西芸人用語の「ツッコミ」を披露。
(うっわ、一般が芸人きどりで何やってんだよ、キメェ……)
と苦渋をにじませる主人公(仮名)ちゃん。
でも、脇役(仮名)ちゃんはとまらないわ。
「レッスンゴラライ!」
ちょっと間違ってるけど、ネタとしてはこれでもつじつま合ってるわよね。って主人公(仮名)ちゃんは、
っカー!(←TVで怒った時に聞こえるアレね)
もはや苛立ちがピークに達しようとしているのね。
「ん? ん? 何だ?」
そのとき、脇役(仮名)ちゃんの後ろから(少し間違ってる)合いの手が。
でもそれは、なんてさわやかなイケメン声。
思わず脇役(仮名)ちゃんの後ろを見ると、あらいやだ。声だけじゃなく、カオもイケてるじゃない!
いやいや、カオだけじゃないわ!
細マッチョだし、ちょいワルっぽいし、なにより、主人公(仮名)ちゃんより背が高いのがガチでサイコー!
(ヤバい……! わたし、初めて人を好きになっちゃったかも……!)
感動する主人公(仮名)ちゃんに、脇役(仮名)ちゃんが一声、
「うちらさ、ケッコンすっから!」
「あ、そーなの? スゴイね……」
イケメン(仮名)くん――もう、別に断りいれなくても、いいわよね?――にドッキドキで、主人公(仮名)ちゃんは、つい聞き流していたけど、え? 今なんつった? なんかヘンなこと言ってなくね?
あわてて、聞き返したのよ。
「え? え? なんて?」
「レッスンゴーラライ! レッスンゴーラライ!」
「それはもうやめてやでー!」
ひじを直角にして、指先をそろえて、つっこむ主人公(仮名)ちゃん。自分でキメェとか思ってるくせにね。
で、脇役(仮名)ちゃんは、イケメン君と腕を組んで、
「ケッコンすんの! イケメン(仮名)とさ!」
「ウソ!?」
いきなり失恋ね。かわいそ。
つか、なかなか進まないわね……え? アタシのせい? 何か不思議なことで始まってないのはカンベンしてね。それはともかく、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?