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ブラインド・エイリアス

 ウィルビウス。

 アテーナイのテーセウスと、アマゾーンの族長の間に生まれた息子、ヒッポリュトスが、一度死んでから、森の神としてまつられた姿。

 そして、アルテミス随一のお気に入り。

 

 つまり、この世界で、アポローンさんが頭が上がらない二人のうち一人、お姉さんの愛人ってわけよ。

 ちなみに、もうひとりはお母さんのレートーさんね。

 

 「存じておりますわ。その方が何か?」

 

 「姉の言うには、ウィルビウスに対して無礼を働いたムーサがいる、ということなんだ。

  相応の報いを受けさせろ、とうるさく言ってきている」

  

 「報い?」

 

 「わかるだろ。

  動物に変身させてから、殺させてくれないかな? って頼んできているんだ。

  カリストーや、アクタイオーンのように。

  姉さんは、ちょっと狩りが好きすぎるところがあってね」

  

 まるでお姉さんの髪の色でも説明するかのような、淡々とした口調で言うアポローンさん。

  

 アタシの背筋を、冷たい感触がぞわわっと這いあがったわ。

 

 一度切れたら、どこまでも容赦ないのがアルテミス、アポローン姉弟の特徴よ!

 オリュンポスの神々が理不尽なのはデフォルトだけど、この姉弟は、その中でも刑罰の残虐性、猟奇性はトップクラスなの!

 やる。こいつらなら、絶対やる!

 

 でも、ウィルビウスなんかに、アタシ、ちょっかいかけた覚えなんか何一つないけどぉ……?

 だってあの人、セックスどころか恋愛嫌いの超硬派、ガッチガチのバンカラオヤジなんだけど。

 そんな時代遅れのつまんない奴に、誰が興味なんか持つものですか、ねぇ?

 

 あれ? でもなんか、思い出したことが……。

 

 あ!

 そ、そうだった!

 あたし、少し前に、ウィルビウスを取材したことあるわ!

 

 確か仲間のムーサイと、ウィルビウスは童貞かホモかどMか? ってことで賭けになって、つい突撃インタビューを敢行しちまったのだわ……。

 そもそも当時、アタシは作風に行き詰まって、BLとか百合とか、日の目の当たらないアンダーグラウンドなジャンルを調査していたところだったから、格好の取材対象だったのよ~!

 

 だいたい、ウィルビウスこと、元ヒッポリュトスは、なぜか男のくせに、クマ女、筋肉処女マッスルメイデンのアルテミスを崇拝したりして、恋愛侮蔑主義を標榜していたのよね。

 

 ……で、結局、本音はどうなんだよ???

 カッコつけてんのか、モーホーなのか、それとも、正常なナニでは、アレがモノの役にたたないのか……どれなんだ? おぉん?

 (一パーセントの可能性で、”実は女”説もあったわね!)

 

 と、いうわけで、アタシは奴に会いに行ったわ。

 そして、インタビューしたのよ。

 

 ……いや~、確かに、あれはまずかったかもしれないわね……。

 たぶん、てか、絶対に怒らせちゃってたわよねえ……。

 

 やっちゃったわ。

 てへ☆


 「むん……それでは、再会を祝して、ひとまず、かんぱいだ! 心地よく歓談しよう。と思う」

 三人は、ジョッキをカチンと合わせて、飲み物をぐいぐいと飲んだわ。

 

 中でも、脇役(仮名)ちゃんの飲みっぷりはとてつもなかったわね。

 最初の三秒くらいで、すでにビールの中ジョッキを全部、空けちゃったわ。

 ちなみにガベジくんは、ウーロンハイ。

 主人公(仮名)ちゃんは、いちごサワーを飲んでいるわ。

 

 「むん……ペースが速すぎるよ。

  妊娠してるんだから、母体によくない。と思う」

  

 「だよね……せめてホッピーにしとけばいいのに……」

 

 主人公(仮名)ちゃんは、いまだに、人見知りの激しい子供みたいに、下を見て、もじもじしまくっているわ。

 正直、アタシから見ても、ちょっとウザいわね。

 

 「むん……え? どうかした? と思う」

 

 いちいち聞き返すガベジくんは、本当にいい奴だと思うわ。

 脇役(仮名)ちゃんは、全然気にしてないようすで、言うの。

 

 「気にすんじゃねーよ。

  さっきも説明したじゃん、主人公(仮名)は女弁慶だからさ」

  

 女弁慶というのは、女性だけの環境だと、かなり調子に乗ってたりするのに、男が混じると途端にへなちょこになっちゃう人のことをそういうのよ!

 ちなみに、脇役(仮名)ちゃんの造語なの。

 

 「むん……昔は、全然平気だったのに。奇妙だな。と思う」

 

 「そりゃオメーが男として見られてなかったからに決まってんじゃねーかよ。

  だから、酒でも飲ましゃ、少なくとも意思疎通はできるようになるって」

  

 三人がいるのは、駅前のカラオケボックスなの。

 結局、妥協の末、酒も飲めて、騒げて、メシも食える、という条件で決めたのよ。

 

 とりあえず、何となくの気まずさをごまかすために、ガンガン飲む三人。

 

 そして、だんだん場はひどい有様になっていくのよ……。

 

 「むおう! 脇役(仮名)みたいな黒ギャル見ていると、小学生の頃、拾ったエロ本の、千人切りってのを思い出すよ!

  結局、千人切れたのか、気になるな!

  一週間で三人斬ってたと仮定すると、あれから五年と一か月と二週間かかるってことか! と感ずるっ」

 

 ……ガベジ改め、「ヘンタイ計算機マニアック・エニアック

 

 「なぁ~にが、黒ギャルじゃああぁぁ! ぐぉらあああああああぁぁぁぁ!!!!!

  うちは……うちは黒ギャルじゃないのに~! びぃえええええええええん!!!!!

  しかし、エロ本なんて、知ってんだなぁ! ぎゃはあはははあはははっはは!!!!!」

 

 ……脇役(仮名)ちゃん改め、「マルチ上戸フル・ファンネル

 

 「いい加減にしなさい? ふたりとも。

  ここがカラオケボックスだからいいけど、こんな発言他人に聞かれたらボエーッ!(←きゃっ、吐いたわ!)

  ゲス、バカ、おりこう、のレッテルがそれぞれに、張られてしまうわ? フカーッ、クスーッ(←寝てる?)

  もちろん、わたしはおりこうだから、別に今までと変わらないわけだけど、あななたちゴプァッ(←もう飲まないで!)」

 

 ……主人公(仮名)ちゃん改め、「シラフもどき(フィットネス・ウィットネス)」

 

 ああ、ついに三人の酒グセ(ブラインド・エイリアス)が発動してしまったわ!

 これでもう、カラオケボックスはさらにひどい空間になることは決定ね……!


 朝、開店直後にスーパー行ったら、ものすごい行列ができているところがあって、なんとタマゴが1パック99円なんですって! でも、数年前までは、週一程度なら、そのくらいの値段にしてて、かつ、行列なんかできなかったスーパーなんか、どこにでもあったとおもうんだけど……。

 ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?


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