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春カゼにご用心

 にしても、東京メトロって残酷よね~。

 

 アタシが初めて日本の土を踏んだ、三ノ輪ってとこ。

 最初は、結構、先進的な都会だと思っていたんだけれども、ここ、六本木ヒルズと比べると……ちょっと、おもむきが違うわよね~。

 

 天国と地獄っていうと、大げさだけど、かなり傾向の異なる二地点が、たかだか四十分くらい椅子に座っているだけで、行き来できてしまうなんて、なんていうか、いいのかなあって首をかしげてしまうわ。

 

 世の中の理不尽に、ささやかな疑問を抱きつつ、続きをお送りするわね。

 

 ……

 両陣ともに名だたる勇将がひしめく、アカイア遠征軍とイーリオスの戦争は、9年もの間、多大な犠牲を払いながらも、こう着状態に陥った。

 

 しかし、ついに10年目にして、戦局は大きく動き出す。

 

 イーリオスの王子であり、戦乱を引き起こした弟、パリスをかくまってイーリオスを守護していた英雄、ヘクトールが、アカイア軍きっての戦士、アキレウスに討ち取られたのだ。

 

 動揺するイーリオスに、ペンテシレイア率いるアマゾーンと、メムノーンを大将とするエティオピア軍が加勢する。

 

 一時は、アカイア軍を圧倒したイーリオス勢だったが、鬼神の強さを誇るアキレウスが逆襲に転じるに及んで、ペンテシレイア、メムノーンは共に屠られ、援軍は敗走した。

 

 故郷へ戻るアマゾーンから離脱し、クリューソテミスはイーリアスに残った。

 

 祖母であるアイトラーとともに、傾国の美女ヘレネ―の侍女となる。

 

 一方、アカイア軍の勝利を目前にしながら、無敵のアキレウスの命も、尽きようとしていた。

 

 アキレウスの暴虐を憎むアポローンの助力を得たパリスは、イーリオスの城壁から、獅子奮迅の活躍をする仇敵を、弓で射た。

 

 矢はアキレウスの急所であるかかとに命中し、アキレウスはついに死に至る。

 

 再び、手詰まりとなったアカイア軍は、スキューロス島から、アキレウスの遺児であるピュロス、正式な名はネオプトレモスと、ヘラクレスの弓を持つピロクテーテースを呼び出した。

 

 さらに、智将オデュッセウスの献策により、木馬作戦が決行される。

 

 アイトラーを奪還する好機と見たアルテウスは、英雄たちと共に、木馬に身をひそめた。

 

 乾坤一擲の欺瞞作戦は成功し、イーリオスの堅固な城壁内で、木馬から躍り出た兵士たちは、破壊の限りを尽くす。

 

 10年もの間、アカイア軍の猛攻を持ちこたえたイーリオスは、一夜にして炎に包まれた。

 

 ……

 

 「タレイア」

 

 ひゃっ!

 いきなり後ろから話しかけられたわ。

 

 すわ、ナンパ? と意気込んで振り向くアタシの目に映ったのは……。

 

 アポローンさんだったの!

 

 びっくりしちゃって、おたおたするアタシをじっと見てから、アポローンさんは言ったわ。

 

 「キミさ、なんでそんなチンドン屋みたいなカッコしてんの?」


 さて、ガベジくんに、今までの経緯を説明する主人公(仮名)ちゃん。

 

 『むん……でも、それってたぶん、主人公(仮名)の取り越し苦労なんじゃないかな。と思う』

 

 「んなことないよ、メッチャケンカしてたんだからさあ。

  二人とも見たまんまのクソヤンキーだったから、マジメなわたし的には、超怖かったし」

 

 『むん……でも、ケンカと言っても、恋人同士のことだろう?

  すぐに仲直りすると思うけど。

  わざわざ主人公(仮名)がしゃしゃり出て、何かする必要はないんじゃないの。と思う』

 

 「冷たいな~ガベジは。

  でも、わたしが悪かったかなぁ、料理テキトー過ぎたかなぁ、って後悔してるんだけど」

 

 『むん……だからって、ケンカまでが主人公(仮名)のせいじゃないよ。

  それで別れるなら、もともとふたりはその程度の仲だったってことじゃないか。と思う』

 

 「でもさぁ、脇役(仮名)がケッコンできなきゃ、マズいんだよね」

 

 『むん……わかった。ニンシンしてるんだろう。と思う』

 

 「えっ!? なんでわかったの? 理由教えて」

 

 『むん……そりゃわかるよ。脇役(仮名)さんは、結婚願望は全然なかったように記憶しているから。

  むしろ、自分はもてるから、若いうちにケッコンはなるべくしたくない的なことを、言っていたはず。

  それでも、ケッコンが必要ってことになると、やっぱり、そうなんじゃないの。と思う』

  

 「すげー! さすがジョジョ検定とワンピース検定で満点取った男!」

 

 『むん……主人公(仮名)にとっては、こっちはいまでもそういう評価なのか。複雑だな。と思う』

 

 「なぁーにが不満か? ん??」

 

 『むん……また、懐かしフレーズだね。まあ、そんなに気になるんだったら』

 

 そこで、ガベジくんは盛大なくしゃみ。

 

 「だいじょーぶ? 風邪ひいてない? 早く暖房入れたら? こっちはもうついてるけど」

 

 『むん……主人公(仮名)って、まだ』

 

 さらにもう一発、大きなくしゃみ。

 

 「ほら~、完全に風邪でしょ、それ」

 

 『むん……かもしれない。服を着たほうがよさそうだ。と思う』

 

 「あーそっか。ガベジ……」

 

 なんだか、赤面してしまう主人公(仮名)ちゃん。

 よくよく考えてみたら、ふたりはずっと素っ裸でお話ししてたことに気が付いてしまったのね。

 なんとなく、ヘンな沈黙に包まれる二人。

 

 『むん……だったら、こっちでも話を聞いてみようか。と思う』

 

 別の話題に、あわてて飛びつく主人公(仮名)ちゃん。

 

 「ほんと? やった! もう解決じゃん!」

 

 『むん……その前に、こっちが脇役(仮名)さんと会えるように、場をセッティングしてくれないかな。

  きちんと面と向かって話を聞かないと、うまく対処できないかもしれない。と思う』

 

 「いいよ。どーせ、明日また遊ぶ約束してるから。

  バイト終わった後だから、夕方になるけど」

  

 『むん……場所が知りたい。と思う』

 

 「地元の駅まで来て。脇役(仮名)の家まで連れてくし」

 

 どうやら、なんとか解決に向かって進みそうね。

 ほとんど人任せだけど、いちおうがんばってるわね、主人公(仮名)ちゃん!


 近所のコインランドリーにいいところがないのよねえ。アタシ、毛布も洗濯したいんだけど、小さいのしかないの。大きなのがあるところに持ってくってのも、大荷物だし、考えものだわあ。 ところで、次回の主人公(仮名)ちゃんは、どーなっちゃうのかしらね……?


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