四十二冊目・サンタの友だちバージニア 「サンタクロースっているんでしょうか?」 と聞いた少女の話 村上ゆみ子著
お久しぶりですの投稿です。ひよこのページも四十二冊目ですね。その十倍ぐらいの本は読んでいると思うのでいずれ個々の感想も書きたいです。今回はまもなく来るクリスマスシーズンにあわせてチョイスしてみました。
「サンタクロースっているんでしょうか?」
……サンタは、いるの? いないの?
……わたしの友だちはいないっていうけど、ほんと?
この質問の回答はニューヨーク・サン新聞の社説に掲載されていたものです。問いかけをした読者の娘は当時八歳のバージニアです。読者からの人生相談などの中からピックアップされ、新聞記者のフランシス・チャーチ氏が回答を書きました。これを読んだ当時の読者はサンタの存在の有無の説明に納得しました。しかし、これがアメリカの教科書にも掲載され、不朽の名作になるとは当時の誰もは思わなかったでしょう。質問したバージニアも有名になり死去時はニュースになりました。凄い文章を書く人は周りの人生すら変えてしまう。
でもこの凄い文章を書いたチャーチ氏は普通に記者生活を過ごして天寿を全うしました。あの文章を書いたチャーチ氏のことは誰も気に留めなかった……だって書いた記事に署名すらなかったから。新聞記者に名前はいらない。顔もいらない。チャーチ氏の死のずっとあとになってやっとサン新聞は名前を公表しました。というわけで、ひよこのページにあげてみました。
ウィキペディアのその経緯が詳細に書かれています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B%3F
1897年といえばもう100年以上も前の話です。特に有名な一文をウィキペディアから引用します。
↓ ↓ ↓
「Yes, Virginia, there is a Santa Claus.
(そうです、ヴァージニア、サンタクロースはいるのです)」
この一節を含む、目に見えるものしか信じない悲しさと、目に見えないものの確かさ、不変さ、そしてそれを信じることの素晴らしさを説いたものであった。
↑ ↑ ↑
掲載直後から好評であったらしく、サン新聞は再掲載を繰り返し、とうとう毎年クリスマスシーズンに掲載したといいます。この文章がいかに素晴らしかったという証明です。
アメリカ人に「イエス、バージニア」と言っただけで there is a Santa Claus.(ゼアリズアサンタクロース →→ サンタクロースはいるのです)って返事が即答されるって相当です。
この回答文を日本語訳を出したらこれもベストセラーです。版元の偕成社はサン新聞にいくら印税あげてるのかしら。1人出版社を経営している身の上としてはすごく気になります。
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本題に入る前にもう一つ。知っているしかつ本を持っている人も多いかと思いますが、買いたい人用に一応販売ページを貼っておきます。(中村妙子訳)
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B-%E6%9D%B1-%E9%80%B8%E5%AD%90/dp/4034210109/ref=sr_1_1?adgrpid=130218447340&hvadid=679009709242&hvdev=c&hvqmt=e&hvtargid=kwd-332589581246&hydadcr=4079_13378689&jp-ad-ap=0&keywords=%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B&qid=1700257348&s=books&sr=1-1
このひよこのページは本の販促を手伝いをしているわけではないですが、これをご存じないと次につながらないのです。そして今回紹介する本はこのバージニアに焦点をあてて紹介したものです。目の付け所がすごい。わたしもバージニアさんはどんな人になったのかなあと思っていたら、ぴったりの本があるではないですか! 著者は村上ゆみ子氏。(同姓同名の漫画家さんとは別人のようです)
発行元は同じく偕成社出版です。
題名は「サンタの友だち、バージニア」 副題「サンタはいるの?」と新聞社へ投書した少女 とあります。
下記は販売ページです。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%81%AE%E5%8F%8B%E3%81%A0%E3%81%A1%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2-%E6%9D%91%E4%B8%8A-%E3%82%86%E3%81%BF%E5%AD%90/dp/4034211008
この本によると、バージニアに新聞の投書をすすめたのは、父親でした。パパ、サンタっているの? という問いかけにちゃんと返事ができなくて新聞にまかせたのですね? 採用されるかどうかもわからない新聞に送ろうか~とすすめる父親って、ちょっとさあ……? でもきっと愛娘にサンタはいるともいないとも言えなくて嘘もつきたくなかったのね。ちなみに彼は医師でした。
ここから掲載に至るまでの経緯は村上氏の想像も多分混じっていると思うがわかりやすいし何よりも間違ってない。新聞に載ったときの親子で喜び合い、頬を寄せ合って繰り返し読みあう様子まで想像できる。
バージニアはこの経験は一生忘れられなかったでしょう。長じて文章に興味を持ったらしく大学で近代言語を学びました。この本の著者の村上氏のすごいところは彼女が書いた論文の内容や学友だったかもしれない日本人名もあげているところです。100年前にもう日本人留学生がいたってすごくないですか? 江戸時代に音楽留学をした人もいるし、上流だとそれがトレンドだったのかもしれませんがやはりすごい。名前を残す人はそうやってつながっていると思います。
村上氏は書き手のチャーチ氏にも踏み込んでいます。子供にもわかりやすい文章を書くが、私生活では子供がいなかったこと、新聞記者一家で育っていたこともきちんと調べられている。決してベストセラーの便乗本ではなく、こちらが知りたいことが網羅されていてバージニアやチャーチ氏の写真、当時の新聞記事までが掲載されていて素晴らしい作家だと思いました。
さてサン新聞はバージニアが亡くなると第一面に「サンタの友だち、バージニア亡くなる」と知らせました。その時にはもう有名になっていたので、他の新聞も追随してバージニアはサンタを探しに行ったって書いたらしい。不朽の文章を書くとこうなる。
無名の記者が仕事の一環として書いたものが、こんなに広まったのは、サン新聞の宣伝が上手だったからでもなんでもない。ひとえにチャーチ氏の「文章力」。彼は記事が評判になっても「俺が書いた」と名乗りもしません。売名行為もなく黙々と日々の事件を取材し記事や社説を書き、67歳で病没です。これも好ましく思うところです。
なんでこれをわざわざ取り上げたかというと、わたしも自作が文字になったらそれで幸せだからです。チャーチ氏には程遠いがゴーストライターも短期間ですがやっていました。活字になるならなんでもいい。自分の文章が活字になったらもうそれで幸せ……でした。
漫画や文芸同人誌とかかわりを持つようになり、掲載順を争ったり掲載される目次のページの文字の大きさを気にする人がいるのを知ってすごく驚きました。同人誌仲間からプロになると、態度が変わって新刊がでたら「買え!」 と命令形で連絡してきたり……冗談めかしてるのは、わかるがお金がからむなら、「買ってください」 でしょうが。
また大人になってから創作を始め、それが受賞続きで順調にいくような人だと、今の出版はアンソロジー形式も多いので大御所と新人が同じフォントで同列に並ぶ。それに当たり前だと思っている人はプライドも高い。親に隠れてこっそりと文章を書くわたしにとっては別世界の認識だ。それが経営に不利な状況に陥るとは思いもしなかったですが、無名のままで終わったとしても今は誰でもすぐに世界に向けて文章を発表できるこの状況を非常に嬉しく思っているわけです。
バージニアも有名になったからといって、ひけらかすわけでもない。チャーチ氏もしかり。わたしはこういう世界が好ましい。チャーチ氏の書いたこの文面は、キリスト教推しではない。それもよかった。改めてじっくり読むと、すべての人に読まれるような配慮が行き届いているのがわかる。だからこそ国境を越えて宗教を超えて読み伝えられている。人類が生きている限りサンタクロースはいるし、この本も永遠に読み伝えられているかと思う。そういうのがいいし、それでいい。名前なんかいらない。でも名前が残っても、それもいい。皆が知りたがったから残った。争いとは無縁に生きたバージニアとチャーチ氏に栄光あれ。メリークリスマス!
NOTE記事と同時掲載しております。




