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三十九冊目・親とはなにか ・ 伊藤友宣

   伊藤友宣 ・ 親とはなにか


著者の伊藤氏は昭和九年生まれ、大阪大学在学当時から里親運動に入り、親子の問題について一貫して携わっておられた。氏は他に数十冊の親子関係を見つめる本を出版されているが、本作がその第一作です。中公新書における初版は昭和四十七年。しかし、再読してみれば、古くなっていません。というよりか、里親である、里親でないにかかわらず、親子のありようを非常に重要なことが書かれていますのでひよこにあげてみます。氏の著作は大学で教育心理学を専攻されておられ、以来親子関係に関与されているせいかとてもわかりやすい筆で書かれています。ウィキから他の著作の題名の一部引っ張ってきましたが、もうこれでそれ系のエキスパートとわかるぐらいです。


 ……『親と子 この予期せぬ人間関係』『『子供の心が見える本 「お母さんカウンセリング」のすすめ』『中学・高校生の難しさ 母親からの62の質問』『家庭という歪んだ宇宙』『親と教師が甦る時 いよいよ増える中学生の登校拒否』『中学生の子を持つお母さんへお父さんへ 駄目な子も駄目な親もいない 子どもたちは何を求めているのか』『子どもは親のどこに不満を持つか』『ことばに振り向くとき 親子のこじれをほどく試み』『いじめをほぐす 親と教員へ緊急のサジェスト』『反発する子どもの心に届く親の言葉』『「ひきこもり」ならない工夫抜け出る工夫 孤独が癒されるとき』『プロカウンセラーが教える子どもの心をひらく魔法の会話 お父さんの協力が効果を高める』『プロカウンセラーが明かす子どもの個性を伸ばす魔法の聞き方 本当はこんなことを話したがっている』『「言いたいこと」が言える子に 気持ちをちゃんと出せるように』……いっぱいありますよ……独特のメソッドも編み出されているようです。


 」」」」」」」」」」」」


 さて、中身に踏み込んでみます。

本作が出された昭和当時の里親制度のありようは、もちろん現在とは違います。元々、里親は行政から委託された親権のない家庭で預かる形です。現在では、その形もいろいろあります。

 五十年近く前から、里親制度の重要性と広がりの必要さをわかりやすく説く。令和の時代、昭和のそれを思えば、すそ野がもっと広範囲になっているとは思う。が、本書に出てくる里親と児童相談所、そして相談の根底にあるものは、昔も今もかわらぬと思う。それがわかりやすくかかれている。


 まず、自分で産んだ子供を育てることが普通とされている。これが前提。よって、里親里子は普通でない家庭となる。

 昭和時代は、個人情報もあいまいだったので、新聞には里親募集コーナーがあった。私もそういうのがあったのを覚えている。氏のとっていた新聞には「ぼくもほしいパパとママ」 欄に乳幼児の顔が堂々と掲載されていた。それゆえに善意の里親家庭自体が奇異な目で見られることもあったが、それが周囲に受け入られていく過程も書く。近所がうまくつきあえるところは、上手に溶け込んでいけている。しかし、近所から心配されるほどの問題児もいる。そういう踏み込んだ領域にもきちんと順を追っている。良書です。

 里親は善意。かわいい赤ちゃんや子供を里子として引き取って楽しく暮らしていくというイメージもある。しかし、現実は甘くない。そのあたりも詳しく失敗というか里子が返される例もあげている。

 里子が懐かないからと返してくる親の話も身にしみる。我が子ではそうはいかぬが、里親では子を返すことが(当時は)可能なのだ。返品? してくる里親には悪気はまったくないが、里子にはつらかった……そういうケースも多々ある。我が子でさえ、ため息をつきたくなることもある、ましてやなさぬ仲ではより深刻になるだろうと思う。

 現在では里親里子も様様なケースがあり、週末だけ、短期間だけ、長期、十八才まで、時には最初から養子縁組をするケースも。

 養子縁組だけは里親とはいわず、養親になる。この場合は家庭裁判所に申し立てて戸籍に入れることをいう。その養子縁組も種類があるが割愛します。

 そういった視点においても、昭和に書かれた本書は、仕組み自体が変化しており、そっくりそのままあてはめるわけにはいかないこと、ご了承ください。

 今回のひよこは、その里親里子の縁組のむつかしさに注目して、取り上げさせていただいています。生みの親でも子育ては大変なのに……とわが身を顧みても思います。


」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 私がひよこにあげてみようと思ったきっかけの文面を引っ張ります。里親になった人の成功例、失敗例をあげているが、非常に納得した項目があった。

 里親に出される子の性質として二種類ある。


① 親元で育って、親が亡くなったなどで里親に引き取られた子ども。

② 生まれたときから親の顔を知らぬ子ども、もしくは虐待を受けた子ども。


 里子は幼い時期ほど、里親家庭になじみやすいとはいうが、ある程度大きくなった子どもを引き取る場合、親元で大事に育てられていた子供は育てやすい。しかし、虐待などを受けていた子どもは結構なじむまでが大変だということです。氏の書くケースで複数の里子を引き取った里親がいる。たまたま上の二種類の子どもを引き取ったら、その差に驚くという。

 生みの親にかわいがられて育った里子は優しい言葉をかけるとそれを待ち望み、なじんでいく。心が通じ合う。人間の感情の基礎がしっかり形成している。

 逆に親の愛情を知らぬか虐待されていた里子はそこまで行くこと自体が大変だと。優しい言葉をかけても見当違いの言動が見られる。表情もポーカーフェイス。心の中に空洞があり、心の交流ができぬ。氏は乳幼児期の愛情の有無がそれ以降の信頼関係の構築にいかに密接にかかわってくるのかという現実をつきつける。


 知人に里子を引き取った人がいる。斡旋する法人から里子希望に関してかなりプライベートなことまで聞かれたし、定期的に里親講習もあった。引き取り時に起こりうるトラブルも事前に教えてくれた。この里親は果たして信頼できるのかと言うお試し行動、たとえば床の上に糞尿をわざとして様子見をするなど。そういったことも教えられ、覚悟したうえで引き取ったという。

 そういった経験の蓄積があって、納得したうえでの引き取りが前提だ。それでもうまくいかぬケースもある。本当に親子関係はなさぬ仲でもなす仲でも難しい。

 乳児希望の里親さん、養子縁組を希望している場合は同じような希望者が多いので何年も待たないといけない。知人は、ある日突然にこれから生まれてくる予定の新生児をどうかと打診がある。即答で受諾し、長距離移動して産院で引き取ったという。すぐに正規の手続きを経て戸籍にいれたそうだ。実の親から密室で命にかかわる虐待を受けるぐらいなら、そういった善意の人々の家庭に入ったら里子は幸せには違いない。


 表題の「親とは」 なにか、その答えに、氏は明確に回答されている。


 親とは育ての親のこと。


 心の傷を負った子供の場合は、育てる期間に空白がある。その期間が長いほど覚悟と決意がいる。トラブルもでやすい。氏はそれも書いている。

 里親希望者もしくはそういったことに興味のある人々にはよい入門書にもなるかと思う。よいこともわるいことも隠し事なしで書いているから。








 

 



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