二冊目・おばあさん ネムツオヴァ
第二冊目 ポジュナ・ネムツォヴァ作「おばあさん」
ネムツォヴァはチェコの作家です。「おばあさん」 というのが彼女の代表作。
初版は千八百五十五年発行。当時の戦時状況と人々の暮らしをつらつらと書いているだけの小説。だがやけにおもしろい。信心深いおばあさんの考えから当時の宗教感覚、巡礼など私にとって未知の宗教習慣、身分階級のありようがわかる。そして知らずに皇帝と会話してしまった逸話、孫との会話、昔話に迷信、気がふれたヴィクトルカの行動、……いろんな話の折詰です。
子供向きの文庫におさめられていたが、現在は絶版だとか。おお絶版……検索して今はじめて知った。もったいない。でも私ごときがここで言っても誰も気にしないだろうけど、再販希望しますです。
これだけ活字があふれていて、なおも活字離れと言われて久しいし、昔の本はどんどん埋もれていって出版社は売れそうな本しか版を重ねてくれないのだ。しかも今はネット中心の世界になっています。ネットしない人は置いてけぼり~、な感覚がある。
その上、私も含めてアマチュアが好き好んで文章を書いてはこういう小説サイトにどんどんUPしていく。プロアマ問わず創作した本人以外読まれもしない作品は無限大量にあるのだ。それらは今もなお電子の海を漂い、世界中を覆い尽くしている。
昔の古い紙の本は土に帰る。読むべき本も読まれない本もどうでもよい本もみんな一応は人の頭の中から発生して形になってはいるものだ。それが作った本人の頭の中以外に消えてなくなるのはこの世の無常を大げさでなく感じます。もちろん人間の寿命には限りあるし、やることだってそれぞれ無制限にあると思っても時間制限ありです。タイムリミットが近づくとたいていの人は病気をしたり呆けたり……こんなんですね、ですのでこの作品に出合えたのは私にとって幸運だと思うようにしています。
作中の当のおばあさんだって最後は死ぬのです。でも皆さんに惜しまれて死ぬのです。当時の人は死ぬと教会の鐘を鳴らして知らせたらしいですが、谷間中の人がおばあさんの死を悲しんだとか。読んだ当時も今も名もなきおばあさんのような生き方が一番いいのだとしみじみ思います。
このおばあさんはスーパーマンでもなく、どういうミステリーも鮮やかに解決するようなほれぼれとするような格好のいいところはありません。むしろ、その他大勢の市井の人で戦争の波を潜り抜け、愛する人を得て子供や孫と暮らす。こういう生き方が一番いいのだと思わせるよい筆です。出版当時はこのおばあさんの孫の世代でベストセラーになったらしいですが、納得です。
私にとっては遠いチェコの昔の作家さんなので翻訳を通してでしか彼女の作品に触れることができないのですが、信心深いよいお人柄だったのではないかと思います。
この作家は大変な多作らしく、童話なども多く書かれているそうです。彼女の書いた童話を調べたのですがわかりませんでした。これもレアンダーと同じく二作目にUPしたのはそういう理由です。
チェコに行ってチェコの古本屋を探しまくり、余裕かましてチェコ語が読めたらいいですがそれは絶対無理。
他力本願も良いところですが最近私も老い先短くなってきたと思うことしきり。こうして私の感動した事柄の足跡を少しずつ残していこうと思っています。
読んでいただきありがとうございます。
ネムツォヴァ、いいですよ。まったりとします。