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気が緩んで寝ぼけている狩鳥は、大きなチャンスを見逃してしまうことがあるものです。

せっかく近くに大きな獲物がきたというのに、大きく鳴らされた足音に驚いて慌ててその場を逃げ出してしまいますからね。

なかなか翼を上手く羽ばたけずに、状況も把握できない狩鳥の姿はとても一流のものとは言えないでしょう!

常に周りに目を光らせる狩鳥ならば、どんなに大きな獲物だって狩りとってみせますもの!

だって!獲物は大きければ大きいほどに目を輝かせるのが、誇りある狩鳥の姿なのですから!


さあ魔王様!

疲れていた身体も目指すべき目的があれば、活気あふれてくるものです!

それが手に届くところに来れば、活気をつける"ウネクワ"でも、香ばしく涎がこぼれ落ちる肉料理にだって負けないものとなりますわ!

そう!やっとメイズラン商隊が「ティルファ」へと訪れてきたのです!

メイズラン商隊が響かせる賑やかな音は、様々な噂話から珍しい商品を売り込む声に色んな物が重なり合う音!

でも、そんな賑やかでそれぞれが強い音を出していたとしてもですよ!まず目に飛び込むものは1つしかありませんの!

分かりますよね魔王様!

きっと魔王様も楽しみしていると思われるコルマシオの洞穴に出てくる"石食い鳥"ですの!

今にも飛び出しそうに翼を広げた姿は力強さを感じ、濃い青色に染まった羽は鋭く尖った羽先も魅入られてしまうほどに美しく感じてしまいますわ!

黒く感情の見えない目もジッと見つめられていると、羽ばたく姿を想像してしまうほどです!

丁寧に磨かれているその姿は光の当たりようで鮮やかな色合いが次々へと変化していきますの!

高く昇っていた日だって、駆け足に降っていってしまうほどに魅入られてしまいましたからね!

ああ!この心の高鳴りを魔王様にも感じてほしいものですわ!


ふふ、あふれ出た想いを思わず書き結んでしまいましたね!

でも、壮大なる魔王様なら笑って読んでくださっていることでしょう!

ならば、魔王様にもっと笑って頂くためにも、手にした情報をお伝えさせて頂きますね!

どうぞ!ご堪能くださいませ!


さて、思う存分に想いを語った"石食い鳥"ですが、これだけの情報で終えるなんてことはありませんからね!

ただ、感激して目元を緩ませていただけでしたら、魔王様の調査員として恥ずかしいですもの!

ではでは、1つ1つお伝えさせて頂きますね。

賢明な魔王様なら既にお気づきなところもあるかもしれませんが、お付き合いくださいませ!

まず、"石食い鳥"ですが、残念ながら生きている状態ではなくて石像へと変化してしまった姿でした。

その石像の姿は魅入られるほどに素晴らしいものでしたが、生きていないというのはとても残念なものなのですよ。

石を食べるという不思議な光景を見ることができませんし、その姿が見れないということは本物かどうかも怪しくなってしまいますからね。

その素晴らしい姿に見惚れながらも、これは"石食い鳥"ではなくてただの石像だ!と声を高くあげる人だっていましたもの。

確かに判断は難しいものですが、私はこれを見極めたいと思うのですよ魔王様!

見た瞬間に"なんだ青く塗っただけの鳥か"と、その素晴らしさも理解できていない"絡まない蔦"とは違いますからね!

そこでですね、"石食い鳥"であるかを判断するためにコルマシオの洞穴で語られている特徴と一緒なのかを確認してみたのです!

あっ、魔王様?

今までそんなことも確認してなかったのかと呆れてはいらっしゃいませんか?

いえ、違いますからね!

一目見て"石食い鳥"の特徴はとらえた石像でしたが、より細かく見ることで再確認をするというものなのです!

作りものであれば、どこか手を抜いたりしてるかもしれませんしね。


と確認してみても、緩やかに曲がった毛並みの頭に剣先のように鋭い翼の羽と、どこもコルマシオの洞穴で語られている特徴をとらえているのですよ。

これはやはり本物と考えた方が良いのかもしれません…と言えるのが一番の理想でしたが、実は気になるところを見つけてしまったのですよ魔王様!

なかなか気づけないところなのですが、コルマシオの洞穴で語られている最後にみんなに見せようと運んでいる途中で落としてしまって"石食い鳥"を壊してしまっていますよね?

そう、そこで落としてしまったためにみんなに見せることができなくなっているのです。

ということはですよ魔王様。

石になった"石食い鳥"は落としてしまったくらいで、みんなに見せられないほどに粉々に砕けてしまうほどに脆いものということなのですよ。

ところがですよ魔王様、今回メイズラン商隊が運んできた"石食い鳥"はそこまで慎重に扱っているようには見えませんのよ。

大事に扱っていて綺麗にも磨かれているのですが、その扱いは通常の石像と変わりないように感じられますの。

"石食い鳥"を運んできた荷車だって、良く見かけるようなものでしたし。

もしかしたら簡単に壊れてしまうものを扱っているにしては、慎重さが足りないような気もしてくるのです。

手入れだってあの扱いで良いのかと、考え始めますと怪しく感じてきてしまいますね…

でも、まだ本物とも偽物とも判断はできないと思うのですよ!

だって魔王様!もしかしたらコルマシオの洞穴で出てくる"石食い鳥"がたまたま脆いものだったかもしれないし、私が気づいてないだけでメイズラン商隊の取り扱いがどこか特殊なのかもしれませんもの!

時間をかけて調査をしてきましたが、まだ調べきれてないということなのですよ魔王様!


"今手にしている情報が求めたものでないなら、求めるものが手に入れるまで諦めずに駆けるべきだ!"

"本当にやりきった成果なら、涙を流してから真実を伝えなさい"


と、昔組合長も言ってましたしね!

ふふ、これは内緒ですが、結構気に入っている言葉だったりします。

誰かにいつか言ってみたいものですが、今は自分に語りかけるばかりなんですけどね。

弱くなった気持ちが少しばかり強くなるような気がするので、この言葉をかけてくれた組合長には感謝していますのよ。

あっ、でも魔王様?これは内緒にしてくださいね。

さすがに恥ずかしいんですもの。


さて、今回の報告はここまでとさせて頂きます。

お伝えした情報が中途半端なものとなってしまいまして、申し訳ございません。

もしかしたら、がっかりとしてしまったかもしれせんね。

でもですね、たとえ中途半端な報告になってしまったとしても、魔王様に早くお伝えしたいことがありましたの!

例え"石食い鳥"の真実がまだ分からないといってもあの感激は本物ですし、その真実を求める私の意志をお伝えしたかったのですよ。


まだメイズラン商隊もあと3日ほどは「ティルファ」に滞在していますので、その間に求めている情報に手が届くように駆け抜けていきますね!

もちろん、魔王様が気にしていらっしゃる"宝石時計"だって忘れていませんから、ご安心くださいませ!

手にすることが困難なものかもしれませんが、だからといって眺めるだけでは意味がありませんものね!

だって、あなた様の調査員"埋もれた蛙"がこの状況で目を輝かせないはずがないのですから!

どうぞ、楽しみにしてくださいませ!


それでは、また近いうちに報告させて頂きますね!

今回もお付き合いして頂きましてありがとうございました!




                                                                     埋もれた蛙

<補足>

 ・嘘吐きコルマシオ

  800年代後半に現れた語り手。

  面白おかしく突拍子のない話を突然語り始める彼を

  疎ましく感じる者は多く、"嘘吐き"と良く呼ばれて

  いた。

  だが、人を惹き込む語りにより、だんだんと認めら

  れるようになり、800年代後半では知らない人は

  いないとまで言われた語り手となる。


 ・コルマシオの洞穴(ほらあな)

  嘘吐きコルマシオが不可思議な体験をした洞穴の

  出来事をまとめたもの。

  石を食べる鳥や、小指ほどの大きさで悪さをする

  不細工な犬に、黒い影に浸食されていく壁などの

  話がある。

  嘘吐きコルマシオの話では特に現実的ではない話

  ばかりなので、存在しないものという意味でも

  "コルマシオの洞穴"という言葉が使われている。


 ・石食い鳥

  コルマシオの洞穴で語られる生き物。

  石を食べる世にも珍しい鳥であり、食べ続けて

  いると青く綺麗な羽を生やしていく。

  調子に乗ったコルマシオが大量の石を食べさせ

  たところ、とても綺麗な姿の鳥となったが、

  石を食べ過ぎたことにより自らも石となって

  しまったという。

  青く綺麗な鳥の石像を街の人々に見せびらか

  そうと持ち運んでいる最中に、手を滑らせて

  落としてしまい、粉々に壊れてしまった。

  その様子を涙ながらに語るコルマシオの語りは

  好評だったとのこと。


 ・メイズラン商隊

  ラルグシラ川周辺で幅をきかせている商隊。

  メイズラン家が主に融資している商隊である。

  ウネクワとスラームアサを主に扱っている。


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