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1029年08月18日
街の近くを流れるラルグシラ川には、稀にですが面白いものを見つけることがあります。
先日も上流から葉船が流されてきたのですが、それがなかなか変わった形のものなどもあって、眺めているだけでも結構楽しいのです!
ゆらゆらと揺れながら流される葉船を眺めていると、心も一緒に揺らされた感じがしてなんだが癒されてしまいます。
気持ちを落ち着けたい時には有効だと思いますので、是非ともお試しくださいませ!
それでですね、そんな安らぎを与えてくれる葉船なのですが、稀に見慣れない形をしたものが混ざっていることがあるのですよ!
そんな変わったものを見つけてしまいますと、ついつい手に取ってしまいますよね!
ゆらゆらとゆっくりと流されていた葉船を取り上げた時に、小さな波が大きく広がってしまうのを見ると、何だか悪いことをした気分になるものです。
私が作りだしてしまった波がどこまで影響を与えてしまうのかしら?と水面を眺めてしまいますしね。
そんな思わず手にしてしまった葉船ですが、その影が立派な鳥の姿を映し出して、これがまた不思議で仕方ないのです!
ますます興味が惹かれてしまいますよね!
ここは張り切って調べてしまうのは調査員として当然の行動といえるでしょう!
それに影のささやき声に耳を傾けたって、答えが出てこないものなのですから!
こんな時にこそ、見せつけるのが調査員の実力というものですもの!
どこか静かに感じる「ティルファ」ですが、あなた様の調査員「埋もれた蛙」は変わらずに情報収集に励んでおります!
疲れ切った狩鳥が深い眠りについていますが、そんな中でも私は気を緩ませることなく、日々街を駆け巡っているのです!
それではいつものように、あなた様のお役に立てる情報を提供させて頂きますね!
どうぞ、今回もお付き合いくださいませ!
神樹祭も終わってそれなりに時間が経ったせいか、「マッカーニア」へと向かう急ぎ足の旅人もなかなか見かけなくなってきました。
やっと人通りの落ち着き、慌ただしさから解放されたような気がしてきます。
そんな状況だからでしょうか、どうもこの時期は気を緩めてしまっている方を多く見かけるものなのです。
慌ただしく駆けまわっていた商人に、神樹祭への旅路で荷物持ちなどで小金を稼いでいた旅人などが、気の抜けた姿で座り込んでいるのを良く見かけますからね。
だらしなく寝そべってしまう人もいるくらいですから、みんな気が緩ませてしまっているのですよ。
一緒に道案内をしていた調査員達も街中では見かけなくなってきましたし。
なんだか街全体の活気が弱くなっているようにも感じてしまいますね。
元気良く商売で声をあげている方もいるのですが、どこか静かに感じてしまうものです。
そんな中でも当然ながらちゃんと活動をしているところはありますからね。
魔王様の配下でもある情報機関組合「シラユリ」もその一つとなります!
街中でだらしない姿を見せることなんてありませんし、道案内に情報収集と現状でも街を駆けまわっている調査員を結構見かけますね。
やはり魔王様の聡明な目は素晴らしいものです!
彼らの影として徹底した働きは素晴らしく、私も参考にしていきたいと思いますもの!
魔王様の配下としては申し分のない働きをこれからもしていくことでしょう!
でも、当然ながら私達だって負けていられませんからね!
と、意気込みを入れたところで大変恥ずかしい話なのですが、私達「シンデレ」では気を緩ませてしまっている人が出ているのです。
「マッカーニア」の活動で疲れたのか知りませんが、組合長と絡まない蔦は組合でだらけた姿で寝てばかりいますの。
そんな姿はさすがに外では見せてないようですが、こんなことでは魔王様のお役に立つことなんてできません!
もう!しっかりとやってもらいたいものです!
ちゃんと気を引き締めさせて見せますので、どうか「シンデレ」を見捨てないでくださいね!
さて、こんな感じで落ち着いていると言っても良い時期ではあるのですが、それもそう長くはないものです。
今はもう8月も中旬となっていていますので、そろそろ"スラームアサ"の収穫時期にも近づいてきていますので。
"スラームアサ"の収穫に合わせて、時間の余裕があるものは稼ぎに西の方へと移動する準備をするものです。
気の早い方は神樹祭に合わせてそのまま向かうみたいですけどね。
もう少しすれば、「ティルファ」の請負勘定所にも依頼状が貼りだされることでしょう。
それもあって少し慌ただしさもまた出てくるのですが、それだけではありません!
そう"スラームアサ"の収穫時期に合わせて、"メイズラン商隊"もラルグシラ川上流の行商から下流へと下っていくのです!
上流でしか獲れない"ウネクワ"が主な商品ですが、「シェローム」の鉱石を扱ったものなどと興味の惹かれるものを多く持ち込んでくることでしょう。
"メイズラン商隊"が訪れた時くらいしか手に入らないものだってありますからね、それは楽しみにしている人は多くいるものです。
それになかなか調査の進まない"宝石時計"も、実物を見る機会を得るかもしれませんもの!
ああ!魔王様のためにもしっかりと調べないといけませんね!
そんな"メイズラン商隊"が「ティルファ」にも訪れてくるのです!
これは慌ただしくなるなんて分かりきっていると思いませんか魔王様!
こんな大切な時期に気を緩めている場合ではないのですよ!
事前に調べることなんてたくさんありますものね!
そこでですね、魔王様!
私は凄い情報を手に入れてしまったのですよ!
"メイズラン商隊"の荷運びを手伝っていた運び人から、とても面白い情報を手に入れることができましたの!
ふふ、それが何なのかって気になりますよね?
もちろん、いち早く魔王様にお伝えさせて頂きます!
そう、現在"メイズラン商隊"ではとても珍しいものを運んでいるという情報があるのです!
それも"宝石時計"よりも珍しいものですよ魔王様!
それが何かと言いますと、なんと"コルマシオの洞穴"で語られているあの"石食い鳥"なんですって!
あの嘘吐きコルマシオが語っていた"石食い鳥"ですよ魔王様!
実在しないって言われていたのに!それを見ることができるかもしれないなんてとても嬉しくて仕方ありませんよ!
ああ!石を食べてる姿を見ることができるのかしら?それとも綺麗な石像になってしまった後なのかしら?
もう!早くこの目で見たく仕方がありませんよ!
どうしたらよいのでしょうか!
ああ、心の高鳴りが止まりませんね魔王様。
だって、嘘吐きコルマシオの"コルマシオの洞穴"が本当にあったかもしれないってことなのですよ!
指先ほどの小さな犬だっているかもしれないし、洞穴の奥にある黒い影が広がっていく壁なんかも、もしかしたらあるかもしれませんもの!
コルマシオの不可思議な体験が全て本当だったかもしれないのですよ!
もう!本当にどうなのでしょう!
"メイズラン商隊"が待ち遠しくて仕方ありませんわ!
ええ、聡明な魔王様ならお気づきでしょうが、私は嘘吐きコルマシオの語りが大好きなのです!
特に"コルマシオの洞穴"は不可思議な話ばかりなので、昔から大好きですもの!
それに嘘吐きコルマシオはとても語りが上手かったとも言いますよね。
実はですね、密かに目標にしている人物でもありますの。
誰もが聞き惚れてしまうような語りなんて、憧れてしまいますよね!
ふふ、現在はまだ魅了するような語りなんてできませんが、今に心地よい語りを披露できるようになって見せますわ!
その時には是非とも魔王様も聞いてくださいね!
魔王様も心の高鳴りが収まらないでしょうが、今回得られている情報はここまでとなります!
"メイズラン商隊"や"石食い鳥"の情報が得られましたらすぐにお伝えさせて頂きますね!
それでは、次の報告書を是非とも楽しみにしてくださいませ!
私も楽しみで仕方ありません!
<追伸>
申し訳ございません「シンデレ」の隠語を使っていたのに、説明してなかった
ことに気づきました。
遅くなりましたが、説明させて頂きますね。
報告書の冒頭に書かせて頂いている"葉船"ですが、これは運び人という意味が
あります。
"上流から流されていた葉船"とは、ラルグシラ川の上流から足を運んできた
運び人という意味だったのです!
それと葉船の影というのが、その運び人から得られた情報という意味なのです。
ふふ、是非とも覚えてくださいませ!
おっと、もう1つありましたね、"影のささやき声"ですが、これは他の調査員
という意味です。"石食い鳥"については誰もなにも分かっていない情報なので
すよ!
もう興味が深まるばかりで、心が落ち着きませんよ!
ああ!気が緩むことなんてありえませんよね!
埋もれた蛙
<補足>
・嘘吐きコルマシオ
800年代後半に現れた語り手。
面白おかしく突拍子のない話を突然語り始める彼を
疎ましく感じる者は多く、"嘘吐き"と良く呼ばれて
いた。
だが、人を惹き込む語りにより、だんだんと認めら
れるようになり、800年代後半では知らない人は
いないとまで言われた語り手となる。
・コルマシオの洞穴
嘘吐きコルマシオが不可思議な体験をした洞穴の
出来事をまとめたもの。
石を食べる鳥や、小指ほどの大きさで悪さをする
不細工な犬に、黒い影に浸食されていく壁などの
話がある。
嘘吐きコルマシオの話では特に現実的ではない話
ばかりなので、存在しないものという意味でも
"コルマシオの洞穴"という言葉が使われている。
・石食い鳥
コルマシオの洞穴で語られる生き物。
石を食べる世にも珍しい鳥であり、食べ続けて
いると青く綺麗な羽を生やしていく。
調子に乗ったコルマシオが大量の石を食べさせ
たところ、とても綺麗な姿の鳥となったが、
石を食べ過ぎたことにより自らも石となって
しまったという。
青く綺麗な鳥の石像を街の人々に見せびらか
そうと持ち運んでいる最中に、手を滑らせて
落としてしまい、粉々に壊れてしまった。
その様子を涙ながらに語るコルマシオの語りは
好評だったとのこと。
・メイズラン商隊
ラルグシラ川周辺で幅をきかせている商隊。
メイズラン家が主に融資している商隊である。
ウネクワとスラームアサを主に扱っている。
・シェローム
ラルグシラ川の上流に位置する街。
鉱石が採れ、鉱石を加工する職人が多くいる。




