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1029年08月11日
青々とした葉が風で揺れて聞こえてくる木々の音は、まるで包み込まれたよう安心感を与えてくれますね!
この安心感を味わいたくて、神樹祭ではいつもよりも少しばかり熱心に祈りを捧げてしまうものです。
神樹の葉から零れ出る淡い日の光が祈りを捧げる人々を照らす光景は、なかなか幻想的で息を飲んでしまいますもの。
いつも元気で駆け回っている子犬達だって、この時ばかりは大人しくしていますからね。
そういえば、熱心な神樹信仰者には頭上から葉鳥が舞い降りてくると聞きますが、残念ながら今年はそんな光景には出会えませんでしたね。
今まで見たことがないので、いつかそんな祝福を受ける光景を見てみたいものです。
そんな人物を探し出しておくのも重要なのかもしれませんね。
長い間準備をしてきた神樹祭ですが、終わってみればあっという間という感じがしてきますね!
とは言っても、時期をずらして祈りを捧げに行く方もいるので、「マッカーニア」ではまだまだ騒がしいことでしょうけど。
多くの人々が集まる良い機会でもあるので、魔王様はまだ「マッカーニア」で色んな方と交流をしている頃かもしれませんね。
でもですね、私は一足早く「ティルファ」へと本日帰ってきたのですよ!
ええ、もちろん、何事もなく帰り着くことはできました!
だけど、せっかく魔王様ともっとお近づきになれる良い機会でしたのに!
「マッカーニア」に居た期間が短かったので、お会いできることができなかったのが、残念で仕方ありませんよ!
結局お渡したフユズの実も使用人経由になりましたものね…
もう!何だか悲しくなってしまいます!
ああ!そういえば!魔王様の使用人ですが、彼女はとても凛々しい方ですね。
さすが魔王様の使用人を任されているだけのことはあると感じましたよ!
お渡したフユズの実がいかに素晴らしいものであるということをすぐに理解できた感性ももちろんですが、何よりもあの身のこなしは只者ではありませんよね!
振る舞いは美しく、落ち着いた行動は使用人というよりは貴族のお嬢様と感じてしまうほどです。
あれだけ優秀な付き人が魔王様のお傍にいることを知ることができまして、少しばかり安心しましたよ!
彼女なら魔王様の気品を損なわれることなんてないでしょうしね!
少し早めに「マッカーニア」へ出発する私のことを知り、フユズの実のお礼としてお菓子を渡してくれるお気遣いもしてくれましたもの!
「ティルファ」へ向かう時間帯なんて良く調べたものだと感じましたよ!
それに、用意してくれたお菓子は大変美味しかったです。
見たところ、彼女の手作りでしょうか?
日持ちするように2度焼きされたパンに、果実の皮を煮込んだものを塗りつけられていて、それがもう甘くて美味しかったのです!
おそらくですが、保存食として用意していたものを分けてくれたのだと思います。
帰りは他にも子ども達もいましたので、皆で分けて食べましたよ。
皆さんも美味しいと食べてくれましたと、彼女にどうかお伝えくださいませ!
料理の腕も申し分もなくて、本当に彼女は素晴らしい使用人ですね。
名前を聞き忘れてしまったことが、とても残念に思います。
でも、魔王様に従えている関係がありますもの、会える機会なんてきっとありますよね!
ふふ、どうか魔王様、彼女は優秀な人材ですので、是非とも大事にしてくださいませ!
さて、熱心な神樹信仰者でさえ、祈りが終わった後も旧知の交流を深めたりと、神樹祭を十分に楽しむものです。
神樹祭では、見たことのないような料理や、気合いを入れた芸を披露する者達が溢れかえっていますものね。
これらを楽しまずに「マッカーニア」を去るなんてことは、とってももったいないことなのですよ!
私だって、「マッカーニア」の土を調べてみたかったし、せっかく多くの人が訪れているのですから、情報収集だってしおきたかったのに!
残念なことですが、「ティルファ」を長く離れていることに抵抗を覚える人もいるのですよ。
もちろん、仕事があるために早めに帰る人だっています。
魔王様の街でもそういった方々はいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、私もそのメンバーに含まれていたということなのですよ。
「ティルファ」に残っている組合長と浮かんだ草先輩と交代するためなので、仕方ないのですけどね。
でも、魔王様にお耳に入れるべき情報を手に入れられないというのは、やはりふがいなく感じてします…
だけど、情報機関組合「シンデレ」としては、しっかりと調査をしていますので、ご安心くださいね!
今頃は、広げない翼先輩に絡まない蔦が「マッカーニア」で情報収集をしていることでしょう。
絡まない蔦はあまり頼りならなく、遊んでないか心配ですが、広げない翼先輩がいるので問題ないと思います!
きっと有益な情報を獲得してくれるでしょうから、今からでも楽しみですね!
魔王様もどうぞお気をつけてくださいませ!
頭上を飛び交うのは、葉鳥だけではなく、狩鳥もいますからね。
頼りになる方が傍にいらっしゃるかと思いますが、油断なさらないようにご注意ください!
大事にしている情報の果実をかすめ取るのが狩鳥は得意なのですから!
そういえば、魔王様は私達と比べると長い旅路となりますが、足を痛めたりはしていませんでしょうか?
私は、友人が仕上げてくれた靴が動きやすかったので、足を痛めることはありませんでした。
普段から駆け回っていますので、足を使うことは慣れていますしね。
でも、やはり歩き慣れてない方は足を痛めてしまう方も結構多く出てしまうものです。
あまり外を出歩かないような職人やその家族などがいらっしゃいますものね。
あと、神樹祭に向かうために「ティルファ」へと訪れていた貴婦人などでしょうか。
まぁ、そういった方々は、少しお金を払えば荷車へと乗せてもらえるのですけどね。
商人や運び屋が押す荷車は、そういった歩くのに慣れてない方を乗せることでも、なかなかお金になるものなのですよ。
早ければ2日目くらいから足を痛める方もいらっしゃいますし、帰る頃なんて元気の良かった子ども達が疲れを見せ始めますしね。
「マッカーニア」では元気よく駆け回っていた子ども達も、「ティルファ」へ辿り着く頃には大人しくなっていますもの。
それにしても、無事に「ティルファ」へ帰りつくことができて良かったものです。
旅慣れてない方々のフォローなどと、色々と気疲れもしてしまいますので…
ああ!今日はゆっくりと浴場で身体を癒したいものです!
今なら中央区の浴場もあまり混雑してないでしょうしね!
あー、「マッカーニア」の浴場も結局入ることはできませんでしたね。
神樹祭で清める人が多いので、私達のようなものは軽く沐浴するくらいなんですよね…
色々と残念で、泣けてきますよ魔王様!
明日は組合長と浮かんだ草先輩が「マッカーニア」へ向かって出発します。
組合長は「マッカーニア」で交流を深める相手もいらっしゃると思いますので、長めに滞在すると思います。
魔王様とも会えると良いのですが、さすが組合長達が辿り着く頃には、魔王様も街へと戻っているかもしれませんね。
ん?よく考えたら、魔王様に情報機関組合「シンデレ」の組合長が挨拶してないのは問題ですよね!
申し訳ございません魔王様!急いで組合長を向かわせます!
どうか、お許しくださいませ!
もう!本当に何考えているのでしょうね!組合長は!
それでは、本日の報告はここまでとさせて頂きます。
またご連絡いたしますね!
<追伸>
自分の脱いだ衣装を見て思い出したのですが、魔王様に
神樹祭用の衣装をお見せすることもでしたね。
着古したものなので、大したものではないのですが、
それでもお見せできないのは残念に思うのです。
せっかくトーチャックの首飾りもつけてみたのに!
まぁ、トーチャックは季節外れだよと指摘されてしまった
のですけどね。
その時に笑った絡まない蔦は今思い出しても、イライラ
としてしまいます!
自分だって気づいてなかったのにね!
頑張って刺繍したカーチフも見てもらいたかったです。
綺麗な衣装にカーチフを巻いたジロナは、
とても素敵でしたもの。
是非とも魔王様にも見てもらいたかったものです。
またの機会ではよろしくお願いいたしますね!
埋もれた蛙
<補足>
・神樹祭
神樹信仰者が神樹のある「マッカーニア」に集まって
祈りを捧げる行事。
「ティルファ」周辺では、「パチレーロ」「ティファ」
「フユユン」を経由して、「マッカーニア」へと向かう。
「フユユン」以降は、街がないため、野宿する必要が
ある。
旅慣れている商人や運び屋、行商経験のある職人など
が中心となって、旅の間は取り仕切っている。
他の地方では、同じ樹種で代用し、神樹祭を行っている。
熱心な神樹信仰者は、「マッカーニア」まで足を運ぶ
らしい。
・神樹の祝福
熱心な神樹信仰者の祈りが神樹に届くと、逞しい神樹の
葉が落ち、神樹信仰者の頭上から降りかかると言われて
いる。
淡い日の光に照らされ、葉が舞い降りてくる光景は鳥の
ように見え、葉鳥が舞い降りてくるという。
その光景を見た者は祝福を受けたと喜びの声をあげる。
・使用人のお菓子
ラスクのこと。




