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1029年08月02日
眩しいくらいの光を浴びながら空を仰ぎ見るのも、なかなか気持ち良いものです。
鮮やかな青い空にふんわりとした雲がくっきりと映えるのを眺めるのは、目を楽しませてくれますしね。
緩やかな風に乗って様々な形へと変わっていく雲は、街の子ども達にとってはとても面白い見世物のようなものです。
様々な雲に想像を膨らませていく子ども達と一緒に空を眺めてみると、不思議とそうにしか見えないようになってしまいます!
身にまとう衣装に、綺麗な毛並みを想像させる馬と愉快な雲が空を行進していくのです。
この時期に相応しい立派な樹の形をした雲だってありましたからね!
そんな様々な雲が西へ西へと流れていくところを見送っていますと、何だか騒がしさが遠のいていくような感覚を覚えてしまいます。
でも、あのふんわりとした雲が今頃は魔王様の街へと辿り着いているかもしれないと考えると、そんな感傷も和らぐというものです!
遠くの街でも同じものを見ることかもしれないこの奇跡は、とても素敵なことだと思いませんか?
魔王様、是非とも見落とさないように、空を仰ぎ見てくださいませ!
いよいよ8月に入りまして、神樹祭もあと数日といったところになりましたね!
やはり誰もが少し浮ついてきているような気がしてきます!
普段はあまり外に出ない方は、不安と期待を一緒に感じていることでしょう!
ふふ、そこはご安心くださいませ!
私達、情報機関組合「シンデレ」が彼らをエスコートしてあげますから!
聡明な魔王様なら心配はしていないでしょうが、私達にお任せあれです!
さて、神樹祭が目の前としても魔王様にはお伝えさせて頂きたい情報がございますので、どうぞお付き合いくださいませ!
早速ですが、是非とも魔王様のお耳に入れて頂きたい情報があります。
魔王様は花の街「ベリゲーニ」でひそかに人気が出ている商品があることをご存知でしょうか?
ティリ―様からお聞きした話なのですが、数も少ない商品みたいで「ベリゲーニ」にしか出回っていないようなのです。
変わった形状をした水差しのようでして、注ぎ口が鳥や動物の頭を模倣した作りになっているんですって!
もう!聞いただけでも面白そうなものだとは思いませんか?
一体どんな水差しなのか!魔王様も気になることだと思います!
ティリ―様が見たことがあるのは鳥の形をした水差しとのことですが、目や毛並みに口ばしと細かいところまで力を入れているとのことです。
口ばしからこぼれ出る水が何だかおかしくて、面白い代物だったと言ってましたね。
こんなことを言われたら気になって仕方ないものですよ!
でも、この水差しは結構な価格で取引をされているようでして、基本的には貴族くらいしか手にしていないようなのです。
あの街には「ネイスリム」や「ベリゲーニ」の土地を持った貴族がたくさんいますので、初めから彼らを対象としているのかもしれませんね。
ティリ―様でさえ、商談で立ち寄った貴族の屋敷でたまたま見かけたと言ってましたし。
これは私では手にするのは難しそうですね。
でも、ティリ―様はその水差し職人に興味を覚えたみたいで、近いうちに探し出すと言ってましたね。
日用的にも使えるものですし、動物を模倣するほどの技量があるのですから、ティリ―様が目をつけるのも当然といったところでしょうか。
上手く探し出すことができれば、ティリ―様の扱う商品もまた一つ広がっていくことになりそうですね!
「ベリゲーニ」でしか取り扱ってないのももったいないですし、他の街にも出回るようになると良いのですが。
それにしても、私もその職人に会ってみたいですね!
会うことができれば、絶対にフワックロの水差しを作ってもらうように頼むのに!
ふわっふわとしたフワックロの口から注ぎ出る水!
もう!それを眺めるだけで幸せいっぱいになりそうなのですよ!
どうにかならないものかしら?
あっ、そういえばですが、前にお世話させて頂いたシャリームお嬢様が確か「ベリゲーニ」に暮らしていましたね…
シャリームお嬢様が何か知ってないかしら?
ちょっと今気づきましたので、確認してみます!
そういえばあそこの貴婦人達は、日傘を着飾って遊ぶという良く分からないことをやってましたね。
もしかしたら、同じように水差しも着飾っているかもしれません!
こう考えたら、シャリームお嬢様が職人のこととか知っているような気がしてきましたよ!
どうぞ、ご期待くださいませ!
この水差しは魔王様のお役にきっと立てる代物と思いますので、是非とも覚えていてくださいね!
こういったものを手元に置くのは、それだけで周りの目を惹きつけることができると思いますもの。
魔王様の威厳をより強くする道具として是非とも手に入れたいものですね!
さて、話は変わってしまうのですが、魔王様は"アブリート=エスエレ"をご存知でしょうか?
結構有名な方のようなので、もしかしたら知っているかもしれませんね。
一応簡単に説明させて頂きますと、清掃協会きっての優秀な方となります。
私は実際にはお会いしたことはありませんが、様々な街や貴族などの屋敷に呼ばれるほどの方だとか。
清掃協会で名指しで指定されるのはこの方くらいとも聞きますね。
そんな彼ですが、どうやらこの「ティルファ」周辺にも清掃に訪れるようなのですよ。
とは言っても、「ティルファ」には訪れず、おそらくは「マッカーニア」あたりに向かうことでしょう。
この時期は神樹祭で使用する浴場清掃に様々な場所から呼び出されていると聞きましたしね。
ただ、不思議なのはあの辺りには貴族も特にいませんので、なぜ彼が呼ばれたというところでしょうか。
わざわざ彼を呼ばなくても、「ティルファ」にも清掃協会があるのですから、そこから呼べば良いような気がするのですよ。
「マッカーニア」では神樹祭前の清めに多くの方が利用しますので、念入りにやりたい気持ちは分かりますけどね。
「ティルファ」「パチレーロ」「フユユン」に魔王様の街と、こう数えますと多くの人が集まりますし。
ああ!魔王様がご利用するのですから、やはりアブリートが清掃するのは当たり前なのかもしれませんね!
なるほど、今納得できましたよ魔王様!
確かに「ティルファ」に居る程度の清掃協会では話になりませんもの!
そうそう、このアブリートに関する情報ですが、実は子ども達から得た情報となります。
ふふ、意外に感じるかもしれませんね。
でもですね魔王様、子ども達から得られる情報というのはなかなか有益なものがあるのですよ。
「ティルファ」の子ども達は基本的には一般生活区の広場を遊び場にしているのですが、そこには一息をつけようと訪れる方が結構います。
商人に運び屋と基本的には中央区で活動していますが、あそこはとにかく人が多いですからね。
ゆっくりと静かなところで一息入れたいと考える方は結構いるものなのです。
その点一般生活区の広場では子ども達が遊んではいますが、中央区ほど人も多くはないのでゆっくりと休めるというわけなのですよ。
まぁ、初めて街に来た方がいきなり一般生活区に訪れることはないので、それなりに何度も行き来している方限定となりますけどね。
そう、そこで子ども達ですよ魔王様!
気の良い人たちというものは、近くに子ども達が寄っていけばお話したり、遊んであげたりとするものです。
一度遊んであげれば、次の機会でも足を運んでくれるようになりますので、街に訪れた情報を得るには丁度良かったりするのですよ!
いつ、誰が「ティルファ」に訪れている、帰ってきているという情報はなかなか見落としがちになりますからね。
誰といつ遊んだという話を聞けるだけで、人の出入りを確認することができるのですよ。
もちろん、これだけで情報を判断するわけではありませんが、意外と子ども達の情報から知ったということも結構あるものなのです。
今回のアブリートに関する情報も、気前良く遊んでくれた運び屋や清掃協会の方から聞いた話のようでしたしね。
そんな有益な情報を与えてくれる子ども達ですが、そう簡単にべらべらと話してくれるわけでありません。
私の場合は自分の息抜きも含めていますが、やはり一緒に遊んであげたり、甘い果実を手土産にするのが有効的ですね。
前に採ってきたウィムビュワを振る舞ってあげれば、それだけで幸せそうな顔を見せてくれますし。
とてもとても喜びながら果実をかじる姿は、もう!見ているだけで頬が緩んでしまうくらいですよ!
あの輝く笑顔を見せてくれるだけで、私としては満足してしまいそうになりますもの!
これだけでも十分なのかもしれませんが、せっかくの子ども達と遊べる機会なのです。
甘い果実を与えるだけで終えることなんて、私はしませんからね!
そうですね、今回はウィムビュワと一緒に採っておいた木の実を使って色料を作ったりと、色々と準備をしてきたのですから!
作ってきた色料は薄い青い色なのですが、それで子ども達の指を染めてあげれば、色鮮やかな指を眺めながら喜ぶ姿を見ることができます!
活発な子達は他のこの衣装や顔を染めようと、その染まった指でいたずらをしてくるものです。
笑い声が響き渡って心地の良いものですが、当然ながら私も狙われてしまいますからね!
ええ、もう!私も顔に髪と色料に染められてしまいましたよ!
まったく、本当にいたずらっ子ばかりなんだから!
他にも少し脆い木片と先を少しだけ尖らせた獣の骨を用意すれば、木彫りだって楽しむことができるのです!
大体が職人の子なので、こういった遊びは結構喜ばれますね。
みんな手先が器用ですので、できあがった作品を見るのも一つの楽しみなのですよ!
できあがった作品を掲げながら、誰のが一番だと競い合う姿も微笑ましくて癒されてしまいます。
それにどれも良くできたものを作り上げますので、それらを眺めていて楽しくないわけがありません!
とても楽しい時間を過ごすことができて、情報だって手に入れることができる!
もう!良いことばかりで素敵だと思いませんか?
仕事ばかりでは気が張りつめてしまいますので、こういったことはたまには必要だと思うのですよ。
魔王様もいかがでしょうか?
うふふ、少しばかり長くなってしまいましたが、今回の報告は以上とさせて頂きます。
どうぞ、この情報を有効的にご利用くださいませ!
それでは、神樹祭では遠目からでもお姿を目に焼き付けたいと思います!
魔王様の神樹祭衣装はとても楽しみにしています!
私のは着古した衣装となりますので、あまり見栄えも良くないのはご了承くださいね!
埋もれた蛙




