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1029年07月19日
影も濃く塗りつぶされた頃に、空を見上げると僅かな光が点々と照らしているものを見ることができます。
「ティルファ」の夜空はなかなかと綺麗ですので、眺めていると落ち着いてくるものです。
少し冷たい風を感じながら、そんな空を見つめているのがちょっと楽しみだったりするものなのですよ。
こんな落ち着いた時間が好きなのですが、最近はそうもいかなかったりします。
外が暗くなる時間帯になっても、騒がしいほどの陽気な声が街中で聞こえてきますからね。
獣狩りに職人達の帰還と、渡り合う話題が尽きませんので、遅い時間になってもなかなか宴は終わらないものです。
落ち着いた時間は得られませんが、そんな騒がしくも陽気な声を聞くのも違った楽しみを与えてくれます。
なんていうか、陽気に笑う声を聞くと、どこか暖かく感じることができるのですよ。
どこか暖かく感じる声を聞きながら、空を眺めて風を感じるのも気分が安らぐものなのです。
魔王様も、何か気持ちを落ち着ける時はどうしているのでしょうか?
湯あみに食事と、様々な方法はありますが、夜空を眺めるのも気持ちが良いものですよ。
もし、よろしければお試しくださいませ!
それでは、本日も魔王様のために報告をさせて頂きますね!
まずは、魔王様も気になっているかもしれませんが、前回報告させて頂いた職人達についての内容となります。
3日ほど前になりますが、無事に職人達は帰ってくることができました!
今回はアマンズ商隊が丁度職人達が行っている街を通りましたので、ご一緒させてもらったみたいですね。
ええ、もちろんアマンズ商隊と一緒するのは知っていましたけどね。
ただ、アマンズ商隊も大きな行商となりますので、移動には時間がかかってしまいます。
「シェローム」や「パチレーロ」を経由してきましたので、実は少し心配していたこともあるのですよ。
この時期は獣が活発に活動する時期になりますので、「ティルファ」では獣狩りを行っているのですが、ラルグシラ川上流ではあまり聞きませんからね。
前に商隊の方が道の安全を確保するために、行っていると聞いたことがありますしね。
「パチレーロ」付近も「ティルファ」で獣狩りを行っていますが、今年はまだそこまで進んではいないのです。
活発となった獣に襲われてもおかしくない時期でもありましたので、心配していたのですよ。
今回は特にそんな被害もなかったようなので、安心しましたけどね!
ただ、今年は"カルパー"がいましたので、放っておいたら危なかったかもしれませんね。
早めに狩っておいて成功だったことでしょう!
ふふ、私達が得た情報からの行動により、物事が良い方向へと進んでいることが分かりますと何だか誇らしく感じてしまいます!
こんな瞬間が嬉しくて、情報機関組合の調査員をしているのかもしれませんね。
ええ、もちろん、魔王様のために情報を提供できた時が一番の喜びでございますよ!
賢明な魔王様からお褒めの言葉を頂きますと、それはもう!とても嬉しいものに違いありませんね!
そんな言葉を頂けるように、これからも張り切っていきますので、お楽しみにしてくださいませ!
さて、少しばかり話がそれてしまいましたので、気持ちを落ち着けながら続けていますね!
今回帰ってきた職人達の功労会ですが、もちろん予定通りに行うことができましたよ!
開催するのになかなか骨が折れましたが、ここでやっていけるのが情報機関組合「シンデレ」の実力なのです!
それはもう!宴だって大いに盛り上がりましたもの!
私が作ったビーズルネセレードもなかなか評判が良かったのですよ!
功労会はただ開くだけで私たちの仕事が終わるわけではありませんからね!
宴の料理で少しばかり腕を振る舞いながら、情報収集をしていたというわけなのです!
そうそう、久しぶりに広げない翼先輩も組合に顔を出してきましたので、今回は一緒に料理をしたのですよ。
同じビーズルネセレードを作っていたのですが、何故か広げない翼先輩が作ったものの方が歯ごたえがありましたね。
魔王様も知っていると思いますが、ビーズルネセレードは少し柔らかいものなのですが、何ていうか弾力があったのですよ!
丁度良い硬さになっていて、食べ応えも充分な仕上がりとなっていたのです。
ああ、私が作ったものも綺麗に仕上がったので自信あったのですが、広げない翼先輩のものと比べると負けた気がしてしまいましたね。
私のも宴では、様々な話題と一緒につまんでいてくれて好評だったのですが、気にしてしまうものです。
ふふ、こんなにも美味しい料理が作れる広げない翼先輩は本当に素晴らしい方なのですよ!
料理をしている間だって、ずっと話ながらも手を止めませんしね!
どうやら、アルメーネのお守りについての意味も調べ上げていたようなのです。
そこは、私も"アカスキ"の調査員から聞いていたので知っていたことなのですが、広げない翼先輩がそこで終えているわけがなかったのです。
"イドス語"のことも当然ながら調べていまして、その民族やお守りに使っている石についてまで手を伸ばしていたのです!
そこまで調べなくても良いのではないかと思いましたが、広げない翼先輩の好奇心はお守りの意味程度では満たされなかったのでしょう。
ただ、聞いているとお守りの意味は結構早く分かったようなのですよ。
それならもっと早く教えてくれても良いと思いませんか?
もう!自分の好奇心を優先するなんて酷いですよ!
もちろん、私も自分で調べていましたけど、先に教えてくれても良いと思うのですよ。
と、こんな話をしながら料理を作ったり、宴に参加していたのです。
本当はもっと詳しく民族の話などをしていたのですが、興奮気味だったせいか、早口で良く分からないところがあったのですよ。
広げない翼先輩が落ち着いた時に話をもう一度聞いてみようかしら。
しかし、広げない翼先輩が結構深いところの話をしていたせいか、ここぞばかりに話に参加する商人や情報組合のものらしき人がいましたね。
気前よく獲物分け与える狩鳥に、多くの狩鳥は嘲笑いながらも口を広げて獲物が放り込まれることを待つものです。
ただ、今回は次々へと獲物を口に放り込まれていきましたので、耐えきれずに吐き出してしまうものばかりだったのですけどね。
口に含んだ情報を飲みこめないということは、調査員としては恥ずかしいことですもの。
分かっていますからね魔王様!
私も同じだと言いたいことでしょう!
その通りでございますが、ここで終わらずに情報は飲み下すまで聞くことも重要なのです!
ここで終わりにはしませんので、ご了承くださいませ。
さて、肝心な話を書いてないことに気づきましたので、話を戻していきますね。
今回帰ってきた職人なのですが、その中で遠くの街や大量の依頼を受けたわけではないのに、帰ってくるのがこの時期になった方がいたのです。
「パチレーロ」付近の街に行っていたようですので、依頼が終わればすぐに帰ってこれる場所でもありますね。
腕を認められて引き止められていたのであれば、長く滞在することだってありますが、それでもないのですよ。
魔王様、では何でなのかと気になりませんか?
それはですね、その街で衣装直しの手伝いをしていたようなのですよ!
彼は若い職人でして、確か"セルバーンス"というのですが、街の人々にお礼を言われた!と自慢に話していましたね。
聞いてみると、彼は依頼を上手くこなした後は、特に専属の話もなくてがっかりとした感じで街を歩いていたようなのです。
そこで街の人々を見てみると、衣装は結構ボロボロでサイズも合ってなさそうだったですって。
すぐに「ティルファ」に帰りたくなかった"セルバーンス"は、自分は衣装職人だから少し衣装を直させてくれ と声をかけたようです。
そんなことを言われれば、街の人々は喜んで衣装を差し出してくることでしょう。
自分達では上手く直すこともできず、職人へ依頼だって出すお金がなかった方ばかりなのですからね。
街の人々に食べさせてもらいながらも、衣装直しをしていたようです。
"セルバーンス"は色んな衣装に触れることができ、色んな注文も聞くことができて勉強になったと言ってました。
食事や泊まるところも用意してくれて、凄く良い人達だったとも言ってましたね。
魔王様、どう思いますか?
私としては、街の人々に結構良いように使われたのではないかと思うのですよ。
食事などを用意してくれるとはいえ、無償に行っていたようですからね。
何やら注文を受けて、簡単な装飾も行っていたようですし。
本来なら結構な額の仕事になっていたと思いますしね。
街の人々に感謝されて、「ティルファ」の職人への印象が良くなるのでしたら良いのですが、安く見られるようにもならないかと心配してしまいます。
"セルバーンス"としては、確かに多くの経験を積むことができたと思うので、これからに期待ですね。
聞いた話だと仕事が早そうですので、何か頼んでみるのも良いかもしれません。
こんな風に宴が続いていきますと、やはり疲れてきてしまいますね。
喜ばしくもある貴族の専属へと誘われた職人もいましたし、嬉しさのあまり多くの宴を開いたりもするものです。
情報機関組合の調査員として、頼まれてしまいましたら、やり遂げる必要がありますからね。
「シンデレ」として、恥ずかしくないようにこなしていっているのでございます。
ただ、絡まない蔦は結構な量を食べたり飲んだりしているのを見かけますと、情報収集を本当にしているのかと気になりますけどね!
料理とか手伝いはあまりしないのだから、そこはちゃんとしてほしいものです!
さて、長くなってきましたので、今回はここまでとさせて頂きます。
このところ暑くなってきましたので、魔王様もお身体には気を付けてくださいね。
ラムピーク入りの水売りが良く見かけるようになりましたので、喉が渇いた時には買ってくださいませ。
それではまた魔王様のお役に立てる情報を手に入れましたら、ご連絡いたしますね!
<追伸>
申し訳ございません、最後に書いた内容は余計な心配でしたね。
どうかお忘れてくださいませ。
あと、前に報告させて頂いたミレイ婆ちゃんのソースですが、少し真似を
してみると苦いものができてしまいました。
やはり簡単にはいくものではありませんね!
でも、完成させてみたいと思います!
埋もれた蛙
<補足>
・ビーズルネセレード
水煮した豆とイモ類を潰して、ペースト状にしたものを
スープと一緒に煮込んだもの。
茹で上がったビーズルネセレードは少しもっちりした
ものに仕上がる。
小腹を満たすのに丁度良い料理。
味の濃いものを食べた時の口直しにも丁度良い。
・ラムピーク
親指よりも程度大きさの果実。
少し硬さがあるが、簡単に割ることができる。
2つに分けた小粒を食べると、少し酸味を感じる味。
ラムピークには消毒の効果があると言われており、
水などにそのまま入れていることが多い。
暑い日には桶にラムピーク入りの水を売り配る人が
街中を歩く姿を見かける。




