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1029年07月14日
街に漂う香ばしい匂いに誘われて、「ティルファ」へ訪れる足跡が増えてきています。
中央広場では、脂の滴る串焼きを嬉しそうにかぶりつく子ども達を多く見かけることができますね。
食べ応えのある串焼きなんて滅多に食べられないので、それは美味しそうにかぶりついているのです!
そんな人々を見ていると何だか微笑ましくて、こちらまで嬉しくなってしまうものですね!
食欲のそそる匂いが街中に広がっていますが、私達はその誘惑に負けないように駆け巡っています。
悲しいもので、美味しそうな匂いに負けてお腹が空いてしまうのですけどね!
でも、ここで食欲に耐えることも調査員として必要な力だと思うのですよ。
串焼きを夢中にかぶりつくだけでは、欲しいものなんて得ることはできませんもの!
魔王様、現在「ティルファ」では、たくさんの美味しいお肉が食べられるのです!
いつもは下旬にならないと、なかなかお肉は食べることができないのですが、今年は少し早いのですよ。
今年はカルパーを早めに狩ったからなんですけどね。
ただ、それだけではありません!
血気盛んな若者たちが、早めにカルパーが狩られたことに対抗心を燃やしてまして、次々へと獣狩りへと向かっているのです!
まだ「ティルファ」の周辺ですので、日が落ちる頃には戻ってくるのですけどね。
今のところは大きな怪我をした方もいませんので、この調子で無事に終わって欲しいものです。
獣狩りは順調に進んでいるようですので、あと少しすれば「フユユン」や「パチレーロ」付近へと向かうことでしょう。
いつもは獣狩りは下旬頃まで行っているのですが、今年は少し早く終えることができそうなのです。
ふふ、お肉も早く食べられるし、「フユユン」や「パチレーロ」へ向かう道が早く安全になるのはとても嬉しいことなんですよ!
しかし、魔王様。
本当、カルパーの人気が凄いのですよ!
この辺りではなかなか手に入らないものなので、珍しいこともあるのですが、たくさんの人がカルパー目当てに訪れてくるのです!
確かにお肉は美味しいですし、牙や毛皮も綺麗に手入れしていますので、なかなか人気もありますしね。
牙の首飾りなんかは、すぐに売り切れてしまうほどなのですよ!
カルパーの牙はお守りとしても利用されていますし、4本の牙を紐で通した首飾りは無骨なものとなりますので、男性の方が手に取っていましたね。
鋭い牙が格好良いと思うのですが、あまり女性の方には興味がそそられるものではなかったようです。
それにやはり、一番はお肉なのです!
お肉が主に取引に使われるというのも、納得するほどに柔らかくて美味しいお肉でしたからね。
そんな美味しいお肉が手に入ったら、当然ながらミレイ婆ちゃんのところに集まってくるというものです!
もう!じっくりと焼いたお肉に、甘辛く煮込んだ魚介ソースがとても合っていて、それはもう幸せに感じてしまうほどなのですよ!
ミレイ婆ちゃんの料理には、いつもながら惚れ惚れとしてしまいます!
誰もが笑顔で料理を食べている姿を見ますと、ミレイ婆ちゃんは本当に凄いと思ってしまいますね。
と、「ティルファ」ではカルパー目当てで多くの人が訪れています。
取り扱っている商品も良く売れますし、注文も受ける職人も増えてきているみたいですので、喜ばしいことなのですが、少し気になることもあります。
そう、カルパーの情報があまりにも早く周辺の街へと渡っていると思うのです。
この時期は、獣狩りで得たお肉を目当てに「ティルファ」へと訪れてくる人は毎年いるのですが、その人達は大体下旬頃に来ますからね。
獣のお肉や毛皮などを目当てに来るので、獣狩りが終わった頃に合わせてくるものです。
それなのにですよ魔王様!
今年はまだ獣狩りも本格的に始まってない時期から訪れてくる人がいるんですもの!
それも皆カルパー目当てなのですから!
誰かが情報を広めたのでしょう!
一体誰が広めたのかまでは分からないのですが、もう!本当に騒がしくて忙しくなっているのですよ!
訪れた人達に街を案内したり、職人を紹介したりと、目がまわってしまいそうです!
1年に1度の獣狩りですので、「ティルファ」では大いに盛り上がっています。
今年はカルパーのこともあって、今まで以上といっても良いかもしれません。
ただですね、こんな時だからこそ面倒なことも起きているのです。
実はですね、魔王様。
大きな依頼や遠くの街へと出向いていた職人達が、丁度この時期に帰ってくるのですよ。
アマンズ商隊と一緒に帰ってきますので、いつもこの時期になるのですけどね。
それがもう、本当に面倒なことになるのです。
この時期に帰ってくる職人達は、基本的にはある程度の成果を出した人達ばかりとなります。
上手くいってない場合は、早めに切り上げられることもありますからね。
そうなのですよ、大きな依頼を達成した充実感などを胸に帰ってくるものです。
上手く腕が認められていた場合は、依頼元の貴族などから専属となる誘いを受けている職人だっているのですよ!
一刻も早く親しい人に話をしたいでしょうし、早めに荷物をまとめる準備だってするのかもしれません。
そんな人達がですよ、帰ってみたら街では獣狩りに夢中で、注目されないのです。
これは、とても寂しくは感じてしまいませんか?
そんな有望な職人たちを上手くフォローしてあげるのが、情報機関組合の調査員というものです!
街も商業協会も獣狩りに手いっぱいとなってしまいますので、私達が帰ってきた職人達を労う場を用意してあげるというわけなのですよ。
大事な職人ですからね、良い関係を築きたいですものね。
情報機関組合も他の仕事で手いっぱいなので、なかなかこちらまで手をまわせない組合もあります。
でも、私達「シンデレ」では、職人達のフォローを優先的に作業を進めているのですよ。
これは、職人を大事にしたいという組合長の方針なのですけどね。
ええ、もちろん私も依存はありませんが、やはりきついものはあります。
街中では獣狩りの成果を肴に宴を開いていますので、場所を確保するのも一苦労というものです。
まず、功労会だけで場所を確保することは難しいものとなります。
大体は獣狩りの宴に参加させてもらうように交渉する形になってしまいますね。
ふふ、聡明な魔王様なら、きっと違和感を感じたことでしょう。
職人達のために功労会を開くのに、獣狩りの宴に参加で大丈夫なのかと思ったのではありませんか?
ええ、感じて頂いた通り、通常であれば職人達の気を悪くしてしまうものとなります。
ただ、大丈夫な方法があるのですよ魔王様。
功労会をただ開くのでは、なかなか人は集まらないものです。
職人達にとって、関係のない人達ばかりが集まったらそれはあまり意味のないものとなってしまいます。
そう、重要なのは参加する人なのです!
獣狩りの宴だとしても、話を聞かせたい相手が参加しているものでしたら、意味合いも変わってくるものなのですよ。
知り合いの職人が狩った獣について話が盛り上がるのは、そう悪くないことでしょうしね。
ここらを上手く把握し、調整できるかも腕の見せどころといったところなのです!
もう!本当に疲れましたよ魔王様!
実はやっと功労会の調整ができたところだったりするのです!
街中を駆け巡りましたので、足が痛くて仕方ありません。
2日後頃にアマンズ商隊が訪れる予定ですので、そこに職人達も帰ってくることでしょう。
吉報を聞くのが、今からでも楽しみですね。
もちろん、細心の注意を払って情報を探りますけどね!
さて、月も綺麗に輝く遅い時間帯となってきましたので、今回の報告も以上とさせて頂きます。
次は功労会後あたりになるかしら?
魔王様もきっと、どんな職人が認められたか気になりますよね!
是非とも次回の報告を楽しみにしてくださいませ!
<追伸>
ミレイ婆ちゃんの肉料理に使ったソースですが、本当に美味しかったので、
今度教えてもらおうと思います。
上手くできたら、是非とも魔王様にも食べて頂きたいです。
もしも、「ティルファ」へ訪れる時には声をかけてくださいませ!
埋もれた蛙




