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1029年07月09日
次から次からと寄せられてくる人波で、「ティルファ」は溢れてかえっています!
激しい流れとなった人波に飛び込んで、必要なものを見つけ出すのは大変なものです。
穏やかな流れを読まなければ、容易には這い出ることすらもできなくなってしまいますからね。
そもそもこんなにも大きな人波に溢れているのに、欲しいものが見つからないのも悲しいものです。
なかなか見つけることができない横で、溺れながらも欲しいものを手にした者がいれば羨ましく感じてしまいますね。
ただ、流れを見極めることができずに溺れた者は、結局は手にしたものを失ってしまうものです。
優しげに手を差し伸べてくれた者に、かすめ取られることがほとんどでしょう。
目の前に魅力的なものを見つけたからと、ただ飛び込む行為は愚かなものなのですよ。
私達は慎重に取り組む必要がありますからね。
さて、魔王様が探していらっしゃる"ドルペトロス"について、少しだけ進展がありましたので、報告させて頂きますね!
少し違うものかもしれませんが、この「ティルファ」周辺でも同じような石が見つかったというものなのです!
周辺と言いましても、「ボルダジーグ」付近になりますので、それなりに遠くにはなってしまうのですけどね。
ただ、"ドルペトロス"を取り扱っているところに比べると、遥かに近い場所となるのです!
これならば、手に入れることもできることでしょう!
浮かんだ草先輩が手に入れた情報なのですが、特徴としては色が変わる石とのことです。
そんな色が変わる石なんて他には聞いたこともありませんので、私としては恐らく同じものだと思うのですが、浮かんだ草先輩は違う意見のようなのです。
色が変わると聞いているだけであり、それが日の光によって変わるものなのかも分からない。
さらにどんな色に変わるかも分からないのだから、良く似ている石の可能性だってあるんですって!
ちょっと細かいと思いませんか?
こんな珍しい石なんですから、きっと同じものだと私は思うのですけどね!
ただ、浮かんだ草先輩の意見を聞いたら、組合長も違うものの可能性は確かにあると言いだしますし。
始めは一緒に頷いていたのに!
ああ、魔王様、安心してくださいね。
私だって、浮かんだ草先輩の情報だけで判断しようなんて思っていません。
ただ、あの珍しい石が他にもあるとはどうしても考えられないだけなのですよ。
それに、詳しいことを確認しようにも、他に詳しい人を見つけることができなかったですしね。
どうやら、出回っていない情報ですので、裏をとるのが難しいのですよ。
あっ、魔王様?
出回っていない情報と聞いて、信憑性がないと思っていませんか?
そんなことはありませんからね魔王様!
この情報をどうやって手に入れたのかですが、ここが浮かんだ草先輩の凄いところになるのですよ!
「ボルダジーグ」付近にある遺跡の調査団関係者から聞き出したみたいでして、どんな風に知り合ったのか本当に不思議なものです。
知り合った方は、"スマイリィ=ソーリック"という学者のようでして、仲良くなった時に興奮気味に教えてくれたんですって!
普段は「シェローム」で街の人々に読み書きなどを教えている学者のようでして、時々見聞を開くためにメイズラン商隊に参加しているみたいなのです。
「シェローム」から「ボルダジーグ」は確かに遠いですからね、商隊の協力がなければたどり着くことも難しいでしょう。
今回はいつも参加している縁もあってか、遺跡の調査を依頼されたため、調査団に参加しているとのことです。
彼は、メイズラン商隊が抱えている学術面から見解を求めることができる調査員といったところでしょうね。
ということはですよ魔王様。
「ボルダジーグ」付近にある遺跡の調査団は、メイズラン商隊か、もしくはその出資者が絡んでいるということになりますね!
確か調査団は、関係者以外は立ち入れないようにする徹底ぶりだったはずなので、有益なものが見つかっているのかもしれません。
今回の石についても、新しい発見があったと喜んでしたようですしね。
これでお分かりになったと思いますが、そもそも浮かんだ草先輩がこの情報を手に入れていることが凄いことなのですよ。
徹底して情報を漏らさないようにしているようなところから、情報を手に入れているのですからね!
他の人が知っていなくも不思議ではありません。
ここでさらに詳しい情報を手に入れるには、もう直接現物を確認するくらいしかないでしょう。
神秘的な石と言われいますし、個人的にも見てみたいですしね!
前に聞いたものとは違うのかもしれませんが、きっと同じくらいに綺麗なものだと思うのですよ!
ああ!どきどきとしてしまいますね!
ただ、そう簡単には現物を確認するのも難しいものとなります。
石がある場所は「ボルダジーグ」付近の遺跡であることは分かっているので、向かうことはできるのですが、入ることはできないでしょう。
さすがに浮かんだ草先輩も、遺跡の中に入れるような権限の持つ知り合いはいないようですしね。
恐らく、ただの調査員である"スマイリィ"では駄目でしょうし。
それに、「ボルダジーグ」は遠いので、簡単に足を運べる場所でもありません。
今は獣狩りの期間中でもあるし、神樹祭も控えていますからね。
そんな時期に「ティルファ」を離れるのは難しいものとなります。
悲しいことに情報機関組合「シンデレ」は人数が少ないので、ここで調査のために一人でも減ると厳しいものなのです。
まぁ、最近は広げない翼先輩や、浮かんだ草先輩が見かけなかったりと常に人が少ない気はしますけどね!
ここは一人で考えても仕方ないので、皆で頭を悩ましていきたいと思います。
魔王様も良い案があれば、ご教授くださいませ!
あっ、そうだ!魔王様!
話は変わってしまうのですが、アルメーネのお守りついても分かったことがあるのです。
あのお守りは少し面白いものみたいでして、これから旅をする人に贈る時と、旅をしている人から渡す場合で意味が変わるようなのです。
それぞれの石に、"イドス語"という古くからある文字を心を込めながら1文字ずつ刻み込んで作るようです。
ちなみに"イドス語"は東側に古くからいる"イドス民族"が今でも使っている言語なんですって!
「ボルダジーグ」周辺で良く見かけるのは、その近くに"イドス民族"の集落があるみたいなのです。
"イドス民族"は"ベオクシー語"も使えるので、大丈夫とは思いますが、少しだけアルメーネが心配になってしまいますね。
聞いたこともないような言語を利用しているところで、上手く情報収集はできているのかしら?
えーと、それでですね、お守りに刻まれている文字ですが、"勇敢"、"太陽"、"月"という意味みたいです。
これを旅人に贈った時は、"どんな苦難がこようとも諦めないで、日が昇っている時も、日が暮れ月が空を照らす時も見守っています"という意味になるですって。
なんだか素敵な意味なものと思いませんか?
きっと大切な人から贈られてきたのでしょう!
一体どんな関係だったのか、気になってしまいますね!
それでですね、旅人から渡してきた場合ですが、"夜の安息でも、日が昇る活動の時でも、力強いあなたを忘れません"という意味に変わるようです。
ふふ、アルメーネは旅人から渡されたようですが、一体何をやったのでしょうか?
これは、是非ともアルメーネに聞いてみたいといけませんね!
また会える時が、より楽しみになってきましたよ!
おっと、そういえば、どうやってこの"イドス語"を知ったのかを書いていませんでしたね。
実はですね、ある情報機関組合の調査員から手に入れた情報になるのです。
ここのところ、少しばかり騒がしくて、忙しかったので気分転換にラルグシラ川を眺めていた時のことなのですよ。
ラルグシラ川の穏やかな波を眺めていると不思議と心が落ち着いてくるものです。
もちろん、昼間は慌ただしく人々が出入りしていますので、夜の誰もいない時しかできませんけどね。
ラルグシラ川を眺めながら、イルグミ酒を少しだけ飲むと、疲れが癒されていくような気がするのですよ。
そんな時にですね、"ブルーアップロ"という確か"アカスキ"の調査員が、私の近くで倒れ込んできたのです。
ええ、あれは驚きましたよ。
一体何が目的なのかと身構えてしまいましたが、どうやら喉が乾きすぎて倒れてしまったようなのです。
頑張ることは素晴らしいですが、程度は考えてほしいものですね。
仕方ないので、私のイルグミ酒を少しだけ分けてあげましたよ。
ほのかに感じる甘さが疲れも多少は癒してくれるでしょうしね。
その後は、聞いてもいないのに、一番腕の良い鍛冶師は誰かを調べるために朝からずっと街を駆けていたら倒れたと説明してきましたよ。
親しみやすく、分かりやすい話し方でしたので、不快にはなりませんでしたが、正直意味は分かりませんでしたね。
話している内容でも、自己紹介でも調査員であることは分かっているのに、なぜ仕事の結果を教えてくれるのでしょうか?
そこがまったく分からないものなのですよ。
前にも"アカスキ"の調査員と話した時にも思いましたが、彼らは情報を秘密にする重要性が分かってないような気がするのです。
さすがに依頼人などの話はしませんでしたが、どの鍛冶師が腕が良いかは結構重要な情報と思いますけどね。
彼の主観となるのでそのままは利用できませんが、せっかく聞いてしまったものなので、ありがたく有効活用させて頂くとしましょう。
そうそう、その時にお守りについて聞いてみたら、快く教えてくれたのですよ。
丁度"ブルーアップロ"は「ボルダジーグ」付近のことは詳しいみたいでして、"イドス語"について教えてくれたということなのです。
知識も深く、調査も真面目にできていますので、きっと優秀なのだろうとは思います。
ただ、簡単に情報を話し過ぎているように思えますね。
イルグミ酒を分けてあげたといっても、私としては一切の対価は支払ってない状態なのに、有益な情報を得てしまっているのです。
他の組織とはいえ、少し心配になってしまいますね。
魔王様は大丈夫と思いますが、情報機関組合"アカスキ"にはご注意くださいね!
ああ、ちなみに広げない翼先輩は最近本当に見かけないのですよ。
調べ物に夢中になっているのだと思うのですが、さすがに心配してきますね。
そろそろ探してみようかしら?
お守りの意味も分かってしまったことですしね。
それでは、今回の報告は以上とさせて頂きます。
残念ながら、"ドルペトロス"の調査はまだまだ時間がかかってしまいそうです。
どうぞ、気長にお待ちくださいませ。
また、あなた様のためになる情報をお伝えいたしますね。
お休みなさいませ。
埋もれた蛙
<補足>
・ボルダジーグ
ティルファより、東側に存在している大きな街。
ボーダジン言語が主に利用されている。
街の周辺には、古代ボーダジン時代の遺跡などが多く見られる。
・ボルダジーグ付近の遺跡
ある調査団が幅をきかせており、他の者は足を踏み入れることが
できないようになっている。
行商の時に広げない翼が中に入ろうとしたが、失敗している。
遺跡の形状より、神殿ではないかと言われている。
・シェローム
ラルグシラ川の上流に位置する街。
細工関係の職人が多くおり、細かい装飾品が良く見かれられる。
・メイズラン商隊
ラルグシラ川周辺で幅をきかせている商隊。
メイズラン家が主に融資している商隊である。
・イルグミ酒
熟していれば少し甘い程度の果実。
親指程度の大きさであり、乾燥させたものを湯や酒に混ぜて
飲むのが一般的。
ほんのりとした甘さを感じることができる飲み物である。




