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人の溢れる「ティルファ」でも、一人の者に注目が集まることもあります。

誰もが目を惹くものを片手に、高々と腕を上げればそれは人目が集まるというものなのですよ!

驚きと歓声が響き、人々の熱気に揺さぶられるような感覚を肌に感じてきますね!。

あぁ!そんな人々の注目を浴びる者の傍らで、必死に人目を集めようと顔を真っ赤になるまで頑張っている火吹き人が哀れに見えて仕方ありません!

いつもなら多くの好奇な目を集めることができる芸も、この瞬間には勝ち目がないものなのですよ。

人目を奪われた中で、必死に頑張っている火吹き人の姿は、何だか寂しく見えてしまいますね。

思わず見物料を投げてしまうほどだったのですよ!


強い火の近くで弱い火を揺らしても、なかなか弱い火には印象が残ってないものなのです。

多くの虫も強い火の元に集まってきますし、濃い影も強い火の方が落とすことができるものです。

魔王様、私は強い火にのみこまれるような弱い火にならないように、日々の行動に注意していきますね!


それでは早速ですが、今回も魔王様にお伝えしたいできごとを報告させて頂きますね!

最近の「ティルファ」についてですが、前にも報告した通り獣狩りの参加者で溢れかえっています。

特に請負勘定所は、近辺の獣や獣狩りの日時と必要な情報を掲示していますので、本当に溢れるくらいの人が訪れているのです。

この時期の請負勘定所は1年で一番忙しいのではないかと思うのですよ。

いつものんびりとやっている受付の方などが、本当に慌ただしく動きまわっていますしね!

そんな感じで請負勘定所は忙しくなりますので、当然ながら取り扱う依頼も獣狩りのものばかりとなります。

獣狩り関係の情報しか受け取ってくれなくなりますので、いつもやっている街の情報を渡す仕事はお休みとなってしまうものです。

この時期は受付までたどりつくのも大変なので、請負勘定所に行く用事がないのは良いことなんですけどね。

本当にこの時期は溢れるほどの人が請負勘定所に集まっていますので、近寄りたくもないものなのですよ!


でも魔王様、請負勘定所に情報を渡す仕事がお休みだからといって、街での情報収集を疎かにはいけないんですよ!

獣狩りとは関係なく、今すぐにも解決してほしいことだってあるのですから!

そんな情報をちゃんと見つけ出す必要がありますので、力を抜くことなんてできないのです!

そう、ここでしっかりと仕事をこなすことができるのが、立派な調査員といけることでしょう!

ただですね、力を抜きたくなる気持ちも分かるのですよ。

この時期は請負勘定所を通して依頼書が作成できませんので、どうしても急ぎの場合は情報機関組合で依頼書を作成する必要がでてくるのです。

商業協会や清掃協会の管轄であるものなら、直接依頼書を渡したり、交渉などをしないといけないんですよ。

ええ、請負勘定所の代わりに色々とする必要が出てきますので、凄く大変なんですよ!

もう!本当に困りますよ!


協会や組合に渡せる仕事であれば良いのですが、なかにはそうもいかないものもあります。

そんな時は請け負ってくれる人を探す必要があるのですが、それもまた大変なのですよ!

この時期は、いつも請負を行ってくれるような人は獣狩りに参加する人が多いので、なかなか手の空いている人を見つけにくいのですよね。

ただ、そんなのはあまり大変ではありません。

私達は情報機関組合の調査員ですので、そんな仕事に合わせて請け負ってくれるような人を探し出すのは得意ですからね。

そうなのですが、魔王様!これがまた困ることがあるのですよ!

私達が作った依頼書の場合だと、請負勘定所で作成されるものよりも報酬が安くなってしまうのです!

報酬が安いと交渉も難しくなりますので、結構きついものがあるのですよ!

もう!街の管理者は本当に酷いんですよ魔王様!

いつもは街に関係する依頼の報酬は街が負担するのですが、この時は私達も報酬を負担しないといけなくなるのです!

請負勘定所を通していないので、組合で勝手に判断して作成された依頼書なので、自分たちも報酬を負担しろってことなんですって!

街にとって必要なものとして判断されたものは、半分くらいの報酬は負担してくれるのですが、残りは組合なんですよ!

組合は報酬が支払えるほど余裕なんてないのですから、半分の負担でも凄く厳しいものとなります。

先日行った依頼も、金銭を代用品に変えてもらうなどの交渉によって、なんとか乗り切ることができました。

どうしても報酬は安くなってしまいますので、根気よく交渉する必要が出てきてしまうんですよね。

はは、疲れてしまいますよ魔王様!


請負勘定所が利用できないから代わりにやっていることなのに、こんな扱いなのが納得できないのですよ!

魔王様は分かってくださいますよね?


でも、そんななかでも私達「シンデレ」は本当に困っていることを見逃したりはしません。

どんな条件であろうと請け負ってくれる人を探し出すのも、腕の見せ所ではありますしね!


ええ、先日もミレイ婆ちゃんの食堂で壊れてしまっているテーブルを交換するといった依頼も無事完了できましたので、ご安心くださいませ!

あっ、魔王様?

もしかして、そんな食堂のテーブルが壊れている程度がそんなに重要なのかと思いませんでしたか?

そんなことないのですよ魔王様!

一般生活区で切り盛りしている食堂は、特に「ティルファ」に暮らしている住人や職人が訪れてきます。

そう、「ティルファ」を支えている職人達に愛されるほどに美味しい料理を出してくれるのですよ!

もちろん、私もミレイ婆ちゃんの料理は大好きなのです!

私は良くハーブや、街で見かけた変わった食材を持ち込むのですが、そんな食材でもミレイ婆ちゃんは美味しい料理に仕上げてくれます!

ミレイ婆ちゃんは経験が豊富なので、どんな食材を持ち込まれても美味しい料理へと仕上げるのです!

ほとんどの人は、ラルグシラ川で獲れたものを持ち込んできますので、魚介類系の料理が多くなってしまいますね。

私が持ち込む食材はあまり見かけないものにしていますので、ミレイ婆ちゃんも困った顔を良くしてきます。

でも、そんな少し困った顔をしながら料理をしていくミレイ婆ちゃんの姿を見るのが好きなのですよ!

あの見たこともないような食材をどんな料理に仕上げていくのかって考えると、胸が高まってとても楽しい気持ちへとなっていくのです!

ふふ、獣狩りの後に獲った獣を持ち込む人もいるでしょうから、今からでも楽しみなのですよ!

どんな料理を作るのかしら?


そんなみんなに好かれて、愛されているミレイ婆ちゃんの食堂で壊れかけているテーブルがあるのです!

これは大変なことだと思いませんか?

素早く依頼書を作成してから、請け負ってくれる人を探しましたよ!

壊れかけたテーブルと交換するものは、中央区の売買組合にお願いしたらすぐに用意してもらいましたね。

ミレイ婆ちゃんの食堂で使っているテーブルは結構大きいものとなりますので、持ち運びも結構な力仕事となります。

破棄するテーブルもバラバラにしないといけませんので、本当に力仕事ですよ!

全部で3つのテーブルを、中央区から持ち運んだりと大変でしたね!

でも、ミレイ婆ちゃんの魅力なのか、少ない報酬でも多くの方が参加してくれましたので、日が暮れる前には無事終えることができたのです!


とても疲れる仕事ですが、綺麗になったテーブルを並べた時に浮かべたミレイ婆ちゃんの微笑みを見れば、そんな疲れなんて溶けていきますよ!

あぁ!あの綺麗なテーブルでミレイ婆ちゃんの美味しい料理!

絶対に気持ち良く食べられるでしょうし、今から何を持ち込もうかと悩んでしまいます。


えーと、こんな感じにですが、私達はみんなのために日々活動しているのです!

実に「ティルファ」を支える情報機関組合の活躍と言って良いことでしょう!


なーんてね、少し気取ってしまいましたね。

でも、組合長と二人で依頼書を作る仕事も本当大変なのです。

資料作成はあまり好きではなりませんからね!


さてと、あとはですね、"カルパー"についてもお伝えしないといけないことがありましたね。

前にも報告させて頂いた危険な動物である"カルパー"についての情報なのですよ。

といっても、内容としては凄く簡単なものになります。

大体予想した通りになったのですが、パチレーロの狩人達が早めに"カルパー"の狩りを始めたようなのですよ。

昨日ですが、中央区の広場に狩った"カルパー"を持ち込んできましたしね!

"カルパー"は結構大きな体をしていまして、パチレーロからも大人数で運んできましたので、それは注目されたものですよ!

あまりにも素早い行動でしたので、獣狩りの関係者はみんな驚いていましたね。

まだまだ、準備期間ですからね、なかには抜け駆けだ!と騒いでいる人もいるくらいでしたよ。

パチレーロの住人にとっては死活問題にもなりますので、責めることなんてできませんのにね。


これで"カルパー"の危険性は早めに排除されたということなのですよ。

持ち込まれた数も合っているみたいでしたので、獣狩りの情報からも"カルパー"は外されていることでしょう。

ええ、聡明な魔王様なら気付いたと思いますが、"カルパー"はこれで全部狩ったという確証があるのです!

そう、"カルパー"をここの近辺まで持ち込んできた奴が見つかったのですよ!

そいつから聞き出した"カルパー"の数と、これまでと今回で狩った"カルパー"の数が一致しましたので、安心できるようになったのです。

前に想像した通りに、この近辺で"カルパー"を育てようと考えていたようでしたが、逃げられてしまっていたようでしたね。

怖い話ですが、その時にそいつの仲間も数名"カルパー"に噛み殺されてしまったようなのですよ。

そんな動物を放置しないでほしいものですよね!


"カルパー"を持ち込んだ人を探し出し、狩った"カルパー"の数を素早く調べ上げた人物がいるのです。

彼がパチレーロ付近の山に"カルパー"が逃げ込んだことも調べあげ、パチレーロの狩人もまとめあげたと言われています。

ふふ、そんな人物がどんな人なのか気になりませんか魔王様!

正体はですね、身近な存在でして、浮かんだ草先輩だったのですよ!

もう!今までどこに行ってるかと思っていたら、こんなことをやっていたのですね!

昨日久しぶりに帰ってきたと思ったら、この報告なのです!

組合長も驚いた顔をしていましたよ!


いつもながら、浮かんだ草先輩は行動が読めないものですね。

一体どこから、どうやって情報を手に入れてきたのでしょう。

私が"カルパー"の危険性を街に伝えたことなんて、浮かんだ草先輩が行ったことに比べては大したことではありませんでしたね。

なんだが、少し悲しい気持ちにもなってきます。


ただ、報告している浮かんだ草先輩のあの顔は、何だか悲しそうにも怒っているようにも見えたのですよ。


"カルパー"は鋭い牙を持っていて、気性が穏やかという訳ではない。

確かに危険な動物であるが、通常はあそこまで暴れたりはしない。

環境の変化がより気性を荒くしてしまったのだ。

"カルパー"が怖がられる動物となってしまったのが、とても悲しい。


と、言っていましたので、浮かんだ草先輩は"カルパー"を救いたかったのかもしれませんね。

特別な想いがあったのでしょうか?

やはり、浮かんだ草先輩のことは良く分からないのですよ。

一緒に働いているのに恥ずかしいものです。


それでは、長くなりましたが、今回の報告は以上とさせて頂きます。

私たち「シンデレ」は魔王様の大いなる火をより強くするために、日々活動をしています!

このたびの報告が魔王様のお役に立てればと願っております。




<追伸>


 魔王様が探している"ドルペトロス"について、もしかしたら手に入るかも

 しれないといった話を耳に入れました。

 浮かんだ草先輩と組合長が何やら話していたのですが、詳しい内容は良く

 分かっておりません。


 浮かんだ草先輩と組合長を捕まえて、色々と聞いてみたいと思います。

 大した情報でなくて申し訳ございませんが、一応先にお伝えさせて頂きます。


 また、何か分かりましたら報告いたしますね。



                                                                     埋もれた蛙

<補足>

・火吹き人

 路上で火を吹く芸をして、見物料をもらって生活している人。

 色んな街をまわって旅をしている。

 「ティルファ」は人通りが激しいので、良く火吹き人も

 見かけられる。


 この時期は獣狩りの影響により、色んな芸をする人が訪れる

 ようになっている。



・ミレイ婆ちゃん

 本名 ミレーイズム=アロフォン

 一般生活区で食堂を切り盛りしており、ミレイ婆ちゃんと

 親しみを持って呼ばれている。

 暖かな家庭料理がみんなに愛されている。


 基本的に客が持ち込んできた食材を使って料理をしており、

 料理は食材によって変わる。

 料理時間は結構かかるが、そんなのは気にしない人達が

 よく訪れる。


 もちろん、ミレイ婆ちゃんも食材を用意しているので、

 食材を持ち込まなくても、金銭で料理は食べられる。


 みんなで持ち込んだものを食べるので、日によって

 食べられるものが変わる。


 ちなみに昼から夕まで開いている。

 (時間帯は結構てきとう)

 夜は貸し出しており、宴などに良く使われている。

 その時にテーブルは良く痛む。


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