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1029年06月11日
軽やかにカラカラと鳴り響くエオロポダーの音が、街を出入りする人々を知らせてくれます。
この時期は街を離れていた職人や、商業都市を通る商隊などが出てきますので、この馴染み深い音がより多く奏でられているものなのです。
騒がしく感じるかもしれませんが、旅の無事を願うエオロポダーの鳴る音は不思議と優しい気持ちにさせてくれるのです。
込められた願いが鳴り響く音から伝わってくるのかもしれませんね。
商業都市「ティルファ」には様々な人々が街を訪れ、そして去っていきますので、エオロポダーを身に着ける人は多いものです。
エオロポダーの優しい音に包まれた街が商業都市「ティルファ」と言っても良いくらい馴染み深い音なのですよ。
ふふ、訪れたことのある魔王様にはいらない説明だったかもしれませんね。
魔王様が訪れた時もエオロポダーの音を良く耳にしたのではないでしょうか?
覚えてないようでしたら、是非とも「ティルファ」へ来てくださいませ!
そして、我らの「シンデレ」にも足を運んでいただけると大変嬉しく感じます!
さて、前回の報告からあまり時間が経っていませんが、お知らせしたい内容がありましたので、ご連絡させて頂きました。
あ、ジロナのカーチフについてのことだと思っていませんか?
そのことも是非ともお伝えしたいのですが、残念ながら別件のこととなります。
先にお伝えしたいことなのですが、アルメーネのことなのです。
先日、浴場で偶然アルメーネに出会ったのですが、その時にアルメーネが街へ出るという話を聞いたのですよ!
もともとは旅の資金集めをしていると聞いていたので、いずれは街を出ることは分かっていたのですが、急のことだったので驚いてしまったのです!
そうなのですよ魔王様!アルメーネが街を出るのは4日後頃と、本当に急なのですよ!
どうやら、2日後にやってくる「マレンナ商隊」に運び屋として参加するとのことなのです。
東側の地方へ向かいたかったようでして、やっと目的地を通る商隊が来たと喜んでいましたね。
旅の資金は実は必要な分は集まっていたようですが、さすがに一人で東側へと向かうのは辞めていたようですね。
それは当然のことでしょう!まだ獣がそんなに活発ではないとはいえ、危険ですし、女性の一人旅は何ごとも危ないですからね。
遠くの街まで安全に移動するとしたら、商隊に参加するのが一番良いですからね。
「マレンナ商隊」は「アマンズ商隊」や「メイズラン商隊」と比べると小さいところではありますが、実績もありますので、安心できるところとなるでしょう。
何よりも「マレンナ商隊」は創設者であるマレンナ=レペネーツが女性のせいか、商隊に参加する女性が多いとも聞きます。
マレンナは豪快な性格で頼りになるとも言われていますので、彼女を慕う人が多いと聞きますね。
そう考えますと、「マレンナ商隊」に参加するというのは、アルメーネとしては安全なのかもしれませんね。
恐らく、そこまで考えて選んでいるのでしょうけど。
しかし、「マレンナ商隊」は様々な鉱石を取り扱っているとも聞いていますので、積荷はきっと重量があるものばかりでしょう。
少し心配にもなりましたので、聞いてみましたところ、大した積荷はあまりないようなのです。
「マレンナ商隊」は東側の奥地に様々な鉱石がとれる場所があるようでして、そこを目指しているようなのです。
アルメーネは「ボルダジーグ」という街まで運び屋として参加するようです。
「ボルダジーグ」からさらに奥地へと進み、そこで鉱石を手に入れてから戻ってくるのが「マレンナ商隊」の経路みたいなのですよ。
アルメーネが言うには、「ボルダジーグ」までは「ティルファ」などで買い取った衣装や食料などを運ぶのが主であるので、まだまだ楽な方らしいのです。
仲良くなった運び屋や、運送組合から色んな情報を仕入れていたみたいでしたね。
ふふ、私も知らない内容でしたので、少し悔しかったりもしましたが、それよりもアルメーネが去ってしまう衝撃の方が大きかったのですよ。
こつこつと旅の支度を進めていたようなのですが、私だってアルメーネのために手伝いとかしたかったのですよ!
魔王様ならきっと分かってくださいますよね?
気が付いたらいなくなっていたかもしれない衝撃とか寂しさとかです。
もっと早く教えてくれても良いものなのに、探しいものなのですよ。
神樹祭の衣装とかも、アルメーネの分も選ぼうと思っていたのに残念なのですよ!
あ、そうですよ!アルメーネと一緒に神樹祭は行けないということになるのですね!
本当にとても寂しく感じてしまいます…
いけませんね、落ち込んでいる時間はありませんでしたね。
今のところは旅の支度はほとんど終えているようですので、私が手伝えそうなことはありません。
それなら、せめてささやかな宴を設けようと考えています。
急なことなので、せいぜい3、4人程度のものとなってしまいますが、こういったものは気持ちですから大丈夫なはずです。
幸いにも、良く利用しているお店が空いているようですので、そちらを使うことになります。
本当は私が料理を披露したいところですが、今回はアルメーネに是非口にしてもらいたいものがありますので、残念ながら別の機会でとなりそうです。
次の機会がいつになるのかは分かりませんけどね。
さて、私がアルメーネに口に入れてほしいものなのですが、魔王様は分かりますでしょうか?
魔王様の街にも恐らくあると思うのですが、ギョゲーフという料理となります。
ギョゲーフ自体は川魚をふんだんに使用したスープなので、そんなに難しい料理ではありません。
ただ、自分が獲った魚で料理したギョゲーフは送り出した相手の無事を願うものといわれていますからね。
アルメーネの旅はきっと危険なものと思いますので、是非口に入れて頂きたいものなのですよ。
運よく知り合いの漁師とも連絡がついたのも良かったものです。
たまに料理の店を開いたりもしている方なので、腕は確かですし、安心しても良いのですよ。
彼の料理は美味しく、お酒も色々揃えていますので、機会があれば是非とも味わってくださいませ。
あ、でも、彼の料理の前に、私の料理を味わってくださいね。
ふふ、お願いいたします。
さて、良い時間となってきましたので、報告もここまでとさせて頂きます。
明日は急なお願いをしたので、彼の店を手伝う必要があるのですよ。
売買組合で管理しているお店を共有して利用しているので、午後からなのですけどね。
それでも、片づけや準備が結構面倒なものなのですよ。
それでは、お休みなさいませ。
<追伸>
ジロナについて、少しだけ報告させて頂きますね。
あの後、話すことが出来まして、カーチフは受け取ってくれることになりました。
ただ、何故か私が刺繍をすることになってしまったのです。
ジロナよりも下手ということも伝えたのですが、何故か引きませんでしたね。
私がカーチフに夢中になっていた話をされると断れませんし、少し困ってもいるのですよ。
ジロナが気に入ってくれるのなら、良いのですが、最近は本当に指が痛いものです。
やるからにはちゃんとやりますからね、魔王様!
魔王様にはお見せ出来るか分かりませんが、ジロナの可愛らしさを惹きたてる
ものに仕上げてみせますので、楽しみにしてくださいませ!
埋もれた蛙
<補足>
・エオロポダー
旅の無事を願いながら作られるお守り。
乾燥した果実の種などに穴を空け、中に虫よけに利用されるハーブを
練り込む。
紐に種を複数個を通して完成。
種が重なる度にほのかに香る匂いが、身に着けたものに近づく危険を
遠ざけると信じられている。
首や、腕に身に着ける者が多い。
・アマンズ商隊
ラルグシラ川周辺を幅広く回っている商隊。
商業協会が融資している商隊であり、様々な街での影響力は大きい。
「ティルファ」との関わりは深く、職人の見聞を広げる行商も積極的に
実施してくれている。
・メイズラン商隊
ラルグシラ川周辺で幅をきかせている商隊。
メイズラン家が主に融資している商隊である。
・ギョゲーフ
様々な川魚をぶつ切りして、煮込んだスープ。
漁師などが良く好んで食べる料理。
贈り物という意味を持つ。
遠くへ旅に出る者に、活力を養うようにと景気良く川魚をぶち込んだ
スープを作ったことにより、旅の無事を願う料理として知られるように
なった。
自ら獲った魚を料理することに強い効果があると信じられており、
旅の前には漁師に料理をお願いする人も多くいる。
・売買組合
商業協会の管轄には入らない者達の集い。
複数の組合があり、それぞれで売買できるスペースを確保している。
商人などにスペースを渡したり、商品の売買を行っている。
ギョゲーフを求める声が大きかったのに目をつけ、漁師に店舗を
貸している組合も多々ある。
ただ、漁師の仕事が主なため、店舗は共有として、店を開く時以外
は普通に商品売買などに利用している。




