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1029年05月05日
影が薄く染まるころから「ティルファ」の雑踏は騒がしくなっており、足跡も見分けられないほどです。
まだ5月ですので、神樹祭の準備により訪れる人が多くいます。
準備に情報機関組合を利用する人が多いですので、私達「シンデレ」へも依頼がたくさんやってきているのです。
忙しくもありますが、大抵は怠け猫があくびする頃には落ち着いてきています。
あ、もちろん神樹祭以外の仕事もちゃんとこなしていますからね。
最近では"語り話の会"に参加もしましたし、色々と多忙だったりするのですよ。
子どもや黒犬が鼻を鳴らしながら集まってくるのは、微笑ましいのでこの仕事はそんなに苦ではありませんけどね。
あー、"語り話の会"について良く分かりませんよね。
簡単に言いますと、子ども達に本を読んで聞かせる場になります。
「ティルファ」にも少なからず子どもがいますので、学習や娯楽の機会を与えるものとなります。
これらは街としての取り組みとなりますので、誰でも参加が出来るものとなります。
一般生活区にちょっとした広場がありますので、そこで大体行っているものなのです。
いつも決まった人が行うわけではありませんので、協会や組合で持ち回りでやっているのです。
今回は私達「シンデレ」の順番となったので、参加した形になりますね。
ふふ、「シンデレ」は"語り話の会"では実は人気があったりするのです。
と言っても、広げない翼先輩や 浮かんだ草先輩の持ってくる話が面白いからなんですけどね。
広げない翼先輩は色んなところの民話などを聞くのが趣味みたいなところがありますので、話の内容が豊富なのです。
知らないところから来た商人とかからも良く話を聞いていますしね。
それに最近まで行商にも行っていましたので、知らない話がまた増えているのですよ!
私も広げない翼先輩の語りを聞くのは楽しみだったりするのです。
さらに広げない翼先輩は、自分が見聞きした民話をまとめて文として起こしてくれるのです。
その書いてくれた紙を括って本を作成してくれるのですよ。
広げない翼先輩は字も綺麗ですので、読みやすくて良いですよ。
本は街に寄付してくれますので、誰もが読めるのが凄いところですね。
許可が必要になりますが、請負勘定所に本を保管されていますので、興味があれば訪れてみてくださいませ。
広げない翼先輩の作成した本は他でも読めないものばかりではないかと私は思っているのです。
浮かんだ草先輩も同様に様々な話を知っているので人気があります。
いつも思うのですが、浮かんだ草先輩の行動が読めないので、どこで得た情報なのか分からないのです。
本当に不思議ですね。
ただ、広げない翼先輩は語りも上手くて、みんなが聞き惚れるほどなのですが、浮かんだ草先輩はそういうわけではありません。
浮かんだ草先輩はいつも単調に話していたり、少し説明不足というか説明する気がないところがあるのです。
もう!せっかくの話が勿体ないと思いませんか?
そのため、「シンデレ」では浮かんだ草先輩に話を根気よく聞いて、語りをする人と分けて対応しているのです。
今回は私の番だったわけなのです。
話を全部聞き取るのは結構大変なんですよ、最近は時間が合わないことも多いですしね。
「シンデレ」からは3名の参加者でしたが、実際は1人と1組といったところでしょうか。
"語り話の会"では2つの話を語り、その後は軽く学習みたいなことをやりましたね。
商業都市なので、文字の読み書きはなるべくできるようにするのが本来の目的みたいですしね。
基本的に"ギュフロ語"や"ラルグシラ語"を教える感じになりますね。
でも、商人や職人を目指す方は"シゲダエーム語"も覚える必要がありますので、この3つが主に教えるものになります。
この3つは「ティルファ」で暮らしている人であればほとんどの方が利用できますので、教える人にも困りませんね。
ただ、稀に"ベオクシー語"や"ボーダジン語"を教えてほしいと言ってくる人がいるのです。
しかし、"ベオクシー語"や"ボーダジン語"は東側で利用されている言語なので、あまり覚えている人がいないのです。
まぁ、大体は東側に用事が出来た人が言ってくるのですけどね。
そうなりますと教えられる人なんて限られています。
私も"ボーダジン語"なら多少は分かりますが、教えるほどではありませんね。
"ベオクシー語"は聞き取りにくい喋り方なので、覚える気もあまりおきません。
本当、行商に参加する時は東側以外が良いですね。
さて、そんな理解している人が少ない言語ですが、そこもやはり 広げない翼先輩や 浮かんだ草先輩は教えることが出来るのですよ!
本当に博識で尊敬しています。
浮かんだ草先輩なんて、"ラルグシラ語"が出来てから廃れてしまった言語まで覚えていたりするのだから、一体何者だー!って言いたくなります。
広げない翼先輩は趣味のせいなのか、多くの言語を覚えているのです。
東側の遺跡を調査するために"古代ボーダジン語"まで覚えているのですよ。
もう、凄すぎると思いませんか。
あ、魔王様?
大丈夫と思いますが、この2人が異常なので勘違いなさらないでくださいよ。
情報機関組合といえ、そこまでの言語を把握しているのはそんなにいませんからね。
いや、居ないかもしれませんので、お間違いのないように。
私がおかしいわけではありませんからね。
そんな"語り話の会"ですが、今回は少しいつもと違うところがあったのです。
参加者は語りを行う組合員と、語りを聞く子どもに大人の方となります。
情報収集のためや、ただ興味があるからと多くの人が聞きにくるものです。
そんな参加者にですね、実は怪しいと感じる人がいたのですよ!
魔王様は「ギョージ=ミスリート」を覚えていらっしゃいますでしょうか?
前に清掃組合の仕事を手伝った時に要注意人物として連絡させて頂いた者となります。
そう、今回は商人風を装っていましたが、「ギョージ=ミスリート」と思われる人物を見つけたのです。
あまり特徴のない風貌なのですが、何となくピピッと来たのです。
商人にしては振る舞いに無駄のない動きをしてたりと、違和感を感じる動作がありましたしね。
当然ながら、広げない翼先輩も彼には気づいているようでした。
ただ、あまり興味は持っていなかったみたいですけどね。
情報機関組合の者なら、何か理由があるのだろうとのことです。
私としてはその理由が「ティルファ」に、そして魔王様に危害を与えないかが心配なのですが。
それでですね、そんな話をこっそりと 浮かんだ草先輩にも話してみたのですが、そこでまたおかしな話を聞いたのです!
なんと、浮かんだ草先輩の知り合いだったのですよ。
ただし、商人「ジャックリ=シート」と言う名前でしたけどね。
前に見かけた時は商人という話は聞きませんでしたし、何よりも名前が違ったのですよ!
これは完全に偽名ですね。
何が目的なのかを探るために、語りや言語を教えながらですがそれとなく観察はしてみたのです。
誰か特定の人に話かけれていれば何か分かったかもしれませんが、誰とも話しかけていましたので良く分かりませんでしたね。
タイミングも悪く、直接話すことも出来ませんでしたし。
広げない翼先輩に今回の語りについて質問していましたが、これは良くあることなので、そんなにおかしくもありませんしね。
ただ、これで安心するつもりはありません!
正体を掴むためにも、ますます注意していく必要がありますね!
魔王様、ご期待くださいませ!
さて、長くなりましたが、今回の報告は以上とさせて頂きます。
また定期的に連絡させて頂きますので、お待ちください!
<追伸>
冒頭の文章についての説明を入れ忘れていたことに気づきましたので、追記させて頂きます。
一見普通の文章ですが、実は「シンデレ」の隠語を入り混ぜたものとなっています。
念のために説明させて頂きますね。
"影が薄く染まるころ"は分かるかもしれませんが、早朝という意味となります。
"影が薄く染まり、黒く塗りつぶされるまで"というと、朝から夜までという意味になったりするのです。
次に、"足跡も見分けられない"ですが、足跡は怪しい人の動きを表しています。
"新しい足跡も見つける"などと書いていた場合は、外から人がやってきたという意味なのです。
"見分けられない"というものは、外からではなく内側に怪しい人がいるということなります。
あとは、"黒犬が鼻を鳴らして"も怪しい人物を意味しています。
黒犬は注意するべき者、白犬は協力者と言った感じで使い分けているのですよ。
実は冒頭で既に怪しい人物が「ティルファ」におり、そして出会っていたことを書いていたのです!
ふふ、少しびっくりしてしまいましたか?
なーんてね、魔王様に是非「シンデレ」の隠語を覚えて頂きたくて書かせて頂いたのです。
本当ですからね。
少し堅苦しい説明だったかもしれまんが、是非覚えてくださいませ!
埋もれた蛙
<補足:言語について>
・ギュフロ語
神樹信仰者が作りだしたと言われる言語、比較的分かりやすい
神樹信仰者に広まっているため、一般的に使われている言語。
・シゲダエーム語
自らを太陽の民と信じている民族が利用している言語。
少数民族だが、彼らは手先が器用であり、質の良いものを制作している。
品物を注文するために彼らの言語を覚えたため、広まった言語。
商人や職人が多用する言語。
・ベオクシー語
東側の民が利用する言語。
少し発音が難しく、聞き取りにくい。
・ラルグシラ語
ラルグシラ川周辺に住んでいた民族の言語を統一させたもの。
ギュフロ語が出来るまでは主に利用されていた言語。
まだまだ利用者は多い。
・ボーダジン語
東側で多くの領土を支配していた国で利用されていた言語。
ボーダジン国滅亡後も東側では影響が多く、利用している地域は多い。
・古代ボーダジン語
ボーダジン国が発展する前に利用されていた言語。
多くの遺跡で見かけることがある。




