12
1029年04月25日
目的を達成した時の晴れ晴れな表情はいつ見ても良いものですね。
それだけで私の心にも何かを得たような気持ちになります。
魔王様、本日のことです。
トーチャクをモチーフにした首飾りが完成したのです!
やっと、やっとのことでした。
しかしながら、時間がかかっただけあって、とても良い仕上がりになりましたよ!
トーチャクのあの淡い緑色や、控えめに映る花びらを見事に表現したものをしっかりと作り上げているのです。
すぐに壊れてしまいそうな儚さが、身に着けた人を優しめな印象を映し出してくれるのです。
なかなか納得してくれなかったお嬢様も、この出来栄えには感嘆の声をあげていましたとも。
あの時に浮かびあげた職人の喜びを見て頂きたかったほどです。
思わず突き立てた腕に、薄ら汚れた顔や汗が気にならないほどの満面の笑み。
ああいった場を立ち会いますと、一緒に嬉しくなってしまいますね。
思わず私も声をあげてしまいましたよ。
ええ、ほんの少しだけですけどね。
しかし、思ったよりも本当に時間がかかってしまったものです。
これだけのこだわりがあるのなら、初めに言ってほしかったですね。
次回からは是非気を付けてほしいものです。
ああ、ちゃんとお嬢様には言ってやりましたよ。
それが、情報機関組合に依頼を出す時のマナーとなることでしょうからね。
でも、時間がかかった原因は職人にもあるのですけどね。
私が紹介した職人は指輪などに装飾を施す細工職人でして、なかなか綺麗なものを作る方だったのです。
確か前に指輪に花の模様を刻んだものを制作していたのを思い出したので、彼を紹介したのです。
運が良いことに彼は街にいましたし、手も空いていたのですよ。
丁度新しいものを考えていたとかで、凄く乗り気でしたね。
しかし、乗り気過ぎたのが悪かったのかもしれませんね。
と言っても、最終的には街の商品としても良い出来栄えになりましたので、良かったのでしょうが。
ああ、あまりにも良い出来だったので、「ティルファ」の新商品として扱うようです。
彼が商業協会や売買組合に話を持っていってましたね。
あのトーチャクの首飾りはしばらくすれば、「ティルファ」の人気商品へとなっていることでしょう。
ただ、制作に時間がかかりそうなのが気になりますが、そういうものなんでしょう。
どうもお嬢様の街で流行っていたものは、トーチャクをモチーフにしているだけであって、トーチャクを完全に表現したものではなかったようなのです。
淡い緑色に花の模様程度が施していれば首飾りとしては十分だったようです。
しかし、話を聞いた職人はトーチャクを完全に模倣するものと勘違いをしてしまったようなのです。
それからの試作品の出来栄えを見れば、凄いものを作ろうとしていることがお嬢様も分かってきたのでしょう。
興奮してきたのか、あれこれと注文を入れてくるのです。
何やらその色合いは違うとか、花びらの控えめさが表現出来ていないなどです。
魔王様はどう思いますでしょうか?
こだわり過ぎではないと思いませんか?
それもそこまでのものは初めは求めてなかったようなのにですよ。
淡い緑色に花模様が入っていれば良かっただけなのにです。
花言葉というものを知っていたりと、お嬢様は実はトーチャクにこだわりがあったのかもしれませんね。
そして、そんなお嬢様のわがままにも聞こえる注文を職人は聞き入れて、制作を続けていくのです。
職人は大変な仕事なのですね!
いえ、分かってはいたのですが、改めて分かったような気がします。
まったく、組合長や 絡まない蔦 もあの姿を見習えと言いたくもなりますね。
そんなこだわり抜いた職人とお嬢様の作品が、素晴らしきトーチャクの首飾りなのです!
これほどのものは誰も身に着けていない、私が一番になるわね。
と言いながら身に着けたお嬢様は嬉しそうでしたね。
上機嫌なまま、お嬢様の街へと帰っていきましたよ。
ええ、無事に依頼を達成することが出来たのですよ魔王様!
凄いことでしょう?
しかも、「ティルファ」の新商品まで作り上げることが出来まして!
ふふ、素晴らしい手腕だったことでしょう!
魔王様、しっかりと覚えていてくださいませ!
これが、あなた様の配下である「埋もれた蛙」の実力というものなのです!
ふふ、早くこのことを伝えたくて報告書を早く仕上げたのです!
もう外は暗く、蝋燭の火が揺らめく姿は少し幻想的であり、怖くも感じます。
まだまだ、お嬢様とアルメーネと公衆浴場へ行ったことなど伝えたいことがありますが、
少し疲れてきましたので、本日はここまでとさせて頂きます。
なるべく早めにまた報告させて頂きますね。
魔王様、良い夢を見てくださいませ!
<追伸>
そういえばなのですが、職人へ依頼を出した時なのですが、トーチャクの花も
添えてからお願いをしたのです。
お嬢様の依頼内容が良く分からなかった時のことです。
偶然ですが、花売りがトーチャクの花を持ってきまして、その花にお嬢様が反応
してくれたことが依頼内容について予測するヒントとなったのです。
その時にお礼も込めてトーチャクの花を買ったのですが、正直持て余していまし
て。
あまり花を飾ることも私はしませんし、お嬢様に渡すのもどうかと思いました
ので、参考にと職人へと渡したのです。
もしかして、この花の通りに作れと勘違いしたということはありませんよね?
そんなことは言わなかったので大丈夫だったと思うのですが、何となく気に
なってしまいました。
あとですね、職人から私もトーチャクの首飾りを頂いたのですよ魔王様。
出来栄えは少し良くなかった奴らしいのです。
少し花が開きすぎており、花びらのギザギザが少し鋭すぎると言っていたのです
が、私には良く分かりませんね。
しかし、こういった装飾品は持っていなかったので嬉しく思います。
普段は身に着ける機会はないと思いますが、何か行事でもあった時にでもつけて
みたいと思います。
その時は、魔王様にも教えて差し上げますね!
だけど、職人が私に首飾りを渡してくれた時ですが、お礼にということでした。
なんのことでしょうか?
お礼を言うべきは私の方だったと思いますが、不思議なことですよね。
埋もれた蛙




