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淡い緑色が映えるトーチャクは控えめに佇むうら若き女性のようで、大人しい印象を与えてきます。

大きくは咲き開かない花びらがより控えめに映り、清楚に感じるほどです。

そんな大人しい印象のトーチャクですが、花びらは少しギザギザとしていて、そのアンバランスさがまた魅力の一つなのです。

今の季節はトーチャクで目を楽しませるのも良いかもしれませんね。


しかし、ただ、目で楽しませるだけではないのですよ魔王様!

トーチャクの控えめな美しさは、今多くの女性で人気があるのです!

そう、トーチャクをモチーフにした首飾りが流行っているのです!

控えめて、落ち着いていて、そして清楚!

そんな印象を与える首飾りが、今若き女性の中で流行っているんですって!

魔王様も気になる方がいればどうでしょうか?


っと、少しお洒落な言葉を綴ってしまいましたね。

魔王様、お久しぶりです。

あなたの調査員「埋もれた蛙」です。


少し前の依頼で耳よりな情報を手に入れましたので、是非とも伝えたくて報告させて頂きます。

そうなのです。このトーチャクの首飾りは最近訪れた依頼人から得た情報だったりするのです!



その依頼は確か2日前のお昼頃に少し休憩にと組合に戻った時のことでした。

丁度その時に依頼人が組合に訪れているようでして、組合長が応対をしていました。

個室で話しているようでしたので、詳しい話は分からなかったのですが、その間に資料の整理などをしていました。

そう、私はただ休憩のためだけに組合に戻っていたわけではないのです。

その日は請負勘定所に情報を提出する日でしたので、そのための申請書を作成していたのです。

あ、別に情報は口頭でも良いのですが、少しまとめたくなったのでわざわざ申請書を作りました。


そんなちゃんと仕事している私の他には、ぼんやりとしている 絡まない蔦 がいたくらいでしたね。

大体は 浮かんだ草先輩 が組合にいるのですが、その時は見当たりませんでした。

どこか行ってたのでしょう。

同じく、広げない翼先輩 もいませんでしたね。

広げない翼先輩は交流会に行ってましたので、戻ってこないことは分かっていましたけどね。


そうだ魔王様は情報機関組合の交流会についてご存知でしょうか?

もしかしたら、知っているかもしれませんので、軽く説明させて頂きます。


情報機関組合では定期的に、各組合同士で情報交換という名目で交流会を開いています。

用いられる情報は基本的に当たりさわりのないものですが、情報共有することが目的なのです。

大きな問題や、広く伝わらなくてはならない情報をここで流す形になります。

基本的には周知されているのですが、万が一ということもありますので。

その考えを統一させるのが重要なようです。


あとは、関わっている仕事の重なりをなくすようにするとか、話せる程度の技術的なことでしょうか。

基本的には交流会は組合から一人から二人の代表者を選出して行います。

私達「シンデレ」は大体は、組合長と 広げない翼先輩が主に参加していますね。

私と絡まない蔦はあまり参加してませんね。


魔王様?もしかしてと思いますが、頼りないからだとか思いませんでしたよね?

大丈夫だと思いましたが、ふと頭を過ぎりましたので。

あ、いや、自分に自信がないとかはありませんからね!

本当ですからね!


と、そういうわけで 広げない翼先輩は交流会に行っていたのです。

少しそれましたので、話を戻しますね。



資料作成などで時間が過ぎていきますと、話が終わったみたいで、組合長と依頼人が個室から出てきました。

依頼人は凄く派手なわけではないのですが、上等だと分かるドレスを着飾ったお嬢様のようでした。

ええ、貴族かどうかも聞いてませんが、きっとお嬢様でしょう。

多くの装飾品などを身に着けているわけではありませんが、その纏う空気みたいなのがそう感じたのです。


それで組合長から聞いたのですが、そのお嬢様の依頼は美しい首飾りを手に入れたいというものでした。

細かいこだわりなどがあると面倒な依頼ですが、今回は特にこだわりはないようでした。

職人へ特注で依頼するものでもないようでしたので、比較的に簡単な依頼と言えるでしょう。

なぜなら、「商業協会」で提供している店舗をまわれば良いだけなのですから。


神樹祭のために多くの職人が出払っていますが、装飾品類は予めある程度は納品されているのです。

まだまだ余裕があるはずですので、店舗を見てまわるだけで十分に気に入ったものを見つけることが出来るでしょう。

何らかの大きなこだわりがあるとなかなか納得をしてくれないため、最終的には

職人を紹介することになるのですが、今回は大丈夫だろうと思いました。

この時期に職人を紹介するのは結構大変ですしね。


お嬢様は「ティルファ」は初めてのようでして、街には不慣れのようでした。

さすがにお店に案内するだけを仕事とするのもどうかという話となり、街案内も含めた依頼となりました。

この依頼は暇そうにしていた 絡まない蔦 が受けることになりましたね。

依頼人はお嬢様でしたので、正直、絡まない蔦 には任せたくはありませんでしたが、

残念ながら他にはいませんでしたので。

仕方なく 絡まない蔦 がお嬢様の街案内へ出かけていったのです。


私もですね、資料がまとまってきたので請負勘定所に行こうとしていたのですよ。

そうしようと思っていたのにですよ、魔王様!

組合長が私の資料を勝手に目を通しまして、一々指摘をしてきたのですよ!

もう予想外ですよ!予定も崩れて修正に手間をかけてしまいました…

いつの間にか、前に提出した資料の手直しまでさせられましたよ。

だから、あまり戻りたくないのですよ。


ああ、申し訳ございません。

変に愚痴を言ってしまいまして、聞き流してくれれば幸いでございます。

でも、きっと魔王様なら、こんなささやかな愚痴など受け流してくれると信じています!



えーと、それでですね、時間はかかってしまいましたが、予定通りに請負勘定所へ

情報は持っていくことは出来ました。

最近は「ティルファ」へ訪れる人が多くなりましたので、売買組合や商人などのお手伝いをする依頼が多くなってきましたね。

いつもこの時期は荷降ろしの手伝いなどのお手伝いが必要となるものです。

人手不足となりますので、請負勘定所の利用者は大いに稼ぐチャンスになりますね。


それでですね、魔王様!

無事に仕事を終えて、少し休憩でもしようかと中央区の広場へ向かった時のことです。

その日の広場は、「商業協会」の許可がとれた露店がいくつか開いていましたので、

少し見てまわろうかなと思ったわけです。

そんな広場にですね、あの依頼人のお嬢様がいたのですよ。

街案内も含めていますので、お嬢様が広場にいることは別に悪くはありません。

しかしですよ魔王様!目を瞑ることも出来ない問題点が一つあったのです!

なんと、お嬢様と一緒に広場をまわっている相手が 絡まない蔦 ではなかったのですよ!

これは問題だと思いませんか!


いえ、私もただ 絡まない蔦 を意味もなく責めたりはしません。

もしも一緒にいる相手がお嬢様の友人や従者のかたであれば、特に問題もありません。

依頼も終えることが出来て、観光でもしているのかなと思うところです。

だけど、違ったのですよ。

お嬢様と一緒にいる方には見覚えがある方でして、そう、私達と同じく情報機関組合のものだったのです。

それだけでも問題なのに、見ているとどうも装飾品を扱う露店を見てまわっているのです。

どうみても、依頼を終えたとは思えません。

奪われたのか、投げ出したのか知りませんが、やっていることは最悪だったわけなのですよ!



もう!魔王様の顔に泥を塗るつもりか!!って 絡まない蔦 に怒りを覚えましたね!



居てもたってもいられなくなりまして、お嬢様達のところまで向かいましたよ!

するとですね、思っていた反応ではなかったのです。

名前は忘れましたが、相手の情報機関組合と思われる方から勝ち誇った笑みでも浮かばれると思ったのですが、そんなことなかったのです。

私に気づくと素早く、後は任せた と一言を残して去っていったのです。

正直、意味が分かりませんでした。

ただ、あの足運びはやはり情報機関組合のものみたいでしたね。


でも、いきなり任されてもどうしたらよいか分かりませんよね?

私は困惑していたのですが、あのお嬢様は全く動じずに話しかけてくるのですよ。



美しい首飾りはどこにあるのって



笑いもせずに話しかける姿は少し恐ろしく感じました。

もしかしたら、長いこと店舗をまわり、怒りも感じてきていたのかもしれませんね。

ただ、目の前に並んだ綺麗に装飾された品を見ながら言うのはやめて欲しかったですね。

露店の店主も辛うじて苦笑いをしていました。


運が悪いことにその店主は装飾品に細工を施すことも得意であり、商品を並べる時に自分の作品もこっそりと入れる方だったのです。

なかなかの腕でして、彼の作品も評価は高いものだったりするのですよ。

そんな自慢の商品を眺めながら、美しいものがないみたいな発言は…恐ろしいと思いませんか!

もう、私は彼に謝ってから、急いでお嬢様を連れて露店から離れたのです。


少しずつ話をしてみますと、まわった店舗にあのような態度をとっているようでした。

ある程度は予測ですが、恐らく当たりだと思います。

魔王様、貴族って怖い方なのですね。

商人や職人を敵にまわすような発言は私には信じられないのです。

こういうものなのでしょうか?



もうほとんどの店をまわっているようでしたので、私は頑張ってお嬢様が求めているものを聞いてみたのです!

それはそれは、時間がかかりましたよ魔王様。

このお嬢様、なかなか上手く言葉を伝えることが出来ない方のようでして、言いたいことが良く分からなかったのです。

なぜだか分かりませんが、良く分からない詩?みたいものを何度も言ったりと会話にならないのです。

組合長や、絡まない蔦 はこれに挫折して逃げたに違いありません。


しかし、私は違いましたよ魔王様!

運も良かったのですが、お嬢様が求めていたものが分かったのですよ。

そう、求めていたのは、淡い緑色が映えるトーチャクのような首飾りだったのです!

偶然にも花売りが私達の近くへと来て、トーチャクを売っていたおかげです。

意味不明な詩は、トーチャクの花言葉というものを言っていたようでした。

さすが貴族です。良く分からないことを知っています。


さらに聞いてみると、お嬢様の暮らしている街ではトーチャクをモチーフにした

首飾りが流行っているようなのです。

あまりにも人気があるため、お嬢様は手に入れることが出来ないくらいなようです。

そこで、どうしても手に入れたくて「ティルファ」に訪れたそうです。

ちゃんと説明してくれれば、それなりの行動が出来たと思います。


気が付けば日が傾いているほど時間が経っていましたので、その日はお嬢様を宿まで案内し、後日職人を紹介することにしました。

仕方ないので、お嬢様の依頼は私が引き継ぐこととなったのです。



本当に疲れましたよ魔王様。



そして、現在もお嬢様は街へ滞在をしています。

職人は何とか紹介出来たのですが、なかなか納得いくものを仕上げるのに時間がかかるようです。

お嬢様の注文を私も聞きましたが、仕上がれば確かに人気が出そうに思います。

職人も結構乗り気でして、気合をもって制作してくれています。

あまり出回っていない商品みたいなので、少し工夫すれば目玉商品になるかもしれませんね。

とりあえずは時間がかかるのですが、しばらくはお嬢様も滞在する余裕もあるようなので、気長に待つようです。


それは良いのですが、その間のお世話をなぜかしないといけないのですよ。

これは調査員の仕事ではないと思うのですが、魔王様はどう思いますでしょうか。



一刻も早くの首飾り完成を待っているのです。




<追伸>


 組合長や 絡まない蔦 に怒りをぶつけようとしたのですが、なかなかタイミング

 が合わないようです。

 早く捕まえて、この想いを存分にぶつけたいものです。


 今回の依頼により、せっかくのアルメーネとの約束が流れてしまいました。

 楽しみにしているものほど、機会が得られないものなのでしょうか。



                                                                     埋もれた蛙


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