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親愛なる魔王様へ
1029年02月21日
突然のお手紙失礼いたします。
私、商業都市「ティルファ」で活動している「シンデレ」という情報機関組合で働いている者です。
このたび、どうしてもお礼を申し上げたくてこのようなお手紙を書かせてもらいました。
あなた様が「シンデレ」に多大な援助金を贈って頂いたと聞いています。
おかげ様で何とかなりそうだと組合長も申しておりました。
あなた様のために組合員一同協力させて頂きます。
さて、ここまでが我ら「シンデレ」一同総意の気持ちとなります。
しかし、私は分かっていますよ。
あなた様がただ潰れかけの情報機関に援助したわけではないことを。
あなた様は「ティルファ」を発展させるためと、数々の組合を支援して頂いていますよね。
みんなはそのままの意味を受け取っていますが、私は違います。
きっとあなた様は、世界を大きく作り変えようとしているのではないでしょうか?
そのための人材を確保するために、今回様々な組合を援助してくださったのでしょう。
そうに違いありません、私にはそう自信が持てるのです。
実はあなた様と思われる方を私は見てしまったのです。
怠け猫があくびをする頃に組合の事務所に訪れましたね。
あの威圧感のある後ろ姿を見て、私は只者ではないと感じました。
そう、まるで魔王のようだと直感的に思いました。
あ、今更ですがお手紙の題名に利用させて頂いた魔王はあなた様のことです。
魔王のようなオーラを感じましたので、そう呼ばせて頂きますのでご了承願います。
そうなのです。魔王たるあなた様がただの慈善で組合に援助するわけがございません。
私は真剣に魔王様の狙いを考えた時、この世界を支配するための人材確保に思い立ったのです。
でも、安心してください。
私は魔王様の力に心よりなりたいと考えています。
魔王様がしかるべき時までこの考えを隠すのであれば、喜んで従いましょう。
そうですね、まずは魔王様に役立つ情報をいち早く伝えられるようにいたします。
勝手ながら、情報機関組合「シンデレ」の 埋もれた蛙 が調査と報告を定期的にさせて頂きます。
あと、"埋もれた蛙"は私のコードネームです。
ぜひぜひ、覚えてくださいませ。
では、これからよろしくお願いしますね魔王様。
<追伸>
読み返してみたら、分かりにく表現がありましたね。
"怠け猫があくびをする時"は夕方頃という意味です。
私達の組合で良く利用する隠語です。
ぐうたらな怠け猫でも夕方頃にはあくびをするという意味ですよ。
ぜひ、覚えてくださいませ。
埋もれた蛙