レイニーメモリー
雨が降りだした。
消したはずの記憶が滲み出す。
ぽつりぽつり雨が降る。
閉ざした扉から漏れ出す。
雨に滲む記憶たち。
滲んでぼやけて流れいく。
もう忘れたいの。
こんなに切なくなるのは雨のせい。
ぽつりぽつりと降る涙のせい。
雨雲に覆われた空の表情は悲しい顔。
それは私の今の顔と同じ。
ふと振り向けばあなたがいる。
困った顔をして笑うあなたの顔は雨に霞んで消えていく。
それは雨の雫に映し出されたあの時の思い出。
忘れたい。
忘れたいの。
でも本当は忘れたくないの。
記憶の中のあなたの温もりは雨に冷えて消えていく。
残ったのは切なさだけ。
雨よどうかお願い。
あの人を愛した日々を雨で流し去って。
そうしていつしか雨は降り止んで。
空には虹の橋がかかる。
晴れやかな空。
私の心には物憂げな雨が振り続ける。
私はどうしてこんなに切ないの?
どうしてかわからないけれど。
私の頬にぽたりと雫が落ちた。
そう、切ないのはきっと雨のせい。
さようなら。
私の愛したあなたとの思い出。