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第三十三話 仕様説明(プレゼンテーション)

魔法評議会、中央査問室。

 高くそびえる円形の傍聴席には、国の魔法政策を司る重鎮たちが居並び、中央の石畳の上に立つ十一歳の少女――マナ・ナツイを、冷ややかな視線で見下ろしていた。


その中央、最も高い位置に座っているのは、先日隠れ家からデバイスを強引に持ち去った調査官、ゼノス・グレアムだ。彼の前には、あの煤けた『ロジック・グリモワール・Mk-II』が置かれている。


「……マナ・ナツイ。君をここに呼んだのは、君が提出――正確には私が押収したこの物品の『危険性』を判定するためだ」

 ゼノスの声が、ドーム状の室内に反響する。

「評議会の鑑定官たちが三日三晩、総力を挙げて解析したが、結論は一つ。……この箱からは、一切の魔力反応が検出されなかった。にもかかわらず、君たちはこれを用いて、エドワード・ブランシュの高等魔法を霧散させた。これは一体、どのような『呪い』だ?」


傍聴席の老人たちが、ざわめき始める。「呪い」「異端」「禁忌」……彼らの語彙には、理屈で説明できない現象を排除するための言葉しか並んでいない。


マナは、ふぅ、と小さく溜息をついた。

 前世で、ITの「あ」の字も知らない役員たちに、最新システムの導入メリットを説明した時の既視感がすごい。


「ゼノスさん。まずはその『呪い』という非科学的なタグ付けを、今すぐデリート(消去)していただけますか?」

 マナが凛とした声で言い放つと、会場は水を打ったように静まり返った。


「その箱が魔力に反応しないのは当然です。それは魔法の道具ではなく、魔法を『物理現象』として制御するためのインターフェース――つまり、ただのスイッチですから」


「物理現象……? 戯言を。魔法はイメージと魂のの発露だ。木片や石ころで制御できるはずがなかろう!」

 一人の老魔導師が身を乗り出して怒鳴る。


「では、質問です。先生」

 マナは、傍聴席を見上げ、挑発的に微笑んだ。

「魔法で火を出すとき、あなた方は『火が出る』と強く念じますよね? でも、その火が燃え続けるために、周囲の空気をどれだけ消費し、どの程度の熱膨張を引き起こすか……その『計算』をしたことがありますか?」


「計……算だと?」


「そうです。世界は一定のルール――『物理法則』というソースコードで動いています。私がやったのは、エドワードさんの術式が作り出した熱源の『座標』と『干渉周期』を特定し、物理的に打ち消すための最短経路パスをボタン一つに割り当てただけ。……つまり、あなた方が『奇跡』と呼んでいる現象に、私は『ショートカットキー』を作ったんです」


マナはゼノスに向き直り、言い放った。


「解析できなかったのは、あなた方のコンパイラが古すぎるからです。魔力計で測れるものだけが世界のすべてだと思っているなら……その『認識のバグ』こそが、この国の魔法技術を停滞させている原因ですよ」


静寂。

 ゼノスは眼鏡のブリッジを押し上げ、初めて、マナという少女を「管理すべき対象」ではなく「未知の知性を持つ対等な個体」として認識した。


「……面白い。では、マナ・ナツイ。君のその『物理法則』とやらが、我々の魔法よりも優れているというのなら……ここで実演デモンストレーションをしてもらおうか」


ゼノスが指を鳴らすと、査問室の床から巨大な魔導人形ゴーレムが姿を現した。


「この自動人形の防御結界を、その『理屈』だけで突破してみせろ。できなければ……君の理論は、ただの妄想として破棄される」


マナは、背後に控えていたカイトとレンを見た。二人は震えていたが、マナが頷くと、自分たちが作り上げた『Mk-III(リミッター改良型)』を差し出した。


「いいわ。システムの有効性を、目の前で証明してあげる」


十一歳のエンジニアによる、世界で最も不遜な「製品発表会」が幕を開けた。

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