1曲だけの舞踊会~天使だと思っていた義弟は腹黒策士でした~
久しぶりの投稿です。よろしくお願いします。
「レディ、僕とダンスを……ヒッ!いっ、いや歓談中失礼しました!!」
「えっ!? お、お待ちください!」
またいつものパターンだわ。
わたくし、キャサリン・ウォーカー、花も恥じらう17歳。16歳で社交界にデビューして三度目の舞踊会だというのに一度もダンスに誘われませんの。
わたくしが住む王国は、ほとんどの貴族子女が幼いころから婚約者が決まっていますの。わたくしも数年前までは4つ年上の子爵令息の婚約者がおりましたのよ。なのに14歳で突然の婚約解消、まだ愛も恋もわからない幼いわたくしでしたが、穏やかな関係を築けていたと思っていましたのに。
学園卒業後18歳で結婚するのが一般的なこの国で、17歳にもなって婚約者がいないのは行き遅れ確定ですわ!
我が家は中堅の伯爵家、綿花の栽培で領地も潤っていますのに婚約の打診もないのはなぜなのかしら……。
卒業まであと半年、お父様もお母様も微笑んで「心配ないよ」とおっしゃるだけで焦っているのはわたくしだけ。
「キャシー、せっかくだから1曲踊ろう」
これもいつものパターンだわ。
落ち込むわたくしを見かねて、義弟のデイビッドからダンスのお誘い。
「デイヴ、わたくしは大丈夫よ。あちらにたくさんのレディがあなたからの誘いを待っているわ」
2歳下の義弟のデイビッドはお父様の従兄で乳兄弟でもあったおじさまの息子で幼馴染でしたの。父を馬車の事故で亡くしたデイビットを我が家に迎えて本当の姉弟のように過ごしてきましたわ。
ぷくぷくほっぺで天使のようだったデイビットも16歳、すらっとした体躯にサラサラの銀の髪にタンザナイトのような神秘的な瞳、学園でもトップの成績、舞踊会でも常に注目の的ですわ。
「僕が踊りたいのはキャシーだけだよ」
デイビットと一曲だけ踊る舞踊会。
わたくしの腰に手を回しホール中央にいざなうデイビットにちょっとだけドキドキしてしまうのはなぜかしら。
この時のわたくしはまだ、半年後の卒業を祝う舞踊会でまさかバラの花束を抱えた義弟から公開プロポーズされるなんては知る由もなかったわ。
そして元婚約者の浮気を暴き出し秘密裏に婚約解消を進めたのも、婚約打診の話が私の耳に入るのを妨げていたのもデイビットだったなんて......。




