102. ある日の号外
衝撃告発「恐ろしい一夜でした」御者が語るR家の陰謀
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「私の知っていることをすべてお伝えします」
ある貴族の別荘で御者として働く男は、震えながら記者に語った。
王都から遠く離れたある貴族の別荘。周辺は森で囲まれ決して栄えているとは言えないその土地でひときわ目立つ屋敷である。男は現在、その屋敷の御者として働いている。
男がこの別荘で働き始めたのは六年前からだと言う。屋敷の前で倒れていたところを拾ってもらったそうだ。
男は当時、男を雇い入れると決めた家令に記憶喪失だと嘘をついていた。
「仕方がなかったのです。私は恐ろしい真実を知ってしまったのですから。この真実が世に出てしまえば、王国全体を揺るがしかねません」
男は頬を掻きながら言った。男の顔には乾いた泥が付いていて、体も痩せていて見窄らしい。決して王国を揺るがすような情報を持っているようには思えないこの男が、どうしてそのような情報を得たのだろうか。
男はかつて下流貴族H家の御者を務めていたと言う。男の趣味は休みの日、街に出て酒を飲むことだ。
「あの日、私はいつも通り行きつけの酒場で飲んでいました。そこであの男——Xに出会ったのです」
Xは辺鄙な土地には似合わない身なりの整った美丈夫だったと言う。
男はXと酒を飲み交わす仲になる。
その日も男はXと飲んでいた。酒が進み、男は厠へ向かおうとした。途中、男は足がふらつきXにぶつかってしまう。その時にXの懐から銀貨がこぼれ落ち、男のポケットへ入ってしまったのだ。
Xは男に、自分はある貴族の元で働いていると言い、その貴族に今日のことを言えば男の命はないと脅した。平謝りする男にXは盗みを見逃すための交換条件を告げる。
「それが、——当時私の働いていたH家夫妻の暗殺計画への加担でした」
男の声は震えていた。
「H家夫妻の旅行中にある地点を通るように言われたのです」
なぜ従った?
「Xの脅しは恐ろしく、逆らえる状況ではありませんでした」
そうして男は約束通り、H家夫妻をXの言う地点へ連れて行ったと言う。
「約束の地点に差し掛かったその時、馬に矢が放たれました。馬車は転倒し、夫妻は……」
男は涙を流し、言葉を続けることができなかった。
男が落ち着いた頃、記者は当時の男の状況を尋ねた。
「私は矢が刺さり暴れる馬を落ち着かせようと馬の背に飛び乗りました。運が良かったのでしょう。馬は暴れながらその場を離れたので、X含む追手から逃げられることができたのです」
そうして男は現在働いている屋敷に拾われ、記憶喪失の振りをしたまま過ごしていたのだという。
どうしてすぐに世間にこのことを伝えなかったのだろうか。
「私のような立場の者が言うことなど誰も信じないでしょう」
ではなぜ、今になって公表することに?
「偶然H家のご令嬢と再会したのです。ご令嬢からその後の状況を聞き、公表しなければならないと思いました」
男はそこまで語ると、懐から三枚の紙を取り出した。
「私は以前辻馬車をしていた関係で、人の顔を覚えることが得意でした。これは、私の記憶を元に描かれたXの似顔絵です」
似顔絵に描かれているサインはどれも信頼できる画家のものだ。法律家立会いのもと作成されたという証拠のサインもしてある。
男はさらになにかを取り出した。
「そうしてこれが——Xが私に銀貨泥棒の罪を被せた時に偶然一緒に落ちてしまったカフスボタンです」
記者はそのカフスボタンを見た瞬間、男が言っていた王国全体を揺るがしかねないという意味を瞬時に理解した。そのカフスボタンには、王国の上流貴族であるR家の家紋が掘られていたのだ。
では、なぜR家がH家のような下流貴族の暗殺を企んだのだろう。
その背景には、想像もできないある悍ましい陰謀が渦巻いていた——
——次回、R家の陰謀とは!? H家夫妻の暗殺に留まらぬ数々の事件を証拠品とともに一斉公開!




