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駆け巡る走馬灯14

「・・・・・はは・・・・」

 

本当に、俺という人間はどこまで愚かなのだろう。

独りよがりの思い込みで、大事な女の子をずっと苦しめて・・・。

一心に愛してくれた父と母の死に目にも間に合わず・・・。

兄妹のためといいながらも、和平の邪魔ばかりをして・・・。

結果、俺を殺そうと暗躍しつづける馬鹿共を、助け喜ばせただけ・・・。


俺はずっとずっと、間違い続けた・・・。

あんなに考えて。

その都度最善を選んで来たはずなのに。

なのに何一つとして正しい答えを導き出せない。


なにがユフィを助けたい、だ・・。


ユフィは今も井戸から水を汲み上げ、あちこちの家を尋ね歩いている。

ユフィは自らの意思でここに来た。

誰かに強要されたわけでも、嫌々来ているわけでもない。

自らの意思でこの村を訪れ、一人でも村人を助けようと必死になってる。


それを俺は・・・・。


何を傲慢にもそんな彼女を助けられると思ったのか・・・。

おこがましいにも程がある・・・。

ユフィ・・・。

困ったときには力になると・・・。

助けると約束したのに、こんな俺ではなんの力にもなれない・・。


・・・・・俺には何もない。


正しく物事を判断する力も、誰かを助けられる力も・・・。

あるのは、人をねじ伏せる暴力的なこの力だけ・・・。


・・・・・ああ・・・だからか・・・。


だから俺はこんなにも嫌われ憎まれるんだ・・・。

血の繋がった親兄弟にさえ。

殺したいと思えるほど憎まれる・・・。

こんな俺など・・・・・・。

激情が腹の底から込み上げてきて、堪えるためにぐっと食い込むほどに両手を握りしめた。


その時。


【こら、また!おかしなこと考えてるでしょう?】


不意に頭の中に声が聞こえた気がした。


【ほらもう。またこんなに強く手を握って。だめだよ、傷になっちゃう】


これは、ユフィだ。

まだ会って数日。

毎日俺を探しては、会いに来るユフィを。

まだうっとうしいと思っていた頃。


【ねえ、間違えない人間なんていない。間違えたらまたやり直せばいいんだよ】


二歳も年下で、身体も小さかった彼女が。

まるで母親のように何度もそういって俺に言い聞かせてくれた。

大丈夫、負けないで、わたしが味方になるよ、と。

辛抱強く俺を励ましてくれた。


・・・・・・やり直す・・・・・・。


「・・・・・・・ユフィ・・・・・・」


こんな俺でもまだできることがあるだろうか。

例え、人を無理矢理従わせるような暴力的な力でも。

使い用によっては君の手助けができるだろうか。


俺の願いはあの時からずっと変わらない・・。

ただ君の力になりたいんだ。

君が困っているなら必ず助けになりたい。

そしてもし・・・。

もし、君が許してくれるなら・・・。

こんな俺をまだ君が覚えていてくれたなら・・・。

最後に交わしたあの【約束】を二人で叶えたい。


無意識に俯いていた顔を上げた。

ちょうど、ユフィが教会から出てくるところだった。

両手にいっぱいの荷物を持っている。

薬か、食料か。

どちらにしろ、小柄なユフィが持つには余りにも量が多い。

思わず足がでかけて。

けれど、ユフィの後から駆け寄ってきたあの若い男が、その荷物を持ってやってるのが見えた。

いかにも深い信頼関係で結ばれている二人。

今自分が駆け寄って。

ここは危険だからといっても絶対に彼女は聞き入れない。


『泣き言など聞きたくありません!!』


ああ、そうだな・・。

さっきもそうやって怒ってたもんな・・・。


彼女は他人の命すら簡単には諦めてくれない。

そんな彼女に賛同して、手助けする人間はきっとあの教会にまだたくさんいる。


・・・・・なら俺ができることは・・・・?


俺が今できること。

俺にしかできないことは・・・。


ユフィ達が安全に活動できるようにすること・・・?

軍を・・・撤退させる・・・・?


そして引いては、その軍を、国を押さえ込み、和平への足並みを揃えさせる、こと。


いくらユフィが頑張っても、動けるのはアルフェメラスの中だけ。

和平は二国を動かさないと実現しない。

ハイエィシアを動かす。

それは、ハイエィシア側の人間でなければできないこと。

筆頭公爵家のクロス一族だけではまだ足りない。

けれど、仮にも王族の自分が後につけば。

さらなる後押しになるはず。


俺が、ユフィのためにできること・・・。


「・・・・・・・ユフィ・・・・・」


間違えつづけた俺だけど。

今度こそ君の力になってみせる。

だから・・・。

どうか無理はするな、ユフィ・・・。


そうして俺は、一人静かにその場を離れた。

どこに行っていたのかと詰問してくる名ばかりの副大将を威圧で黙らせ。

問答無用で撤退命令をだした。

今が攻め時だ、なぜ撤退するのかと、散々反対を受けたが。

全てを総指揮官の権限で黙らせた。





後日。

俺は軍をやめた。

顔色を変えて何度も引き止められたが、俺がすべきことはもうそれじゃない。

アッシュと協力して和平への道を探っていく。


そしてさらに数日後。


アルフェメラスに放っていた密偵から、リトスの村の伝染病が収束したとの知らせを受けた。

ほぼ全ての村人が罹患、全滅すると思われたあの状態から。

充分な薬と、食料、適切な処置のおかげで大多数の人間が回復した、と。



ユフィ・・・。

君は本当にすごい・・。

俺ばかりでなく、そんなたくさんの人間を助けたのか・・・・。













いつもありがとうございます。

後ニ話で、長かった走馬灯が終わり、現在に戻ります。

どうか、お付き合いお願いします。


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