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駆け巡る走馬灯11

ブクマ、評価、いいね、ありがとうございます。

心から感謝します。

 無事に弟が生まれた。

その知らせを国境近くの戦場、その最前線で受けた。


いくら裏で恐れられ嫌悪されていても。

表向きは、俺は軍の総大将であり総指揮官。

公爵家からの正式な印を押した手紙は破棄されることなく無事に俺の手に届いた。


・・・・よかった・・・。


急いで、祝いの品と産後の体にいい食物を手配し、手紙に添えて送った。

一度顔を見せてほしい、と。

届けられたその手紙にも書いてあったが、俺はそれすらも見ないふりをした。

こんな血まみれの俺が。

生まれたばかりの無垢な赤子や、産後で弱っている母の前に立てるわけがない。

せめて、弟が、そして母が安全に心安らかに過ごせるように。

一日でも早くこの馬鹿げた戦争を終わらせる。

俺が今すべきことはそれだ。

そう、思った。


けれどその20日後。


また、知らせが届いた。


間違いなくクロス公爵家の家紋で封された手紙。

いつもは赤い封蝋が押されているそこに。

黒い蝋が押されていた。


ざわっと、背筋が冷たくなり全身の血の気が一気に引いた。


黒い封蝋は凶事の知らせ。


まさか、そんな・・・・。


震える手で手紙を開けた。


産後の日達が悪く、母が。

身罷った、と。

そして父までも体調が急変し危篤である、と。


手紙にはアッシュの字でそう書かれていた。


・・・・・・母が、身罷った・・・?


・・・・・・そんな馬鹿な・・・。

以前もらった手紙には母子共に無事だ、と・・・。

生まれた子供が可愛すぎて毎日メロメロになっているのよ、と。

嬉しそうに書かれていたのに。


父も俺が送った薬が効いたのか、ここ最近は体調が良くなってきた、と・・・。

だからこちらのことは何も心配せずに、くれぐれも身体に気をつけるんだよ、と。

そう直筆で書いてあったではないか・・・・。


まさかそんな・・・。

こんなに急に・・・?

何かの間違いではないのか・・・?


しかし押されているのは間違いなくクロス家の家紋。

そしてこれは間違いなくアッシュの字。

間違えるわけがない。


母が・・・・亡くなった・・・?


父が、危篤・・・?


・・・・俺は失念していたのだ。

人の命など儚くて。

あっと言う間に消えてしまうものだということを。


急ぎ、戦場を放り出してクロス家へと向かった。

総指揮官がこの大事な局面でどこへ。

総大将がいなくては戦場がもたない、と。

口々に非難され戻ってくれと懇願されたが。

ふざけるな。

都合のいいときばかり縋り付きやがって。

その指揮官に毎晩暗殺者を送り込んで来るのはどこのどいつだ。


クロス家に向かって、馬を全速で走らせる。

村や町に着くごとに馬を乗り換え、魔法で速度を上げほとんど不眠不休で向かったが。

それでも俺がいた戦場から王都にあるクロス家までは距離がありすぎた。

手紙が俺のところに届くまでにも、かなりの日数がたっているはず。

気が焦る。

今の状況を知る術が何もない。

ああ、こんなことなら、攻撃魔法だけじゃなく生活魔法を学んでおくんだった。


どうか。

どうか父よ。

俺が行くまでもうしばらくだけ待っていてほしい。

母よ。

会いに行けなくて本当にすまなかった。

こんな息子ですまない。

何度でも謝るから。

だから、父を連れていくのはまだ待ってほしい。


何度も願った。

一度も答えてくれなかった神様とやらにも祈った。


けれど。


俺の願いも祈りも、誰にも届きはしなかった。


結局神などいないのだ。

それとも俺は会ったこともないその神様とやらに相当嫌われてでもいるのか・・?


俺がようやく屋敷にたどり着いたのは。


父が息を引き取った後、だった。


俺は・・・。


他人の俺を。


誰からも憎まれ嫌われていた俺を。


最初に受け入れただ愛してくれた父を。


自分の子と分け隔てなく一心に愛し、育ててくれた母を。


見送ることすらできなかった・・・。


何の恩返しもできないまま・・・。


あれほど顔を見せてと言われたのに。


顔を見せることもないまま、心配ばかりをかけて。


受けとるばかりで何も返せずに・・・。


大事な二人を逝かせた・・・。

 

どれだけ後悔してももう会えない・・・。


どれだけ謝っても、もう声も届かないのだ・・・。


俺はなんて馬鹿だったんだろう。


なんて愚かだったのだろう。


本当に自分が嫌になる・・・。










読んでくださりありがとうございました。

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