閑話
ランタンの火を最大限まで絞った薄ぐらい室内で。
苦しそうに咳込む音が今夜も響き渡る。
ゴホゴホ・・・ゴホ・・。
ゴボ。
咳込んだそれに、ねちっこいものが絡み付く。
胸元から取り出したハンカチで彼が口をぬぐえば、真っ白だったそれが真っ赤に染まった。
ゴホゴホ、ヒュゥー。
誰もいない暗い室内で響くのは、笛を鳴らしたような異常な呼吸音。
苦しい苦しい苦しい。
吸っても吸っても空気が足りない。
目が回る。
頭が痛い。
食事どころか、もう飲み物でさえ飲み込めない。
日に日に体は弱っていく・・・。
完全に見通しが甘かった。
まだ何一つとして望む結果を手にしていないのに・・・。
後何日こうして起きていられるか・・・。
後何日彼女と過ごしていられるか・・・。
このスピードで進んでしまえば、残された時間は・・・・。
けれどどれほど苦しかろうが、体が弱ろうがあの【約束】だけは・・・・。
【約束よ、エト!】
・・・・・ああ、約束だ、ユフィ・・・。
君とのあの約束だけは・・・・。
必ず守って見せる。
だから後もう少しだけ辛抱してくれ・・・。
誰のことか良くわからないように書いて(るつもり)ます。
死にそうなどこかの男が頑張ってる、という話です。
次話はまた公爵視点に戻ります。




