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増していく嫌悪感

・・・・・・・・土が乾いている。


昨日来た時もそうだった。

一昨日も。

そして今日も。

種を植え終わって今日で三日。

その間一度として水をやった形跡がない。

一つの種に対して、朝、夕と100cc程の水が必要なのに。


おそらくあの王女はもう既に、興味を失ったのだろう。

あれ以来、畑に見向きもしなくなった。


フルージエは早ければ翌日、遅くても二日目には芽を出す。

それ以降に発芽することはなく、種は土の中でゆっくりと腐りはじめる。

つまり、今の段階で芽を出していないなければ、栽培は失敗。

種が腐り土の影響を及ぼす前に早急に掘り起こし撤去しなければいけない。


今アッシュの目の前にある10もの畝。

そこから出ている若い芽など一つもない。

あるわけがない。


もともと栽培方法が目茶苦茶だった。

その後の世話も一切していない。

芽などでるわけがない。

わかっていたがもしかしたらという馬鹿な期待をわずかだがしてたのも事実。


・・・・しょせん我が儘姫の異常行動、か・・・。


しかしそれならそれで、せめて後始末くらいはしてほしいものだが、それすらあの王女はしようとしない。

どこから取って来たのか。

アッシュがよく知らない植物の葉を振り潰しては顔や体に塗りたくっている。


何をしているのか、ときいてみれば「美しさは武器ですから」と何の恥じらいもなくそんな言葉が返ってきた。

どうやらあの葉には何か美容効果があるらしい。


呆れてものが言えない。


奴隷として連れて来られたと理解しているはずなのに。

そんな状況で外見を気にしてなんになるのか?

しかも、自分を美しいと平気で評価できるその醜い心。

着飾って、マウントを取り合い足を引っ張り合うだけの。

あのけばけばしい女たちと結局一緒なのか、と心は冷えきっていく。


馬鹿でいい・・・。


馬鹿がいい・・・。


その方が御しやすい。

目的のためにその方がいいに決まっている。


なのに、何故こんなにも心がもやもやするのか・・・。


・・・・ああ・・・・。


・・・・ああ、そうか・・・。


僕はこれでもすこしは期待してたんだ・・・。


あのお姫様に。


たった一人で和平を叫びつづけ、結果二つの国を動かしたと言われる友愛の女神に。


利用されて、操られているだけなんだろうとそう評価しつつ。


それでもどこかで、何かほかの女とは違うのだろう、と。


期待してたんだ・・・。


なのに、結果はこれだ・・。


心は急速に冷えていく。


今日も王女は畑に見向きもしない。


今度はよくわからない花をつんできては、それを嬉しそうにすり潰して髪に塗っている。


外見だけを気にして中身を伴わない王女さま。


嫌悪感だけが増していく。




けれど、次の日。

沈み込む気持ちを奮い立たせるようにして今日も屋敷を訪れたアッシュは。


驚きのあまり声もだせずに、そこに立ち尽くすことになった。






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