昔私の母は王太子に婚約破棄され傷心のうちに私の父と結婚した。そしてなぜか新たな王太子の婚約者に私が指名されたのだ。婚約者候補がみんな逃げて、新たな候補が見つからないという理由だった絶対に嫌ですわ!
「……私が王太子殿下の婚約者に? あり得ませんわ!」
「……どうしてもお前がいいと陛下のご指名でな」
「くっ、婚約者候補がみな辞退したからってどうして私ですの! 私のお母さまは昔、陛下に婚約破棄され、ぽいされた人ですのに!」
「……」
私はイリス・マクラーレン。父は頭を抱えて、どうしてこうくるんだと苦悩している侯爵です。
母は数年前に亡くなりまして今は父と二人です。
「普通考えてもあり得ないとわしも思っておった」
「普通あり得ないですわよね」
「ああ」
お母さまは昔陛下が王太子であったとき婚約者になったのですが、陛下の心変わりにより婚約破棄されまして……。
婚約破棄された伯爵令嬢というレッテルのもと、数年独り身そして年下の従弟であった父が、傷心の母を慰め、二人は恋に落ち結婚して私が生まれました。
「お前はまだ十三歳だ。だから規定年齢まではとなんとか……保留にしたが」
「殿下は趣味ではありませんし、絶対に殿下と婚約なんて嫌ですわ!」
「わかっておる。さすがに27歳と13歳ではお前が気の毒だ。しかも相手があれだ……」
お母さまは15で婚約破棄され、22歳で父と結婚しました。
私が生まれたのはその7年後でした。
つまり私と殿下の年の差はその間の年数に比例しました。
「……あの女好きと婚約するのは嫌だとみな辞退して、そして27年前のあれもあってな」
「……」
「規定年齢の15までになんとかするから心配するな」
「私、なんとかしてあれより良い相手を見つけますわ!」
「は?」
「王族であるあの方より身分が上であれば文句はありますまい!」
「まあそうだが……」
私は大丈夫ですわとどんと胸をたたきました。
このイリスは伝手がありますもの。お父様はおいおいおいと泣き出します。
「その言い方、亡くなったシーリアによく似ている……ああ愛しい、シーリア、どうして死んでしまったんだ。わしを置いて……」
「跡取りは従弟のローリーでなんとかなりますわ。なので、私頑張って婚活しますわ!」
私は伝手という伝手を頭でフル回転して考えました。
魔法使いとしての素養がある私は、魔法学園に通っています。
その中で私はあれよりも身分が上の人と話したこともあるのです。
だからなんとかしますわよ!
「……私はロリコンじゃない、他を当たれ」
「先生お願いします。隣国の王の弟である先生なら私の相手になりえるのです!」
「私はもう33歳だ、お前の父上とそう年がかわらん、他を当たれ!」
お父様は今37歳ですわ。というと、だからそう年が変わらんと先生はすがりつく私をしっしと追い払います。
「あの女好きと有名な王太子と婚約なんていやですううううう!」
「おい泣くな!」
私が泣くと先生は焦ったようにこちらを見ます。飴玉なんていりませんわよ!
先生は水の魔法の教師であり、隣国から招かれた講師でした。
この人が一番殿下より身分が高く、まだ独身、恋人なしという条件にあいましたのよ。
「契約婚約でいいのですわ。15になったら違う方を見つけますから!」
「私が独り身であったのは、婚約者が亡くなったからだ、あの人以外を愛するというのはあり得ない!」
「契約でいいのですうううう!」
泣きついてどうしてもあれと婚約したくないと言い続けると、先生はため息をついて、絶対に婚約とやらは将来解消するぞといったのです。
先生は女の涙に弱いと聞いていましたがちょろいもんですわ。
私ウソ泣きは得意ですの!
「……イリスやさすがにわしとそう変わらない年齢の男性と婚約はなあ」
「契約ですわ、仮ですわあれと婚約が嫌だったのです!」
お父様をなんとか説得し、私は先生と婚約しました。まあ仮ですけど。
しかし先生って渋いですわ、黒髪に黒目あの伏せた目も格好いいですし。
実は私先生が好きでしたのよねだからあのバカ王太子と婚約っていやでしたの。
「なんとか先生を振り向かせて見せますわ!」
「……」
「愛があれば!」
「わしとシーリスも年齢差があったしな、頑張れよ……イリス」
「はい!」
私は隣国の王弟である先生と婚約を王家に伝えました。
女好きで有名な王太子の婚約者はいまだにみつからないそうですわ。
当り前ですわよすぐ心変わりするような父を持つ息子、しかも姑があの極悪な性格な元庶民の王妃様ですもの。このまま婚約者が見つからなければ廃太子です。王妃様は寝込んでしまったそうですわ。少し溜飲が下がりましたわ。
「イリス、いつ婚約を破棄するんだ?」
「まだまだですわ!」
私は先生とともに水魔法の練習にいそしんでいます。
あれから半年まだまだ私は子供ですが、女は大人になるのは早いのです。
待っていてくださいね先生、絶対に先生に好きと言わせて見せますわ!
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