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まるで、面接のようなそれ。

作者: 未月かなた

今のところ、恋愛に興味がないワタシに、リサが声をかけてきた。

覚えている単語は、

お見合いパーティー、出会い系アプリ、合コン


なんだか、どれも腰が重い。

リサは、かれこれ5年それらのツールを使い、数々の男性と会ったそうな。

武勇伝なのか?

リサに現在、恋人はいない。


「へーそうなんだ」

とか、

「すごいねー」

とか、

「そんな人もいるの?」

って、相槌を何度も繰り返し、ワタシはリサの話を聞き続けていた。


それで、場がしのげられると、浅はかに思っていた。


けれど。


「いっちゃんも、行って見なよ! お見合いパーティー、今度、一緒行こう!」

突然、私に矛先が向いてきて驚いた。

「えっ?」


ワタシと言えば、

彼氏と別れて1ヶ月。

元彼に、新たに好きな人ができてしまい1年付き合った恋が、あっけなく散ってしまった。

気持ちはようやく落ち着いてきたでど。

まだ、そんな気にはならないんだけどなぁ。


「社会勉強だと思って!」

リサは、カフェのテーブルに身を乗り出してワタシに言った。

その、妙な説得にワタシは、断りきれずに返事をしていた。


お見合いパーティー当日


周りの女性陣の、華やかさ。

え? 結婚式の二次会ですかこれ?

って、言うくらい、ドレスにセットされた髪。バッチリメイクに、ネイルも抜け目なく華やか。

ワタシは。

就職活動で着ていたスーツ姿なものだから、なんだか浮いて見えるかも。

しかも、主催のスタッフさんと服装が似ている。これって、間違われる可能性高い?


始まる前から、不安でいっぱいで足がすくんでいた。


「いっちゃん! 今日は、友達だけど、ライバルだからね。気兼ねしないでいこうね!」


リサも、二次会の人になっている。何時もなら着ないような、ピンクのふわふわしたドレス。マツエクしているの? エキゾチックな顔立ちが更に、輪をかけて派手さが出ていて、なんて言うのかな…宝塚歌劇団の方のような。


「ライバルだなんて。お手柔らかにだよぉ」

ひえぇ。

お見合いパーティー初心者なんだから、その辺は教えてもらいたい所だったのに。

ワタシは、目が小さいから、マツエクにカラコン入れて見たけど。

スーツだし、巻き髪も変かと思って、地味に耳下で束ねたし。せめて、身につけているものくらいはと、最近買ったお気に入りのブランドバックと、青いエナメルのパンプスを履いて見た。

通勤では使えないから、せめて休みの日くらいは使いたかったんだ。


けど。辺りを見渡すと、なんだか居心地が悪い。

きっと、此処は、男女の出会いを勝ち取る、戦場なのね?


「では、プロフィールシートをお配りするので、各自ご記入をお願いします」

会場でスタッフの女性がマイクを使い、アナウンスをしていた。ワタシは、それを受け取ろうと歩き出した。

「あの、すみません」

後ろから、男性に声をかけられ振り向いた。

スーツ姿の、40代くらいのおじさんだった。

「はい?」

首を傾げてワタシが見ていると、眉間にシアを寄せた。

「今、シート配るって言ったから。1枚下さい」

右手を差し出して、おじさんは言った

え? ほら…やっぱり。

「あ、あの。ワタシ、違います。参加者です」

両手を振って、猛アピールをしたら、更に機嫌悪そうな顔をした。

「チッ。紛らわしい格好してくんなよ」

小声で言ったのか、聞こえるように言ったのか、その言葉とおじさんの態度に、ワタシは不可抗力で傷つけられた。


もう、帰りたい。

初めから、こんな思いじゃ、全然前向きになれないよ。

挫ける気持ちで俯いていると、スタッフの女性が、シートをワタシに届けてくれた。

「こちらどうぞ。ご記入頂いて、お待ちくださいね」

簡易的なプラスチック製の鉛筆も一緒に配られ、ワタシは溜息を小さく吐いてそれを書き始めた。


アピールタイムと言う、ひと通り参加者の男女が会話する時間が与えられた。

「僕は、よく海外旅行に行くんですよ」

与えられた制限時間は、5分間。けど、ほとんど、この男性ばっかり一方的に喋って、こちらがアピールする隙がない。

ピーっ!


機械音が鳴り、制限時間を知らせた。

まだ、話足りなさげな男性は、席を立ち去って行った。


全くもって、顔と名前が一致しない。誰が、どんな人だったかなんて、さっぱり情報処理が追いつかなかった。


次に同席した人。

いかにも真面目そうな。え? 27歳? ワタシより年上? 嘘? 40くらいに見えるよ?

あぁ、やっぱり。公務員だ。いかにもが、また付いた。

「イオリさんは、趣味が映画とありますが、どんな映画が好きですか?」

「はい。恋愛ものとか、コメディーとか。最近は、CGアニメも好きです」

「なるほど。現在は、ご家族と同居と書いてますが、将来、結婚した場合、ご両親や、相手の家族との同居はどうお考えですか?」

うっ…。ワタシ、そこまでまだ、考えた事ない。ガチのお見合い? ワタシまだ、彼氏どうしようかって、思ってるくらいなのに。

ワタシが答えに詰まっていると、相手の男性が、小さく溜息をつかれたた。

「結構です。ありがとうございます」

それっきり、何も質問せず、残りの3分を沈黙で貫かれた。


何? ワタシ、切られた? だけどさ、その態度ってどうなのよ?

気まずい空気と時間を待ち、ようやく次の人との時間になり、ほっとした。


それも、つかの間だった。


げ!

さっきの、感じ悪いおじさんだ!

ワタシの事、スタッフと間違えたやつ。謝りもしないで、最悪な奴!


怪訝する態度を極力出さないよう、冷静になろうとワタシは努力した。

「短大? 何を学んだの?」

ワタシのプロフィールシートを舐めるように読んで、そう言った。上から目線の物の言い方に、気が逆撫でられる思いだった。

「コミュニケーション学です」

ワタシの答えに、おじさんが馬鹿にするような苦笑いを見せた。

「どうせ、合コンに明け暮れたお勉強だんだろうな。…実家暮らしか。料理はできる?」

おじさんが、ワタシのプロフィールシートを見ながら、話している。視線も合わせずに。

ん! なに、この人の態度。すっごく、感じ悪い!

おじさんの質問の仕方が、就職活動した時の、面接に似ていた。

事務的な対応。

嫌味言われたこともあった。

意地の悪い面接官もいた事を思い出していた。

就職活動だから、無理して頑張ったけど。それでも、面接終わった後は、かなり凹んだ。

当時のそれを思い出し、ワタシは毅然とした態度で答える事にした。

「そう言うわけでは。ちゃんと、勉強してましたし。料理は、母がほぼしてくれています」

「だろうなぁ。料理出来なさそうだもんな。男性に求めるものは? えーっと、なになに? “優しさ”! もう少し具体的にないの? 優しけりゃいいなら、ホストクラブでちやほやしてもらえば?」

なんなのよ! このおじさん!! 言いたい放題。

ホント、ムカつく!

ワタシの怒りが、爆発しそうだった。けど、ぎゅっと唇を噛んでそれを堪えるようにしていた。

本当は、悔しくて涙が出そうだったけど。それも必死に堪えた。


ピーっ。

「ま、真剣に見合いしにきたわけじゃないんだろ? 冷やかしならさ、オレ達の出会いの効率、下げないで欲しいよな」

極め付けに、おじさんがワタシに言った言葉に、ワタシは居心地がとてつもなく悪くなった。


このまま、他の男性の話を聞く余裕もなくなり、ワタシは席を立ち、スタッフに気分が悪くなったと言って、会場を後にした。

忘れたくても、思い出してくる。

さっきの、おじさんの顔や言葉。

たしか、女みたいな名前だったけど、もう、忘れちゃった。年齢は47歳だった。参加番号7番。

ぐるぐると、それらの事が頭の中で浮遊している。チクリチクリと、胸を刺し、まるで、ワタシの存在を頭ごなしに否定しているかのようで、辛い気持ちになっていた。

電車に乗り、家の前までは、気を緩めないように必死だった。

そうして、部屋に入り、ワタシの涙腺が全開になった。

どうして、あんな思いまでしないといけないの?

平気で人を傷つけて。冷やかし? そりゃ、彼氏になるような人と出会えたらって、思ったけど。

あんな言い草しなくても、いいじゃない。

もう、サイテー。

あまり、よく知りもしない人に酷く言われて、ワタシはかなり凹んでいた。


その日の夜。

『いっちゃん、今日、どうしたのー? 終わって周り見たらいなかったけど? 私ねー、ゲットしたよ。高収入のヒト。見た目も話もつまんなかったけど。なんか、選んでもらえたし』

能天気なリサからのメッセージをぼんやりと眺め、話はあまり頭に入らなかった。

『それとさ、いっちゃん、お見合いパーティーで、1人、いっちゃんを選んだ人が居たんだって。その人が、どうしてもって、スタッフに頼み込んだらしくて。いっちゃんが、良ければ連絡先交換して見てくださいって、スタッフの人に伝言預かってるよ』

へ?

リサから来た文面を、目で追いピタリと身が止まった。

誰だろう?

スマホの画面をスクロールして、リサが打った文章を読み進める。

……げ!

『番号、7番の人だって。覚えてる? もし、気があるなら、連絡してって。無ければそのままスルーでいいって』

ない! ないないない!!!

なんで? よくわかんない。何で、ワタシをあのおじさんが選んだのか。

ワタシの頭の中が、混乱していた。

訳がわかんない!

あんなに、ワタシを攻めて、不快な思いをさせたのに。

あれって、小学生男子によくある愛情の裏返し? 好意なの? それとも、マジの嫌がらせなの?

あー、もう!

嫌な事だから、忘れたいのに!

頭をぶんぶんと振り、おじさんの事を考えないように、それを振り払った。


少し、落ち着いてきてふーっと、深呼吸した後で、ワタシは、リサに返信をした。


『今日は、途中で抜けてごめんね。選んでくれた相手、ワタシ、絶対無理だから、そのままスルーしておくわ』

メッセージを送り、ふつふつと、おじさんへの怒りが再び湧いてきたから、それを考えないようにもう一度、頭をぶんぶんと振った。

そうして、リサに、追記した。

『今回は、ありがとう。社会勉強させてもらった。でも、次はもう、誘わないで』

メッセージをリサに送り、ワタシは、好きなバンドの音楽を聴いて寝ることにした。





お読みいただき、ありがとうございました。

テレビでやっている、お見合い物はつい観てしまいます。


次作は、男性側のお話です。

イオリに、おじさんと、呼ばれていた彼のお話。


次作も短編です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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