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怖い話24【コピーされた物】1000字以内

作者: 雨間一晴

「あのー、すみません、上から抑えてもらって良いですか?沢山コピーしたいんですけど、腕がこれで……」


 俺は急に出かけるはめになって、コンビニのATMでお金を下ろしている時に、隣から話しかけられた。左腕にギプスを巻いている女子が立っていた。右手には数枚のプリントを持っている。


 白とピンクのゴスロリファッションで、白いフリルのカチューシャの下は、お世辞にも可愛いとは言えない。丸い眼鏡の下で薄い一重が俺を見つめていた。厚い化粧に成人しているのか、高校生なのか検討も付かない。


「あ、はい。良いですよ」


「ありがとうございます、ちゃんと印刷したいので」


 原稿カバーを抑える必要がある厚さの感触では無かった。横目で女を確認すると、俺の顔を見てニコニコしている。


 コピー機が印刷を開始したのか、抑える手のひらに微かな振動を感じる。やがて、一枚の紙が吐き出され、女が手元でそれを確認してから、満足そうに二回頷いた。こちらからは、よく見えない。


「あのー、次の印刷したいので、カバー開けてもらって良いですか?」


「あー。はい、終わったんですね。取り出しますよ」


 俺はカバーをそっと開けた。そこには信じられない物があった。言葉が出ない。


「ちゃんと持ってないとダメですよ?ふふ、本当に可愛いんだから」


 大好きな彼女とお揃いで買った、イニシャル付きのストラップ。それが付いた、俺のマンションの鍵だった。当然、この女は俺の彼女ではないし初対面なはず……


「ごめんなさい、驚かせちゃった?あのね、トイレットペーパー切れそうだから、新しいの補充しておいたよ。また行くね。ふふ、大好きだよ」


「え……?」


「またね、ゆうすけ君。お金を下すためのパスワードも覚えちゃった、ひひ。いつか私がちゃんと管理してあげるからね。私、行かなきゃいけない場所があるから、またね」


 頭の理解が追い付かず、脳が空中に浮き上がるような感覚に襲われ、一歩も動けない。コンビニから出て行く女をただ見送った。


 コピー機の上に、俺の探していた鍵が残されていた。出かける必要は無くなったが……あれ?


 一枚、コピーされた物が取り残されていた。


 そこには、部屋に飾ってあったはずの、彼女との写真が写し出されていた。上に貼り付けてコピーしたのだろう。彼女の頭が、まるごと、あの女に変わっていた……

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― 新着の感想 ―
[良い点] うわあ…… 胃のあたりが何とも言えないかんじになる怖さです。 もしかして、待ち伏せられていた? と考えると怖さが倍増しますね……。
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