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一抹の不安と


「イリア様!」


慌ただしい日々が続くこの国では、昼夜問わず私の寝所へと人が訪ねてくる。


「奇獣の群れが、王都北部より接近中!

現在、魔術部隊が応戦!速度は変わらず!

このままでは15分後には民衆に死傷者が出ます!」


ー…チッ!

軟弱な魔術部隊でも、足止めぐらいはやってみやがれ。

貴重な睡眠時間を削られた腹いせに薙ぎ払ってやるよ!


返事はしない。時間も無い上に、話すだけ無駄だ。

ナイトウェアのまま、壁に立ててある魔力砲を担ぐ。

窓から空へと跳躍し、そのまま北へと向かう。

奇獣さえ居なけりゃ、いい夜なのになぁ…あ?


魔術部隊が遠距離からの魔法で攻撃をしている。

既に術式はうち尽くし、気力だけで応戦して居たようだ。

このままでは魔力が枯渇してしまう。


「てめぇら!廃人になりてぇのか!

雑魚はすっこんでろ!!」


言うだけ言い終えると同時に魔力砲をぶっ放す。

術式なしの力技だ。

ただ、それが奇獣には一番良く効く。


どデカい魔力砲を片手で振り回し、奇獣の残党を殲滅に向かう。

しなやかな身体が繰り出す体術は、まるで舞踊のようだ。

短くとも黒檀の艶やかな髪、褐色の肌に暁の瞳は地上へと降り立った悪魔に見える。

夜通し舞い続けるその姿は、人々を魅了する。


殲滅が完了した頃には、奇獣の屍の上で魔力砲をベッドに眠る彼女の姿があった。

その身は傷1つなく、血の一滴も浴びておらず、後に伝説となり語り継がれる話の1つとなった…





「…って、何だよ!おい!」


長い映画を観たような疲労感と共に目が覚める。

飛行機がイデアに着くなぁ…と思っていたのは覚えいるのだが、どうやら寝てしまったらしい。


ベッドから起き上がり窓の外を覗く。外は暗く、はっきりとは見えないが、イデアには到着したらしい。

ほうきに乗った魔女が見える。

観光客用にわざとらしい演出をしているあたりを考えると、前世持ち居住区では無いようだ。


ここは、病院…と言うよりは、ファンタジー要素がある宿屋の雰囲気の部屋だ。部屋の明かりが魔道具で出来ている。内観は質素だがそれがいい。

冒険者気分になれる部屋だ。

観光客なら、ワクワクが止まらないだろう。


ベッドに座り、少し考える。

服も着替えさせられているし、ここへ運んでくれた人がいたのだ。円卓の騎士の誰かに運んでもらったのだろうか…何だか恐れ多い気がする。


コンコン…


ノックが聞こえた。ドアは開いていない。

誰かが部屋に居る気がする。

じっと目を凝らしても、見える訳では無いようだ。

だが、居る。


「えっと…スカウトの方ですか?」


ドアの前にスッと姿を現した。


「お見事!

覚醒前でも、さすが“ジョーカー”だけはあるね。」


円卓のスカウトの人だ。

イデアの外で会った時とはまるで印象が違う。

でも、何故だかわかる自分に気味の悪さを感じた。


「色々と思いを巡らせているだろうけど、とりあえずは晩御飯でもどうかな?」


言われてみれば昼すら食べていない。

階下に食堂があるからと、少々強引に連れて行かれた先は、とても賑やかで大きな食堂だった。

スカウトの人が適当に注文をして、個室へと案内された。


円卓の騎士、揃い踏みで圧巻だ。

リーダーでファイター、ガウェインさん。

ウィザードのマーリンさん。

ヒーラーのラファエルさん。

スカウトの…


「ジョーカー!

立ったままじゃ食べれないよ!」


「不知火、余計な事は言うな。」


スカウトの人がガウェインさんに怒られている。

しらぬいさん?は世話焼きな人なのかな。

とりあえず席に着くが、聞きたいことがあり過ぎて、何も出てこない。


食事がテーブルに置かれ、ドアが閉まる。


『遮断』


マーリンさんが言い放つと、一瞬、白い光が部屋を駆けた。食堂の音が聞こえなくなっている。

魔法…間近で見たの初めてだ。


「…日本語…なんですね。」


魔法と言えば、呪文とか、魔法陣とか、ちょっと期待していた自分がいた。

マーリンさんは少し笑う。


「だって日本人だからね。」


…知らなかった。ネットでは写真と簡単なプロフィールしか出回らないからなぁ。

ピンクゴールドの髪に、緑の瞳、豊かな胸。

前世持ちはやっぱり違うなぁ…


「機内では、質問に答えられず、すまなかった。

イデアに着いた今、制限はほぼ解除された。

何でも聞いてくれ。答えられるものは全て答えよう。」


ガウェインさんは、とても真面目だなー…


「その前に、料理が冷めない内に頂きましょう。」


ラファエルさん…女の人…かな?

この人が歌えば聖歌もオリコントップ間違いないと思う。

中性的な顔と声で、爆発的人気が出るだろう。


「んじゃ、食べよ!いただきまーす!」


「…‼︎」


しらぬいさんは、フードを取るとぴょこぴょこと可愛い猫耳を嬉しそうに動かした。

猫人、初めてみたー‼︎

失礼にならないように横目でチラチラと見ながらご飯を食べる。


この晩御飯は、味がわからないまま終わった。

不安だった筈のイデア生活も、好奇心が勝ったひと時だった。


???(??)

通称:イリア

所属:???

魂ランク:???

魔力砲と体術を使う

黒檀で短めの髪、褐色の肌、暁の瞳

スタイルは抜群だが、口が悪い

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