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みわかず的現実恋愛集  作者: みわかず
9話:もしかしたら、いつの日か
19/29

1話

女子高校生。

隣に越して来たお兄さんに恋をした。


全4話。約7800字。



 

「起きてー!朝だよー!」


 寝室のカーテンを思いっきり開けると、両親が「ううぁぁ……」ともぞもぞしだす。


「お母さん、今日は早番だよ、ご飯食べる時間がなくなるよ。お父さんも会議だから一本早い電車に乗るんでしょ」


 ガバリと起きた二人を確認して、隣の子供部屋に向かう。


「起きろー!朝ご飯だよー!」


 中学生の三つ子の弟たちが絡まりながら「んー」と返事をする。今日もひどい寝相。思春期の男子だろうが目覚まし時計で起きないのならデリカシーなど関係ない。ズカズカと部屋に入り、カーテンを開ける。


「う、まむ()しい……!」「とける……!」「(ふとん)が俺を呼んでいる……!」

「お天気お姉さんの衣装、ミニだったよ」

「「「マジで!!」」」


 ダダダと部屋を飛び出し階段を駆け降りる弟達にやれやれ。


「コートの丈が」


 ひとの話は最後まで聞きなさーい。




 ◆




「火の元よし、戸締りよし、制服よし。いってきます」


 ふー、やっと一段落。

 忙しい両親の代わりに家事をするようになったのは小学6年生の時で、高校2年の今まで続いている。最初は失敗ばっかりだったけど、文句を言いつつも弟たちも協力してくれるので、今では両親の弁当を作るのも慣れた。

 みんなを見送って、玄関に鍵をかけ、自分の学校に向かう時に一段落するってどうなの?と思わなくもない。でも両親が頑張ってくれてるから今の生活があるのだ。


「いってらっしゃい。今朝も賑やかだったね」


 上の方から聞こえた眠たげな声はお隣の家のお兄さん。2階の窓を開けて、フニャリとした笑顔でそこから手を振っている。寒くないんだろうか?


「あはは、いつもすみません」

「いやいや、俺の目覚ましにちょーどいいから毎日やって」


 あはははは……

 お隣さんは一軒家だけどお兄さんだけの一人暮らし。元々は海外に住んでいて、お兄さんは去年、日本の国立大学に通うために来日。日本人だから日本語が普通に話せるけど、他にも何カ国語か話せるらしい。すごい。

 そんなお兄さんは少し前にアプリ会社を起業し、学生ながら社長さんだそうだ。20歳で社長すごい。

 すごい人がお隣さんに来たもんだ。


「お兄さんの目覚ましになるってことは、もれなくご近所にも騒音を振りまいているってことじゃないですか。恥ずかしいなぁ」

「でもみんな結構目覚まし代わりにしてると思うよ?」


 お兄さんが隣に越して来るまでご近所さんからそう言われたことがなかったけど、少し声を抑えようかな……恥ずかしいし。


 くしゅん、とお兄さんがクシャミをした。


「風邪をひいちゃいますよ」

「うん、でも君の生足の方が寒そうなんだけど?」

「女子高生は足を出してなんぼです」

「よしじゃあお兄さんがお小遣いをあげようかね」

「これ以上はハーフパンツが見えるのでアウトです」

「いやもう俺の方がアウトだよ。女子高生をからかうのもひと苦労だな」

「うちの学校、来年から女子もズボンがOKなんですよ。そのセクハラ、今のうちだけですよー」

「うわ、日本の女子高生こわいわぁ」


 あははと笑うお兄さんは「じゃあ気をつけてねー」と窓を閉めて、その向こうで手を振る。私もそれに手を振る。


 ここ最近の、私だけの癒やしの時間。

 お兄さんからじゃないと接点のない私たち。

 だって、何でも持ってるお兄さんに私が何をできるのよ。そもそも、社長が女子高生を相手にする方が問題だわ。


 よし、今日も頑張りましょー。





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