貴族の悪
長くあいだが開いてしまいました、、、申し訳ないです。気まぐれで投稿してるに等しいので、たしなむ程度に楽しんでいただければ幸いです。
家を出て少し離れた城下町まで歩く
少しずつ増える人に流されないよう
大通りを外れ人気のない路地を選びながら進む
子供が2人だけでこんなとこ歩いちゃダメだなんて親切に教えてくれる大人なんていない
そもそも小汚い子ネズミみたいのに声をかける輩もいやしない
道端に転がるのは私たちよりも汚い大人達の骸のなりかけ
乙女ゲームは綺麗なものしか映さないから
こういうものを見ると、現実であることを知らしめられる。
私がいつこの仲間入りをするのか、ここを通る度に不安がよぎるのは致し方ない。
「イザベラ、あそこ」
繋いでいた手が少し引かれ
マリアが指をさしている方に視線を向ける。
4、5人ほどの若い青年たちが道に転がる人を囲み
ニタニタと気色の悪い笑みを浮かべている。
「マリア、手前の道から大通りに出よ」
青年達がいる少し手前の道、あまり近寄りたくないが、後にはかなり戻らなければ大通りへ出る道がない。
ぎゅっとマリアの右手をにぎるのを合図に
そっと歩き出す。
気配を消したいのに、ドキドキとしきりになる心音
ゔぅう、倒れそ
青年達は私たちには気付かず、うずくまっている人を脅している。
時折、軽く蹴りを入れては反応を楽しんでいるようだ。
「きゃっ!」
べしゃ、、、繋いでいた手が離れたと思ったら
隣にいたはずのマリアが道端に這いつくばってる
その瞬間、さっきまでのドスが効いた声が止まり
青年達が、私たちの方を見ている
やっば、1人のリーダーらしき人と視線が交わり
ビクリと肩が揺れる、、そっと、マリアを起こし
全力で目の前の大通りへ繋がる通路を目指し走った。
強引にマリアの手を引いて
一心不乱に走った。
「はぁっ!はっ、あ、、、」
道を抜け、人混みの中に隠れる
押しつぶされながらも
小ささを生かし、するすると抜けていく
後ろを振り返ってみても、あまりの人の多さに
追いかけられたかもわからない。
「はぁーーー、疲れた」
ため息と一緒にほっと息がつけた。
「ご、!ごめん、あんな所で転んで」
「大丈夫、私たち子供相手にまで手を出すわけないよ、たぶん」
「そうだよね、いくら "貴族様" でもそんなことしないよね」
本当にそうならいい、けど
あの青年達は、貴族の息子達だ。
小綺麗な服を着て清潔そうな髪の毛を乱しながら
道端に転がる人達に暴力を振るっては楽しんでいる。
普通の貴族はこんなことしない、ただ一部を除いて
この世界は魔法が使える貴族ばかりではない、ほぼ高確率で魔力持ちが生まれるのは貴族だ。
しかし、必ずではない
稀にいる魔力なしが、家庭での不満の鬱憤晴らしがここなのだ。
人通りの少ない、身寄りがなく朽ちていくだけの人を人々は関心すら持たない
魔力なしである貴族はプライドだけは1人前に育ち、顔も家名もバレたくはないらしい。
バレたところで、告発する前にそいつを殺してしまえばいい、そんな頭の軽いヤツら
平民は殺されたくない一心で見て見ぬふりをする。
「マリア、あなたは気をつけなさいよ」
「え?」
「アイツらはマリアみたいなのを最も嫌ってる、もしもバレたら何をされるかわからないのよ!絶対、絶対に人前で使ってはダメよ」
つい、熱がこもってしまう
お隣さんでヒロインで幼なじみ
ずっと一緒に育ってきて
彼女のすべてを知ってる私、いいえ、この先起こることだって知ってる。
彼女が本当の愛に出会うことはとても嬉しいと同時に貴族になることで周りからのやっかみに心を痛めて欲しくない。
「うん!分かってるよ!イザベラってばお母さんみたいなんだからぁ」
へにょっと可愛らしい笑顔
私の心も和らいでいく
はぁー、天使だ、こうやって攻略者たちをたらしこんでいくのかぁー、魔性だな魔性
いくら私がここで魔法をつかうなって言っても
この先必ず使ってしまうのだ。分かっているけど
言わずにはいられない
「誰がお母さんだ!ほらっ、まき売りの場所を確保するよ!」
繋いでいた手をまたしっかり握り
まき売りの場所へと向かった。
「うん、お母さん」
「やめてってば」
「ふふふ、イザベラ、ありがとう」
マリアが私の手を握り返してくれる
恥ずかしそうに下を向いては、ふふっと声を漏らすマリア
自然と私の頬もゆるみだし、くすぐったい気持ちでいっぱいだ。