以外に小心者
指先が銀色のもふもふに、届いた!!
ガブッ!
「いったぁああ!!!」
左肩に走る鈍い痛みから後ろへ数歩後ずさった
前触れもなく噛まれたところがじんじんと熱を帯びる
「なんで噛むの!!!!痛いじゃん!!」
前にいる凄むオオカミの瞳を睨み返し
大声で言ってやった
大きな体はブルりと揺れたかと思うと
後ろの毛をぐわっと逆立てて私を威嚇してきた
「貴様が私の許可なく触れようとするからだ」
唸るような声に
犬好きの私でも怯んでしまうくらい怖い
オオカミの金色の美しい瞳が光を反射して
ギラギラと獲物を狩るような色をした
「オオカミさんだって、私の匂いを嗅いだじゃないのよ!この変態魔王が!!!!」
「魔王、だと??」
ピクリピクリとオオカミの両耳が反応してる
なんで私ってこんなに馬鹿なんだ???
鋭い視線が私を品定めし始める
余計な一言のせいではや2度目のピンチを迎えそうだ
きっと今度の言い訳は通用しない、けど!私の知恵無き頭は言い訳なんぞ考えつかない!どやぁ
「ま、魔王みたいじゃない!!」
「貴様は魔王を見たことがあるのか?」
うう、痛いところをついてくるな
ゲームのスチルで穴が開くほど眺めたことはあるよ
でも、この世界に生まれてから
昔ばなしもおとぎ話なんかも聞いてこなかった
もしかしたらその絵本か何かに魔王の姿が記されているのかもしれない
その逆も然り、2分の1の確率だ
くっっそ、魔王め
「み、見たこと、、」
「イザベラ〜どこー??そろそろ街に行かないと日が暮れちゃうよぉー?」
聞き慣れた柔らかな声が私の声を遮り
ガサガサと葉をかき分ける音が近づいてくる
「ま、マリア!!来ちゃダメ!」
「イザベラ??」
ガサッと一段と近くに音が聞こえたら
右脇の影からマリアの顔だけがでてきたぁ、、
待ってどうしよ、ヒロインとラスボスが顔合わせしていいの?
ダメだよね、シナリオ変わっちゃうよね
咄嗟にマリアの顔の真ん前に通せんぼするみたいに立ちはだかってみる
「ま、マリア、まきは集まったわ!さ、行きましょ!今すぐその茂みから頭を抜いて、回れ右をするのよ??いい?絶対こっちを向いてはいけないわ」
「どうしたの?イザベラの後に何かいるの?ねぇ!ねぇ見せてっ!もしかして、うさぎ???ウサギなのね!」
「ウサギじゃないわ!!何でもないのよ!さっ!行きましょう、日が暮れてしまうわ」
目をらんらんとさせて私の背後を見ようと
首を動かすマリアに合わせ、私もこれでもか!ってくらいのディフェンスをはる
「イザベラの意地悪、、いいよ、帰ろ」
不機嫌そうに可愛らしい唇を尖らせ
ストロベリーブロンドの細い髪を振り乱し
茂みから顔が抜けていく
ほっと胸を下ろしたのもつかの間
「すきあり!!」
「まっっってぇえええええええ!!!」
私がマリアの視界を塞ぐより前に
マリアは茂みから抜け出し
私の背後へと回り込んできた
無駄な叫び声を挙げたところで、絶望が頭をよぎる
シナリオが変わることによってこの世界が破滅してしまうかもしれない!!
恐る恐る振り返る、、、マリアの後ろ姿
あ、もうムリ
ドサッ、、、
心音がピークに達し
私はマリアの正面に立つものがなんなのか確認することなく
意識を手放してしまった。
「イザベラ!!!!!!」