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ファンタジーっぽい

ダンジョンで食卓を

作者: 風見烏

読んで下されば嬉しいです。ヒロイン目線で進む物語が書いてみたくて投稿しました。

 ――――彼と出会ったのは、深い森の迷宮の中。


 この世界は平等ではなく、不平等でもなく、ただ、つり合いが取れているだけなのだ。

 天秤(てんびん)の片側には100グラムの金(きん)。そしてもう片側には100グラムの石ころ。

 同じ重さだというのに価値はまったく異なる。世界はそんなものなのだと彼女は思った。

 自分がどちらなのかは言うまでもなく理解出来る。そう、石ころのほうだ。

 金(きん)なら大事に扱われるが、石ころならその辺りにでも放っておかれる。


「ああ、この世は不条理なことばかり。誰もわたしのことなんて知ったことじゃないのよ」


 自嘲(じちょう)気味に吐き出す言葉は陰気(いんき)で陰鬱(いんうつ)でじめじめと湿っている。吹きかければぶわっと、カビが生えてきそうなほどで、腐って饐(す)えた臭いを発する魚の如き濁(にご)った眼で熟(じっ)と前方(まえ)を見すえる彼女の名前はノエルという少女。


 森の中を途方もなく歩いている。いや、逃げているというが正しい答えだろう。ノエルの右足には枷(かせ)がはめられていて、歩行の邪魔になっている。

 うっとうしそうに鎖を引きずる姿は痛々しく、彼女の境遇を物語っているようであるが。


 いわゆる奴隷(どれい)などという奴で、もっとも、この世界の奴隷制度はほぼ雇用契約みたいなもので、賃金(おかね)を得るために自分の能力を売り込む者さえいるくらいである。無下に扱えばとうぜん罰則もある。


 が、合法なものがあれば、非合法なものも存在する。

 ノエルは非合法な奴隷(しょうひん)であり、本来ならば自分の家事能力などを生かしてくれる職場を探していたはずなのだが、どういうわけか非合法の斡旋業者に捕まり、どういうわけか非合法に二束三文で売られそうになっていたという現状。


 彼女を待ち受ける未来は明るくなく、どこぞの変態の慰(なぐさ)み者になるか、地下の娼館に売られるか、もっとひどければ妙な儀式の生贄(いけにえ)にされるのであろう。


「もしも神様がいるのならば、助けて下さい。助けろ。助けやがれ」


 自棄(やけ)気味に言い放ち、天に祈りを捧げるような気持ちで、中指を立てたくなる衝動に駆られる。

 そんな考えを知られてしまったのか、あるいは不敬(ふけい)と見なされたのか、ノエルに更なる試練が襲う。ねとりと足裏に絡みつく感触。とりもちのように張り付き身動きが取れなくなってしまう。そして彼女の目の苔(こけ)むした岩が姿を変える。ローパーという魔物が現われたのだった。


「ああ、なんて不幸、不運、不遇。幸運(つ)いていたことなんて片手で数えるくらいしかないのに、こういうことばかりは、両手で数え切れないほど起こるのね」


 その魔物は植物や岩などに擬態(ぎたい)し、周囲にねばりけのある菌糸(きんし)のようなものを張り巡らせ、足を取られた動物を触手でもって絡め取り、麻痺毒を流して、じっくりと捕食するのであった。


 あきらめに似た吐息をもらすと、空を見上げた。

 だらんと手足の力を抜き、抵抗の意思がないように見える。

 死を覚悟した動物のように、もはやこれまでと言った面持ちで。


「おさらば……なんて言うわけ無いでしょう!!」


 手には木の棒を持って、せめて一太刀でも二太刀でも浴びせようと心に決めた。

 簡単に魔物のご飯になんてなってやるものかと、悲壮を通り越して壮絶な表情で睨み付ける。じわじわと近づいて来る魔物に向かって、まさに今、木の棒を振り下ろそうとした瞬間。


「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 などと言う声が聞こえたのであった。

 その青年は扮装(みなり)の整った背広(スーツ)姿で、とても森の中を歩く格好には見えず、狩人にも冒険者にも見えない。

 ノエルは目を疑った、仮にも森の迷宮と呼ばれるこの場所に商人が護衛も付けずに一人で行動するなどと考えられなかった。


 かなりの速さで、先ほどは豆粒程度の大きさにしか見えなかったが、ものの数秒でノエルに肉薄するまでに迫る。

 もしかして助けに来てくれたのかと淡い期待をしていたのだが、何故だか棒きれを取り上げられ、あまつさえ説教までされる始末。


「あれをこんなもので叩くなどと、なんともったいないことをするのだ! それではまずくなってしまうではないか!」

「まずく……? え? 助けに? あれ? なんで怒られているの?」


 疑問符を浮かべるノエルの。

 目は白黒と見開かれ、状況にまったく着いて行けないという有り様。

 そんなノエルを尻目に男はくるりと回転すると、まるで菌糸などないが如く走りだし、触手をひらひらとかわすと、彼女に言い聞かせるように。


「あれはこのように対処するのだ。雷撃!」


 指先に紫電をまとわせ、ばちり、と、一撃加えるとローパーはそのままぐんにゃりと倒れ動かなくなったのだった。菌糸も同じように粘着力が失われつつある。


「このローパー種は電気に弱い。このように電撃をあびせればすぐに無力化できる。むやみに殴って肉の質を落とす必要はない」

「え、あの、ありがとうございます……?」

「殴れば麻痺毒を触手以外の体外に分泌(ぶんぴつ)させてしまう。このように、麻痺袋を縛って切り取ってから調理しなければならない」

「調理って……まさかその魔物食べるんですか!?」


 麻痺袋と呼んだ物体を頑丈な缶に詰めているようで。

 ノエルの見ている目の前でローパーを解体していく青年。

 その手際の良さは目を見張る物があるが、魔物を嬉々としてさばく姿は、いささか危険な臭いが漂ってくる。ある種、恐怖である。


 青年は当たり前だろうという顔をすると、魔物を見て、ノエルを見て、また魔物を見て、ノエルを見るとようやく彼女のことを認識できたようで、穏やかな笑みを浮かべると。


「――――危ないところだったようだね、お嬢さん。君が無事で本当に良かった」


 紳士めいた態度で心にもないことを言う。


「どうもありがとうございます――――いやいやいやいや、だまされませんよ! 最初からわたしのことなんて眼中に無かったじゃないですか!」

「ふむ、ごまかせないか。君はとても賢いのだな」

「なっ、ばかにしているんですか!!」

「ばかになどするものか。だが、こんな魔物がはびこる森の中で、武器も持たずにうろちょろとしている人間など、よっぽどの物好きか、さもなければドアホウしかいないであろう?」

「ぐっ、それはそうかも知れませんが。わたしにも事情というものがあるんです!」

「事情――ねぇ。おおかた予想は付くが。しかし……」

「へへへ、やっと追いついた」


 がさりと草むらから出てきた男は人相の悪い、体中から『悪いことをしています』という臭いが可視化され、漂ってきそうなほど。

 さながら自分はスネに傷があるのだと鳴くキジのように、さもなくば背中に悪人ですという看板を背負ってさえいるように見える。とうぜんその男がノエルをうっぱらおうとしていた売人であるのだから、彼女にとっては諸悪(しょあく)の根源(こんげん)と言える。


 ノエルは一瞬、青年の後ろに隠れて助けを求めようと考えたが、未だにローパーの体液がしたたる刃物を手に持ち立ちすくんでいる姿を見ると、止めた。正直なところ彼女にとってどちらも危険度は変わらないという認識。青年の方がいささかマシではあるが。


「へへへ、さあ、早くこっちに戻ってくるんだ」


 体中にまとわるくつような粘性を持ったねばっこい視線を向け、先ほどのローパーのようなぐんにゃりとした厭(いや)らしく追いかける触手の如き動きで手を伸ばす男。


「待ちたまえ」

「ああ、なんだお前は? 英雄(ヒーロー)気取りの坊ちゃんか?」

「気取り、というのは面白くない言い方であるが、許そう。助けを求める者がいれば等しく手を差し伸べるのが紳士というものだ」

「なに言ってんのかわかんねーよ!」

「然(しか)るに、君は人買いなのだろう。だが、確か先日から非合法の奴隷売買に対して一斉検挙が続いていると記憶している。彼女を連れているところが見つかれば、面倒なことになるのは言わずもがな。おおかた適当に遊んで、この森で始末する算段だったのだろう。なに彼女一人程度手放すくらいならそう痛手にならないのだろう」

「…………ならどうする」


 男は腰の短刀に手を伸ばす。

 青年はふんっと鼻をならすと。


「ここに銀貨30枚ある。私が彼女を買い取ろう」

「はぁ!」


 声をあげたのは男の方ではなく、ノエル自身だった。

 あまりにも勝手に自分の進退が決められていく。自分自身で選択できることなど少ないのだが、思わず文句が飛び出てしまった。


「勝手に! わたしのことを! 決めないで下さい。決めるな。決めやがるな」

「そう悪い話ではないと思ったのだが。こう考えると良い。彼は仲介業者で、私は紹介料を払った。それだけのこと」

「この人を倒してくれるとか、そういうことじゃないんですか!」

「君は物騒だな。私は荒事が好きではない。弾みでなにが起こるか分からないからな」

「こんなの野放しにしていても毒にしかならないわ。男の人って、こう、女の子を颯爽(さっそう)と助けて、あら素敵、みたいな展開を望む願望があるんじゃないの!?」

「君は少々夢見がちであるな。だが、悪いことではない。胸を張ってよい」

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 やはり不条理だと、心の中で叫ぶノエルの。

 頭は半狂乱(はんきょうらん)気味に打ち振られ、地団駄を踏みならし、髪の毛をくしゃくしゃに掻き乱し、妙なうなり声を発したのであった。


 そんな彼女をなだめたのは、あろう事か斡旋業者の男で。


「まあまあ、俺は別にそれで構わない。どうせ二足三文にしかならないと思っていたからな。銀貨30枚貰えるならそれにこしたことはない」

「え、わたしって、そんなに価値がないの……」

「見てくれは良いが、一部足りない。俺の依頼人(クライアント)はその一部が大きい方が良いという方ばかりで、まあ、だから最後まで残っちまったんだがな」


 ノエルは衝撃の事実を聞かされがっくりと項垂(うなだ)れると、意気消沈(いきしょうちん)したように大人しくなってしまった。

 そのまま光を必要とせず、目の機能を失い、白く濁った深海魚のような目を彼等に向けると、ただぼんやりと遣り取りを眺める。

 心の中は不条理――を通り越して、もうどうにでもなれと自棄(やけ)になっている。


「へへへ、交渉成立――なわけないよなぁ!!」


 ぎらり、と、腰の短刀ではなく、袖(そで)に隠していた小刀を青年に向けて放った。

 ノエルが目を驚きに目を見開いた瞬間に、ひゅう、と風切りの音が聞こえると、どさり。

 宙に浮き上がり、背中から地面に叩きつけられる男の姿。投げ飛ばされたのだ。


「丸腰に見える男一人だ。始末出来れば金も手に入り、女も手に入る。そう来ると踏んでいた。出来れば荒事にはしたくなかったのだがな」

「えっ、もしかして殺したんですか?」

「いや、気を失っているだけだ。殺しはしない」

「ではどうするんですか。このまま放っておくんですか」

「そうだ。この辺りは魔物が多い。すぐに奴らの餌になるが、そこまで知ったことではない。彼は自ら私の手を振り払ったのだ」

「でも、殺さないって……」

「いかにも。殺せば食糧になる。食べねばならない」

「は?」


 ノエルは当たり前のように言い放つ言葉に、思考が一瞬どこかへ飛んでしまった。

 ――もしかして、食べると言ったのか。

 ――この人は、食べると言ったのか。

 反芻(はんすう)する一言はとても理解したくなかった。


「私の信条として、殺した生き物は食べねばならない。そう決めているのだ」

「まさか……人間を食べたことがあるんですか!?」

「食べたことはない。これからも食べるつもりはない――と、思う」


 ノエルは後方へと後ずさり。


「ま、まさかわたしを食べるつもりで買ったんじゃないんですか!? でも、自分で言うのも何ですが、やせっぽちで、食べるところなんてありませんよ!」

「ふむ、確かに肉付きはあまりよくなさそうだが、煮れば良い出汁が取れそうだぞ。そう自分を卑下(ひげ)するものではない。もっと誇って良いぞ」

「えっ、どうもありがとうございます――――いやいやいやいやいや、そんなこと誇れる生物はいないと思うんですけど!」

「そんなことよりも――だ。私は、腹が減った。もう、1秒たりとも我慢できそうもない」


 確かに青年の腹からぐぅと、小さく鳴る音が聞けた。

 餌をねだる小動物のような顔をする彼に、ノエルは毒気が抜けてしまい、まだまだ言いたいことはたくさんあったが、その気持ちは、穴の空いた風船のようにしぼんでしまった。


「でも、こんな森の中でご飯なんて……」


 ノエルは自分の身体を抱きしめるように後ずさり。

 やっぱりと思うと、きっと、青年を睨み付け、決して食べられてたまるかという鋼の意思を持って臨んだ。


「なにか勘違いしているようだが、君を食べるつもりはない。これに決まっているだろう。元々私はそれが目当てでこの森に入ったのだから」


 青年が指さしたのはローパーの死骸。


「まさか、ほんとうに、ほんとうにそれを食べるつもりなんですか?」

「当然だ。それよりも内蔵の処理をしたい。近くに川が流れていたはずだ。そこに行こう」

「もしかしなくても着いてこいってことですか?」

「当然だ。私の側にいることがもっとも安全である。来たくないというならば別だが……」

「行きます。行かせていただきます!」

「よろしい。私はエーミルだ」

「……ノエルです」

「良い名前だ。すぐにでも場所を変えたいところであるが、その前に君の足枷を外そう」


 青年――エーミルは気を失った男の懐をまさぐると、鍵を取り出した。

 男が手にした銀貨などには一切目も向けず。


「あの、銀貨は回収しないんですか?」

「あれはこの男にくれてやった物だ。すでに私の物ではない」


 ノエルはとても不思議な人だと思ったのだった。




「遠慮無く食べると良いぞ」

「えぇ……」


 目の前に出された物はローパーの香草焼きと、触手の串焼き。

 香草などと言ってよいのか、植物系の魔物からむしった物で、おおよそ8割りくらいは魔物産の食材が使われている。


 ローパーの肉は薄紫色をしていて、それが激しく食欲を減退(げんたい)させた。

 しかし漂ってくる匂いは香ばしく、食欲をそそらせるのだから質(たち)が悪い。

 嗅覚で食欲を刺激し、視覚で食欲を減退させる。なんという拷問なのだろうか。


「我々に食事をお与え下さり感謝いたします」

「か、感謝します」


 エーミルは祈りを捧げると――食べた。

 ――ああ、この人は本当に魔物を食べている。しかも美味しそうに。

 ノエルの胸中は複雑で、強大な大迷宮を目の前にしたが如く、一歩を踏み出すことがなかなか出来ないでいた。これが普通の料理ならためらわずに食べていたのだが。


「うぅぅぅ……!!」


 かなり大きな音で腹の虫が鳴ってしまう。

 それもそのはずで、彼女はここ数日まともな食事にありつけていなかった。

 餓えと渇きに浸(ひた)された自分の身体を満たす物が目の前にある。

 もともと選択肢の少ない彼女はようやく覚悟を決める。


「い、いただきます」


 薄紫色のそれを口へと運ぶと――がぶり。

 歯ごたえはやや弾力があり、今まで食べたどの肉とも違う不思議な食感。豚のような、牛のような、鳥のような、魚のような。どれにも似ているようで、どれとも違う。

 ノエルがもっとも驚いたのは、その肉汁。

 あのローパーの肉とは思えない脂の乗ったそれは、じわりと、滴るように広がった。

 歯ごたえはやや固めであったが、それが逆にこの肉の旨味を引き出しているような気さえ感じる。魔物の香草が更に良い強調(アクセント)になっているようで、舌が勝手に肉汁を吸収するようにうごめき、じゅるり、とはしたない音を立ててしまいそうであった。


 触手の串にも手を付けてみる。

 香草焼きとは違って、もっと単純で粗野な代物であったが、どこか適当な物を口に入れていた子ども時代を思い出し、郷愁じみた感情がせり上がってくるような、そんな味で。


 露天で並ぶ串のような、少しチープな味であるが、これで良い。いや、これが良い。

 食べる手が止まらないのは空腹だったからか、別の理由があるのか、額にしわを寄せながらがつがつと口に運ぶ。


 あのぐねぐねとうごめく触手とは思えないくらいに肉っぽい。いかにも肉という歯ごたえでゴム鞠のような感触を想像していた彼女をひどく困惑させた。


 非常に美味い。

 美味いのだが。


「なんか、納得が出来ない……」

「なかなか愉しんでいるようだな。今日の調理法は当りだったらしい」

「それはどういう意味ですか?」

「なに、以前水煮にしたらぶよぶよと三倍以上に膨らんでしまって、あまり向いていない調理方法だったらしく、その味は筆舌に尽くしがたいくらいに、不味かった……」


 エーミルがしみじみと頷く姿にノエルは思わず突っ込みを入れる。


「そんな不確かな物をわたしに食べさせるつもりだったんですか!?」

「そんなことはない。まずは自分で味わってから、大丈夫だと思ったからなにも言わなかったまでのことだ。そう怒るな」

「怒りますよ! わたしの、なんか感動のような、そうでもないような、このもどかしい気持ちが吹っ飛んでしまったじゃないですか!」

「実は、この麻痺袋もなんとかして食べられないかと苦慮(くりょ)しているのだが、試食してみないか?」

「やめてください。やめろ!」

「私は欲して止まない物がある。それは食であるが、少々特殊でね」

「でしょうね」

「魔物を食べることに喜びを感じるのだ」

「またどうして魔物なんて……」

「ふむ、人間を食べる魔物がいるのならば、魔物を食べる人間が居ても良いかと思ってね。食べて見れば以外と美味だということに気付いてね」

「そ、そんな理由なんですか……」

「然り」


 尊大で、自信たっぷりで、堂々としていて、そんなエーミルを呆れた目で見ていたが、同時にどこか羨ましくあった。


「さて、では行こうか」

「行くって、どこにですか?」

「君は私の所有物なのだろう。そして最も自由な存在だ。誇ってよいぞ」


 この尊大(そんだい)で不遜(ふそん)で不適(ふてき)な彼――エーミルとノエルの出会いであった。

ここまで読んで下さってありがとうございます。

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