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スマホでも読みやすいように編集しました。
午後3時、駅前にあるデパートの地下一階に僕たちは移動してきていた。平日だが多くの買い物客でにぎわっていた。
「本当に、こんな場所に村木さんがいるの? 」
小声で真理さんに訊く。
「ええ、それとニューヨークもね」
真理さんが言ったニューヨークとは、ニセ安岡を表す隠語だ。ニセ安岡をイニシャル化するとNYになったのでそう呼ぶことになったのだ。
ここに来る前に、真理さんが教えてくれた情報によると、ネット上にあの人形の写真が載っているものがないか調べたら、あるネット掲示板にそれがあったそうだ。個人的なメールアドレスも載っており、いかにも連絡してくれ的な雰囲気が漂っていたらしい。
おそらくニセ安岡はそこにメールして、白雪学園にあの人形があることを知らされたのだろう。その投稿者は須賀幸作という名前だったということだ。
「この須賀幸作という名前は、村木さんの偽名ね。男の名前でフルネームにした方が、本当は女だということを隠せるから」
それを教えてくれた時、「それと、彼女、美術部だから須賀幸作ね」と付け加えた。
ん? 須賀幸作… スガコウサク… あ、なるほど! 『美術』に近いネーミングだ。
「その須賀幸作の投稿が、昨日同じ掲示板に載っていたの。『イスミデパートの一階。人形。200万円』って。つまりニセ安岡に対するメッセージね」
「まさか村木さん、人形をニセ安岡に売りつけて儲ける気じゃなかとね」
「ター君、あんたバカみたいなこと言わないでね。そんなことを考えているのなら、もっと手っ取り早い方法が幾らでもあったでしょうよ。村木さんは、メールを送ってきた資産家殺しの犯人ではないかと思われる人物に、白雪学園に人形があることを教えた。あの人形の価値を知っている犯人ならば、白雪学園に来るはずだからね。そして犯人は白雪学園に忍び込んだ。どうやって手に入れたのかは分からないけど、安岡一朗という教師の身分になってね。そこで、村木さんは、彼が資産家老夫婦を殺害した犯人だと確信を得た。だから次の段階に進んだのよ」
「どういうことね? 」
「おそらく彼女は、何らかのきっかけで、資産家老夫婦殺害事件とあの人形の関係性に気がついた。そして怒りを感じたに違いないわ。そしてその犯人に接触しようとしている」
「じゃあ、村木さんは自分の手で犯人を捕まえようとしているってこと? 」
「捕まえる、そんな生やさしいものじゃないわ。彼女がやろうとしているのは私刑よ。捕まえるだけだったら彼女の通報で警察が動き出しているはずだわ。どういう動機か分からないけど、彼女は殺された老夫婦に代わって犯人に復讐しようとしている」
何故か、真理さんの眼が悲しそうに見えた。
『復讐』という言葉には魔物が住んでいると思う。ピーチさんの双子の弟の空さんも、恋人を殺されたことへの恨みから、凶悪犯全てに対しての憎悪を抱き、復讐という目的のために姿を隠している。彼も、元は聖技能学園のエスパー系サイコキネシスという最強の能力者だった人だ。そして、村木さんも能力検定試験受験可能リスト者に選ばれていたほどの人だ。能力者が自分の能力の使い方を間違えてしまうと悲しい事態を引き起こす場合がある。
僕たちは陰鬱な気分になりながら、イスミデパートにやってきたのだ。でも、デパートに着く頃には強く思っていた。村木さんがどんな復讐の方法を考えているのかは知らないけど、それは止めさせなければと。
僕たちは手分けして村木さんを捜すことにした。ニューヨーク=ニセ安岡=犯人の顔は僕たちは知らないので、村木さんを見つけ出すことが解決の糸口になる。しかし、村木さんはいくら探しても見つからない。
村木さんはどこに潜んでいるのだろう?
手に持っていたスマホに、ショートメールが届いたことを知らせる着信音がした。田畑君からだった。不審なニオイを出している人物がいたらしい。人が行き交う中で撹拌されてニオイが消えてしまったために全ての情報を読みとることが出来なかったらしいが、『人形』という単語を思い浮かべていた人物がいたのだそうだ。その人物の後をつけているということだった。
僕は田畑君の元へと急いだ。
イスミデパートの5階の子供服売り場とおもちゃ売り場が併設してあるフロアーに田畑君はいた。
僕は彼の近くに行くと、「ニューヨークはどこ? 」と小声で囁いた。
「あそこでキョロキョロしている人」
田畑君がアゴをしゃくった方を見ると、確かに辺りをキョロキョロ見回している不審な男の人がいた。
「近寄ってニオイを嗅ぐことはできない? 」
「それは勘弁してほしか。なんせ二人も殺害している凶悪犯かもしれんとばい。それより村木さんを見つけた方がよか。あの男がニューヨークなら、近くに村木さんがいるはずだから」
「そうだね」
僕は肯くと、田畑君と一緒に村木さんを探し始めた。しかし、いくら探してもそのフロアーに村木さんの姿は見当たらなかった。
「おかしいなあ。村木さんどこに隠れているんだろう」
僕が呟いたと同時に、僕が手に持っているスマホに着信音がした。メールじゃなくて電話がかかってきていた。真理さんからだった。僕は慌てて応答のボタンをスライドした。
「あなたたち、今どこ? 」
囁くような声だ。
「今、5階。ニューヨークらしき人を見つけた」
「ちょっと待って。その人は違うはずよ。ニューヨークはこっちにいる」
「だって、田畑君がその人が人形のことを思っていたって」
「それはター君の思い違い。ター君にその人に近づいてニオイを嗅ぐように言って」
「え、でも凶悪犯だよ。近付くのは危険じゃない」
「大丈夫! 」
力強い大丈夫だった。僕は真理さんが言ったことを田畑君に伝えた。
「真理っぺが言うとなら」
そう言い残すと、田畑君は僕たちがニューヨークと思った人の方に近付いて行った。
その人は相変わらず辺りをキョロキョロしていて不審なことこの上ない。
田畑君はさり気なくその人に近付き、しばらく側にいた後、がっくりと肩を落としてこちらに戻ってきた。
どうしたんだろう、田畑君?
「シュン君、ごめん。わが輩の早とちりだった」
田畑君がすまなそうに言った。
「どういうこと? 」
「あの男の人、普通のサラリーマンやった。娘の誕生日祝いにプレゼントを買いに来てた」
「じゃあ、人形って思ったのは」
「プレゼントに何を贈ろうか考えとったみたいだ。人形と思ったのも、その選択肢の一つだったのかもしれん。そしてここに来てもまだ迷っていて、色々なオモチャの中から何にするか決めきれとらん。だからキョロキョロしとった」
そうか! ここの5階は子供服とおもちゃ売り場だった。人形と思う人がいても当然だ。
「真理さんの所に行こう。ニューヨークらしい人を見つけたって」
僕は気落ちしている田畑君に向かって力強く言った。
「うん、分かった」
田畑君も力強く肯き、僕たちは真理さんのいる所へ向かった。
真理さんがいる場所はイスミデパートの近くにある公園だった。真ん中に噴水があって、樹木も多く植えられ、所々にしゃれたベンチが置いてある公園は、天気が良い日ならくつろぐ人も多いのだろうが、曇り空で少し寒いせいか公園内にほとんど人はいなかった。公園の端に立っていた真理さんをすぐに見つけることができた。真理さんはゴスロリの格好をしているので見つけるのは容易い。僕と田畑君はゆっくりと真理さんに近付いた。焦ったらニューヨークに悟られるかもしれないからだ。
「どの人がニューヨーク? 」
僕が尋ねると、真理さんが「噴水の近くのベンチに座っている人」と小声で言ってから、「あからさまに見ないでね。気付かれてしまうから」と付け加えた。
僕と田畑君は何気ない風を装いながら、その人の方を見た。
その人は普通の中年のおじさんにしか見えなかった。スーツの胸ポケットに赤いハンカチがのぞいている。
「なぜ、あの人がニューヨークだと分かったの? 」
「もう気付いたと思うけど、胸ポケットの赤いハンカチよ。あれが目印」
「でも、どうしてそれが目印になるとかいな? 」
田畑君が首をひねる。
「イスミデパートの一階にある伝言板に書いてあったの。『人形の人へ。公園で待つ。赤いハンカチ』って」
「それって村木さんが書いたのかな? 」
「書いたのはニセ安岡の方よ。デパートの中はまずいと思ったのでしょうね。人も多いし、監視カメラもあるから」
「真理っぺ、いや真理さんは、あの人が伝言板に書くところを見とったのか? 」
田畑君が訊くと、真理さんがチッチッチッと左手の人差し指を伸ばして左右に振った。
「ニセ安岡ならこうするだろうと推察したのよ。案の定、伝言板にさっきの文が書いてあったわ」
「なるほどね。じゃあ、ここでニューヨークを見張っていれば村木さんが現れるってこと? 」
「多分ね。その確率は98パーセント。でも、彼女が普通に現れるとは限らない。できるだけリスクを負わないようにするだろうから。村木さんがあの男に接触したら、あの男がニセ安岡と断定できる。その時には、すぐに警察へ通報するわ」
その後、僕たちは近くのベンチに座り、話をするふりをしながらニューヨーク、つまりニセ安岡を監視した。
しかし、30分待っても村木さんは現れなかった。
「どうしたんだろう。現れないね」
僕がしびれをきらして言った時、真理さんが「しっ」と唇に人差し指を当てた。
「来たわよ」
僕はニセ安岡の方に向き直った。
でも、村木さんはいない。ニセ安岡の方に歩いて近付いているのは、黒い手提げバッグを持ったサラリーマン風の男の人だ。
「どこに村木さんがいるのさ? 」
僕が訊くと、「あのサラリーマン。あれは村木さんの変装した姿のはずよ」
僕は思わず、「ええっ! 」と小さく叫んでしまった。
「しっ! 」
真理さんが、僕を睨みつけた。
「わが輩も、どう見ても男の人にしか見えんけど」
田畑君も僕の思いに同調したのか、そう言った。
「ボクたち、シャーロック系の能力者は、卓越した推理力や洞察力だけでなくて、何かしらの付加能力も持っていることが多いのよ。ボクの場合は指先が器用なことね。で、彼女の場合は変装することだと思うわ。ボクたちもニセ安岡の近くまで行くわよ。どんな不測の事態が起こるか分からないからね」
「うん、分かった! 」
僕と田畑君は肯き、3人でニセ安岡の方へ歩き始めた。
多分、村木さんが変装していると思われるサラリーマンは、もうニセ安岡に接近していた。
彼の口の動きから、何かをニセ安岡に言っているのが見て取れた。でも、僕たちとの距離はまだあるので、何を言っているのかは分からない。
真理さんがスマホを取り出した。いざという時に警察に通報するためだ。
サラリーマンがニセ安岡に持っていたバッグを渡した。ニセ安岡はバッグを開け、中身を確認しているようだった。そして、バッグを閉めると、内ポケットから何かを取り出した。茶色い封筒のように見えた。それをサラリーマンに渡した。封筒の中身をサラリーマンが確認した後、サラリーマンがニセ安岡に何かを言った。その途端、ニセ安岡が「ふざけるなよ、てめえ」と吠えのが聞こえた。ニセ安岡がポケットから何かを取り出すのが見えた。飛び出しナイフだ。
いけない!
とっさに僕は村木さんであろうサラリーマンを助けるために駈けた。
周りの音が聞こえなくなる。僕が高速で動けている証だ。実際、ニセ安岡の右手に持ったナイフがスローモーションのように動いているのが見える。そのナイフはサラリーマンの腹部を狙って動いていた。
助けられる
そう思ったが、無情にも僕がそこにたどり着くまでにナイフの切っ先はサラリーマンの腹部に達していた。
ゆっくりとナイフがサラリーマンの腹部にめり込んでいくのが見えた。
「村木さん! 」
叫んだ途端に、周りの音が戻ってきた。
僕の目の前で、サラリーマンがガクッと崩れ落ちた。僕は慌てて身体を支えた。ナイフが突き刺さったままの腹部から赤い血がにじみ出して、ワイシャツを赤く染めている。
ニセ安岡が、彼にしてみれば急に現れた僕に一瞬たじろいだが、バッグを持って逃げ出した。
「シュン君、追って」
真理さんが、僕に向かって叫んだが、村木さんを放って行くことなんか出来ない。
僕たちの横をニセ安岡を追って田畑君が走り抜けていった。
「村木さん、大丈夫ですか! 」
僕は苦しそうな表情を浮かべている、どう見ても村木さんには見えないサラリーマンの人に向かって言った。
「わ、私の、しょ、正体がな、なぜ、分かったの…」
苦しそうな息づかいの中で、村木さんが言った。その声は、以前聞いたことのある村木さんの声だった。
「しゃべらないで下さい。今、救急車を呼びますから」
僕は、駆けつけてきた真理さんに向かって「救急車を、早く」と叫んだ。
しかし、真理さんは、村木さんを見るなり「チッ」と小さく舌打ちした。
ええっ! なんで? なんで舌打ち?
それに手に持っていたスマホをしまおうとしている。
「真理さん、救急車。村木さん、刺されているんだから。急いで」
僕は、真理さんに向かって、半分怒鳴るように言った。
「救急車なんて呼ぶ必要ないわよ。その血、偽物だから」
冷ややかな声で真理さんが言った。
えっ! ええっ?
「村木さん、ボクを甘く見ないでね。その血が血のりだということは、一目見ただけで分かったわ」
僕に支えられていた村木さんがムクッと起きあがった。
「さすがね。さすがにシャーロック系の能力者だわ。私の演技をすぐに見破るなんて」
村木さんは、そう言うと首の付け根の所からペリペリペリと、顔を覆っていた変装の皮膜を剥いだ。皮膜の下からは、村木さんの綺麗な顔が現れた。
「サラリーマンの変装や、そのシャツの下に着込んでいるはずの防刃ベスト。そして血のりまで。あなたは、ボクたちがここに来ることを予想して用意をしたのね。全ては犯人を逃がすために」
村木さんが、フッと笑ったような気がした。
「そこまで分かっているのなら教えてあげるわ。あなたが言った通りよ。私は、あいつを逃がすために、私を刺すように仕向けた。『俺は、お前の正体を知っている、これからもよろしく頼むぜ』と言ってね。案の定、不安感に激怒したあいつは凶器を取り出してきた」
「なぜ、犯人を逃がす必要が」
真理さんはそこまで言ってから、ハッとしたように村木さんを見た。
「あなた、人形に何かしたわね」
「フッ、ご明察よ」
村木さんが、今度は確実に口角を上げた。
「シュン君、行くわよ。早くニセ安岡を捜し出さないと大変なことになる」
真理さんが、ニセ安岡が逃げた方へ走り出した。僕も慌てて後に続く。
「村木さんが、人形にしたことって、発信器か何かを取り付けたってこと? 」
横に並んで走りながら訊いた。
「違う! そんな生やさしいものじゃない。ニセ安岡に制裁を加えるための何かよ。でも、そんなことをしたら、彼女も犯罪者になってしまう。ニセ安岡に危害が及ばないうちに探し出さないと」
ニセ安岡が逃げた方向は、大通りから外れていく道だった。人通りもほとんどない。先に追っていった田畑君も見当たらなかった。
田畑君、大丈夫だろうか…
僕が不安になりながら走り続けていると、百メートルほど走った時に、向こうから走ってくる田畑君を見つけた。
「ごめん、逃げられた! 」
田畑君は僕たちに気付くと声を張り上げた。
田畑君と合流すると、真理さんが「逃げられてしまったのは仕方ないけど、何か手がかりになるようなことはなかった? 」と訊いてきた。
「うん。追いかけている途中に、ニセ安岡のニオイが残っていた。だいぶニオイが薄くなっていたから断片的な情報しか読みとれんやったけど、駅前の景色とその近くにあるビジネスホテルの看板が見えた」
「ニセ安岡は、こっちで活動している間、そのビジネスホテルを根城にしていたのね。彼はそこに戻るつもりなんだわ。ター君、そのビジネスホテルの名前は? 」
「ビジネスホテル蒼」
真理さんが、ミニショルダーからスマホを取り出した。スマホの画面上で華麗に真理さんの指が動く。すぐに真理さんが顔を上げた。
「分かったわ。ここから電車で40分の所、K駅の近くよ。行くわよ」
「行こう! 」
僕たちは駅に向かって走った。
K駅の道を挟んですぐの所にある『ビジネスホテル蒼』はすぐに見つかった。しかし、そのホテルの前には、赤色灯を点けたパトカーと救急車が止まっていた。野次馬も大勢いて、ホテルの中を興味深げにのぞき込んでいる。
「ター君、何があったのか分かっている人いない? 」
真理さんが言うと、田畑君がその野次馬の中に分け入っていった。
しばらくして戻ってきた田畑君は深刻そうな顔つきになっていた。
「ホテルの部屋で爆発騒ぎがあったらしい。今、警察官と救急隊員がホテルの中にいる」
田畑君が、野次馬の中の誰かからニオイで得た情報を教えてくれた。
「遅かったか……」
真理さんが呟いた。
人形の中に仕掛けられていた爆発物が、爆発したい違いない。おそらく、人形の瞳に使われているイエローダイヤモンドを取り外そうとすると爆発するようになっていたんだろう。そして、その犠牲になったのはニセ安岡だろう。せめて、ニセ安岡が軽い怪我程度で済んでいることを願いたい。でないと、村木さんの罪が重くなる。
真理さんがイヤホンを着けスマホを操作し始めた。
「何してるの? 」
「大きな声では言えない。警察無線にアクセスしている」
囁くように教えてくれた。って、またハッキングしている。
「分かったわ。爆発騒ぎがあった部屋の中に血痕はあったみたいだけど、誰もいなかったようだわ。ニセ安岡は逃げたのね」
「つまり、ニセ安岡は怪我はしたかもしれんけど、命に別状はなかったとやね」
「そういうことになるわ。悪運が強い男ね。もっとも、村木さんが他の人にも危害が及ぶのを心配して火薬の量を少なくしてたんでしょうけど」
「ニセ安岡は、どこに逃げたんだろう? 」
「どこに逃げたのかは分からないけど、ニセ安岡を捜し出すための細い糸はつながっている。イエローダイヤモンドを手に入れた彼が、次にやることは宝石を換金することよ。宝石をお金に換えないと意味ないからね」
「あ、そうか。ニセ安岡は、どこかの宝石商にイエローダイヤモンドを売りに行くんだ」
「そう、それもイエローダイヤモンドの価値を分かってて、高額で買い取ってくれる宝石商じゃないと彼の目的は達せられない。だから、宝石商といっても限られてくるわ」
さすが、真理さんだ。素晴らしい推理だ。でも、そんな僕の尊敬のまなざしに気付いたのか真理さんが言った。
「ボクが考えたことは、村木さんも考えつく。彼女もシャーロック系だから。そして、ニセ安岡が無事だったことを知った彼女は、また彼に対して罠を仕掛けるはず。その前にボクたちがニセ安岡を見つけ出さないと」
確かにそうだ。僕は真理さんに向かって力強く肯いた。