ノオオオオウ!目が!目があああ!
定期投稿第一歩です。今週はショタのターンですね!
来週は大根ですよ!
「僕、勇者になります」
「ほう?いい表情になったじゃないか」
翌朝僕はクレイヴさんのところに行った。そして、勇者になると宣言した。
「勇者になるというならまずは説明だ。おい小僧ついてこい」
そう言うとクレイヴさんはスタスタと歩いて行った。しかし僕はその場を動かなかった。クレイヴさんが怪訝な顔でこっちを見てこう言った。
「おい、どうした小僧ついてこい」
「僕は小僧じゃありません」
「なに?ならばなんだというんだ、勇者か?だとしたら笑わせるなよ」
「僕には佐藤涼真というちゃんとした名前があります」
はっきりと言った。僕は後悔していない。
クレイヴさんは一瞬ぽかんとした表情になると笑い始めた。大爆笑だ。
「あっはっはっは!いいね!面白いじゃないか!しかし…お前のような半端者は小僧で十分だ。私に名前で呼んで欲しければ……強くなってみせろ」
「わかりました、絶対にあなたに名前で呼ばせてみせます」
こうして僕は異世界の武神に宣戦布告をしたのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「それでは説明を開始する!」
宣戦布告の後僕はクレイヴさんに連れられて、クレイヴさんの私室ーー《英霊の館》にいた。
なんでもこの館は戦死した英雄たちの魂が訪れるという場所らしい本人曰く『いつもいつも騒がしいだけだ』と言っていたけど…アレだよね、この場所って元の世界で言うところのいわゆる北欧神話のヴァルハラってところだよね?確か前に兄貴がそんなこと言ってた気がする。
そんなことは置いといて、クレイヴさんの説明は昨日聞けなかった部分の補足説明と言った感じだった。
まとめると、
1.因子の鍵を開けるのは簡単だがいきなり全開にすると魂が破損するため反対された。
(クレイヴさん曰くその程度根性でなんとかなるらしいが、間違いなくこの人だけなので参考にはならない)
2.年齢はこの狭間の世界にいる限り停止しているということ。
3.これから行く世界は、剣と魔法の世界でレベルなどもあるらしい。簡単に言うとリセット・セーブ・ロードのできないRPGのようなもの。
「さて、最後になるが小僧、お前の能力についてだ」
確かにこれは重要である。兄貴に借りていたライトノベルなんかでも主人公はすごい能力で戦っていたし、僕にもそんな能力があってもいいかもしれない。
「お前の勇者因子ズバリそれは…【万能者】!まあ、簡単に言えば万能型だな」
「万能者?それってどういう…」
「まあ聞け、万能者は名前の通りステータスも全て万能に上昇する。悪い言い方をすれば…平均的に上がる」
「え、それって弱くないですか?」
平均的にって普通に負けそうじゃん。
「だから聞けと言ってるだろう。誰が、弱いと決めつけた、確かにそのままだと大して役に立たないだろうな」
「だ、だったら意味ないんじゃ…!」
「ちっちっち、それが違うんだなこれが」
クレイヴさんは人差し指を僕の唇に当ててそう言った。不意に爽やかな柑橘系の香りがして不覚にもドキッとした。うう…小学生には刺激が強かとです…
僕が顔を真っ赤にしているとそれにクレイヴさんが気がついたようでニヤッとして言った。
「おいおい、小僧まさか照れてるのか?ふむふむ、なるほどミランダ達が可愛がるわけだ。だが、私はあいつらみたいに甘くないぞ?」
「そ、そんなことどうだっていいでしょ!早く説明してください!」
「クックック、まあいいか。それなら続けるぞ」
そして、説明によってわかった僕の能力は『どんな技能でも覚えることができる』というものだった。しかし、教えてくれる人の強さくらいにしかならないとのことだった。
「これ師匠探しから始めなきゃならないんですか…?」
「なにを言っている、お前の師匠は目の前にいるだろう」
「え?なにを言って…」
「察しが悪いやつだなお前も、私が…いや、私達師匠になってやると言っているんだ。お前の能力は師匠に依存する、考えてもみろ私達は神だぞ?下界の者達なんて足元にも及ばんよ」
ーー私達と同等の力を手に入れられるぞ?
クレイヴさんは悪戯っ子のような笑顔を僕に向けると懐から1つの結晶を取り出した。鎧のどこにあんなものを入れていたんだろう。
鎧の収納スペースについて考えていた僕の目の前にクレイヴさんは結晶を差し出すと急に真面目な表情になった。
「さて、これは【聖剣】だ」
聖剣?でもこれどう見ても結晶なんですけど。
「あの、これって結晶じゃないですか?とても剣には見えないんですが…」
「ん?ああ、これはまだ説明してなかったな。聖剣と言っても別に剣と限ったわけではないのだ」
「どういうことなんですか?」
「聖剣は勇者の心に左右される。まあ、お前次第ということだ。過去の勇者にはパワードスーツ?とかいうものを使ってるやつもいたな」
そんなSFみたいな聖剣を使った勇者もいたんだな…
僕がそんなことを考えていると聖剣が青白い光を放出する。きれいな光景に目を奪われていると唐突に光が強くなる。
「ノオオオオウ!目が!目があああ!」
こういうのって直前に目をつぶって「うわっ」ってなるもんじゃないの!?なんで普通に目にダメージくらうんだよ!
「何をやってるんだお前は…」
僕が目を押さえて悶えているとクレイヴさんが呆れたような声で僕にそう言った。
「そんなことよりあまりそちらに転がらない方がいいぞ」
「え?何言って…ふぉあ!?」
ようやく回復した視力で最初に見えた者は僕の顔の前にあった薄い青色の刃だった。
「な、なんですかこれ!」
「聖剣だよ。それにしても驚きすぎじゃないか?」
慌てて飛び退いた僕を見て笑いをこらえながらクレイヴさんは答えた。
く、くそう、恥ずかしい…
恥ずかしさに耐えながら立ち上がり聖剣を引き抜いてみる。
聖剣は全体的に蒼みがかかっているが、ラピスラズリのような宝石というより蒼みがかかったクリスタルのような淡い蒼だった。剣の向こうのクレイヴさんが透けて見えるほどに剣身は薄く、一見ペラペラのようだが中々頑丈なようだ、そしてなによりーー
「軽い…」
そう、とても軽い。それはもう羽のようにとは言わないまでもプラスチックのおもちゃの剣くらいの軽さしかない。
ちょっぴりワクワクしながら剣を見ているとクレイヴさんが剣を取り上げた。
…何するんだろうお前のものは俺のものってやつですか?いや、クレイヴさんは女性だから私のもの、かな?
「…小僧、お前失礼なこと考えているな?」
「…ノーコメントで」
なんでわかったんだろう、女性の勘とかいうやつだろうか。そう言えば、同じクラスの火野さんも勘がよかったな…
クラスメイトのことを思い出すとなんとなく寂しくなり涙が溢れてきた。
「うおっ!小僧!な、泣くな!聖剣を取ったのは鑑定のためだから!泣くなって!」
「ち、違いますから!……泣いたのは別の理由です。ところで鑑定とは?」
「そ、そうか。それならいいんだが…ああ、それと鑑定の結果この聖剣の名前は【透剣クリスティヴァーノ】。見た目通りの名前だな」
「クリスティヴァーノ…」
クレイヴさんからクリスティヴァーノを受け取り透かして見てみる。
…とても綺麗だ
あまりの美しさに見とれているとクレイヴさんがクリスティヴァーノの説明をしてくれた。
「まずその剣だが、お前にしか扱えない。よかったな、お前の固有装備だ」
「固有装備…ですか?」
「そうだ、下界には過去の勇者の遺物として聖剣が数本存在する」
なるほど、過去の勇者の武器か…敵になったら厄介そうだな。さすがにパワードスーツは出てこないだろうけど。
「ちなみに今のところ脅威になり得るのは3代目勇者の【イージスの盾】5代目勇者の【全合金魔導武器】9代目勇者の【異界魔導譚】くらいかな。まあ、少ないし大丈夫だろ」
「多いです!」
更に脅威にならないまでも伝説の武器はまだ沢山あるはずなので多い、物凄く多い。
固有装備というのは僕以外の人間がこの剣を扱うことができないということらしい。さらに、奪われても戻ってくるというのだから驚きだ。武器屋に何度も売ってお金稼げるじゃん。やらないけど。
「そして、主な能力が【絶断】。つまり、どんなものでも斬ることができるというわけだな。あと、ついでにその剣は珍しいことにレベル制だ」
レベル制。クレイヴさんの説明によるとそれは、剣自体にもレベルの概念があり。レベルを上げることによって剣を装備した時に身体能力の上昇などの恩恵を受けることができるという。その昔パワードスーツの勇者の聖剣もレベル制だったとクレイヴさんは言っていた。
「あとは…まあ、すべての聖剣に共通して備わっている能力だが【不朽】というものだ。まあ、要するに折れず、欠けず、曲がらず、消滅しない、不滅の剣ということだ」
さて、ほかに質問があるか?
とクレイヴさんが続ける。
「いえ、ありません」
「よし、それでは修行開始だな。まあ、死ぬことはないと思うが頑張れよ?」
そう言ってクレイヴさんはニヤリと獰猛な笑顔を浮かべた。
(あー、勇者になるなんて言わなきゃよかったな…)
軽く現実逃避する僕であった。