表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

狐と人は出会った。

ーハァッ…ハァッ…ハァッ…‼︎ー


人気の無い森の中。

肩を抑え必死に走る黒い服を着た1人の少女が。


ー探せ‼︎裏切り者を探せ‼︎あの怪我だ、そう遠くないぞ‼︎ー


遠くから怒号が聞こえる。

その声に返事するかの形で聞こえた遠吠えも。

恐らく、このままでは少女は捕まるだろう。

否、捕まるならまだ良い。その場で処刑される可能性の方が高い。


「…にげ…なきゃ…っ‼︎…私が…死ぬ訳には…っ‼︎」


息を切らしながら歩を進める少女。

近づく足音を聞き木陰に身を隠しながら必死に逃げる。

その手には何かが入った頭陀袋がある。恐らく彼女にとって命に代えても守らなければならないのであろう。


ーまだ見つけられないのか‼︎匂いを追え‼︎貴様らそれでも狐か⁈ー


再び怒号が響く。そしてそれに応える遠吠えも。

それを聞いて表情を強張らせた少女は先程とは一転して必死に駆け出す。

肩を抑えながら。頭陀袋を抱えながら。


「グルル…ッ‼︎」


「…⁈ しまっーキャァッ‼︎」


いつの間にか追い付かれていた。

突然の衝撃にバランスを崩した少女は、頭陀袋を抱えながら地面に倒され、その身を泥だらけにする。

衝撃の正体は狐である。それも、大型犬と同じ大きさの白狐だ。

倒れた少女を見下す双眸は力強く、今にも嚙み砕きそうな勢いの歯をチラつかせながら白狐は口を開く。


「…クロナ。悪い事は言わねぇ。その袋を渡してお前は領主の嫁になれ。」


「…断ります…これは、お祖父様の…我が一族のお宝です‼︎」


「グゥッー⁈クロナ貴様ァァァァ‼︎」


人語を話す白狐は、クロナと呼ばれた少女の腰辺りから現れた黒い尻尾に弾かれ、その身を近くの大木へと打ち付けられた。

再び走り出したクロナ。そしてそれを追いながら仲間に知らせる白狐。


ーテメェラ‼︎こっちだ‼︎クロナを見つけた‼︎秘宝も一緒だ‼︎ー


その声を聞きつけ周囲を走る足音が増える。

正に絶体絶命。それでもクロナは走り続けー


「行き止まり…‼︎」


「あぁ、この先は崖だ。それもただの崖じゃねぇ。下を見な‼︎」


追い付いた白狐とその仲間達に逃げ場を失われ、ジリジリと追い込まれるクロナ。言われるがまま背後を見ればそこはー


「…人間…‼︎」


「そうだ…人間の世界だ。落ちれば2度とこの世界には戻れねぇ。良いのか?」


ニヤニヤとその狐顔を歪める白狐は、一歩、また一歩とクロナとの距離を詰める。


「それに我らが守ってきた人間界への不可侵の契りは忘れてねぇよなぁ?クロナ、お前が降りればお前を殺す為に狐だけじゃねぇ。色んな妖怪が動くんだぜ?」


脅迫の如く鼻先を向ける白狐。その言葉に息を飲むクロナは、数歩分しかない後退をしつつ白狐を睨みつけ


「それでも…一族の誇りを棄て蔑ろに生きるよりはマシです…‼︎それならば…人間界に降りた方が…私は幸せだ‼︎」


「メスガキが一端な口をーヤレェェェッ‼︎」


白狐の号令で周囲の狐達は一斉に飛びかかる。だが、それを見てクロナは目に涙を浮かべながら崖から降りー


「ほ、本当に降りやがった…‼︎」


「何見てんだ‼︎早く追え‼︎」


「し、しかしー」


頭上で響くかつての仲間達の喧騒を耳に、クロナは人間界に降りたった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ