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満月の夜 2  作者: 桐生初
26/30

霞の企み…

本庁に全員が戻ると、頼んでいた調査が大体出揃っていた。

先ず、原田の報告。


「ダーリン、残念ながら、この人達は、LINEだのメールだのでやりとりしてないわよ。

してる人でも、相手は他校の友達の先生とか、学生時代の友人関係、親兄弟などなどで、職場関係は一切無し。

因みに駒田とかいう馬鹿先生のメール、LINEは女口説いてるのばっかで、生徒とは無し。

あ、この駒田ってのも、他の教員とLINE、SNS、メールなどはしてません。なんか決まりでもあんのかという位だね。」


「今時LINEやメールしてねえの?なんだそりゃ。」


「さあ。私にしてみたら化石だわね。全部電話なんじゃないの?流石に電話は盗聴しても証拠で使えないんでしょ?」


甘粕が太宰を見た。


「そうだな。まぁ、学校で会うからなのかもしれんが、校長の年齢を考えると、電話の方が早い、電子機器は苦手って世代かもな。校長に合わせてんのかも。」


「という事は、校長に全て服従な訳ですね。その仲間間でも、教員間でもやっていないという事は。」


霞が言うと、全員頷いた。


「それと、例の注射針、ビニールフィルム、接着剤、赤いペンキなどの、犯行に使われたと思われる物の購入だけど、ペンキとかのホームセンター系で買える物品は全部、コンピューター上で調べられる購入履歴は無いね。カード使ってないってて事。但し、注射針だけは、理科教員、安部って人がジャングルって大手通販サイトで買ってるよ。注射器も。」


安部友枝は35歳。

高校で化学の教員をしており、怪しげな会合が度々目撃された理科室は、別名化学室で、彼女の管理下にある。

零の母が言っていた、けばけばしい教員の1人でもある。


「その親戚関係や友人関係との通信で、怪しい点は無いか?後そうだな…。ジャングルって、元はネット書店だろ?怪しい本とか。」


太宰が聞くと、原田は直ぐに答えた。


「理科の教材で使うんだろうなって感じの物だけね。

尚、転校した生徒だけども。

全員、公立高校の編入や、通信制の学校に転校してまーす。私立だったのになんでとちょっと不思議に思ったので、調べて見たところ、全員にヨハネ側から素行の悪い生徒だって、ブラックリストみたくして、関東近県の私立にお達しが行っていて、どこも受け入れてくれなかったようです。」


「それじゃあ、逆に、相当恨まれてんのは、学校の方なんじゃ無いのか?」


「そんな感じですねえ。編入試験の時に、『どこの私立当たっても受け入れて貰えませんよ。』って、はっきり言われたって人も居たって、芥川君が言ってたよ。」


「芥川、当たってくれてんのか。」


「はい。隣で。」


「じゃ、芥川に代わって。」


芥川が電話に出た。


「ありがとな、助かるよ。」


「いや、原田さんが調べてくれた人に電話かけてただけなんすけど、ヨハネ側からブラックリストが来てるからって言われたって人が居ました。凄え恨んでるみたいで、親子共々、おっかなかったっす。」


「でも、虐めなんかやってたからだろ?そりゃ、ヨハネ側もやり過ぎだとは思うが、事実無根なら兎も角、お門違いなんじゃないのか。」


「俺もそう思いました。だから、虐めは事実無根なんですかって聞いたら、切られちゃって。まあ、性根が腐ってんすね、親子共々。」


「成る程。ちょっと当たってみようか。原田、リスト送ってくれ。」


「はーい。」


折良く、桜の木の下の鑑識を終えた幸田がやって来た。


「凄え数。ざっと数えただけで400羽はあんじゃねえかなって鶏の白骨…死体っつーのかな。流石に気味が悪かったぜ。」


「そらそうだな…。そんなにか…。それどこから調達してんのかな…。そっちも調べねえとだな…。幸田、鶏の死体から産地なんて分かんねえよな?」


「そこまではちょっとなあ…。まあ、考えてみるよ。死因は柊木が渋々調べてるよ。そろそろ来るんじゃねえ?」


「ん。そんで、他に何か出たか。」


「1つだけ。1番新しい鶏数羽に同じ繊維が付着してた。黒いサテンの布地の繊維で、コゴミ化繊工業ってところの製品だ。ま、裏地のいい奴って感じの分厚いツルツルした生地な。これもどこの布地屋でも売ってる。」


「店で売ってるもんだから、カードでは買ってなさそうだな。この辺りの布地屋を一課の方で当たって貰おう。」


幸田と入れ違いに柊木が見るからにつまらなそうな顔で来た。


「あったく、なんなんだよ、鶏の死体の検視なんてよお。」


「ごめんな。そんでどうだった?」


「首の骨ボキッと折って、そこから血をザバーっと抜いてってそんだけだあ!面白くもなんともねえ!」


「まあまあ、落ち着いて…。ところで柊木。」


「あんだ。」


「人間の方のガイシャだが、縛られてたのも、そう大した強さでもねえ。薬盛られたわけでもねえ。なのに、死ぬまでじっと血を抜かれてた。

医者として、その理由で考え付く事は無え?」


「うーん…。仏さんの医療記録を見たが、元々貧血の低血圧だったようだ。

もしかしたら、ある程度抜かれた段階で、貧血症状起こして気絶したまんま死んだのかも。」


「なるほどな。」


「学校の先生なら、当然彼女の病状は知ってたんじゃないですか。」


霞が言った。


「そうだね。んじゃ、派手派手の先生を1人づつ事情聴取。それと、転校した生徒に直に会って話聞くと。で、いいかな。霞ちゃん。」


「はい。今回の事件は、プロファイリングが役に立たないというか、なんというかなので、課長にお任せします。

でも…。犯人は学校関係者なんでしょうか。このままでは、ヨハネ学園は経営危機に陥るのでは?

併設の小学校は校長も違い、無関係とはいえ、同じ経営ですから、煽りは食うでしょうし、相当な被害になるのではないかと考えると、学校関係者が犯人というのは、少々考えにくい気もするのですが…。」


「確かに、俺もそこは引っかかってるんだよな…。校長と派手派手先生達は極めて怪しい。毎週金曜の夜中に学校で黒魔術みてえな事やってて、鶏殺害してたとも思うし、噂通り、虐めっ子達をその黒魔術だか悪魔教だかに引き入れてたんだとしたら、ガイシャが血を抜かせたのも、顔見知りというだけでなく、説明がつく。

だけど、確かに、学校経営って考えると、損失が大き過ぎる。しかも、死体を学校に置いたりしたら、それだけでも良くねえ噂は立って、学校にとっちゃあ、酷えマイナスだ。」


すると、ずっと発言の無い夏目が突然言った。


「ヨハネなんて潰れちまえばいいんですよ。小学校も全部。」


「どうしたんだ、夏目…。」


実は太宰達も気にはなっていた。

いくらドロドロとした女の世界ばかりで、夏目が閉口しているにしても、一応仕事である。

夏目はどんな嫌な事でも、仕事である以上、それを放棄したりしない。

見かけの強烈さとは裏腹に、かなり真面目な男のはずだ。

しかし、今回はただこなしているだけに見えるし、それは投げやりにすら見えた。


「夏目。なんかあるなら言ってご覧。ヨハネと何かあったのか。」


夏目は少し悩んだ後、頭を下げた。


「申し訳ありません。私情を挟みました。」


「人間だから、そういう時もある。でも、今回のお前を見てると、その私情が捜査に多少なりとも支障をもたらしてる。支障が出ている以上、俺は知っておかねばならんし、それを踏まえて、考慮しなけりゃならん事も出て来る。言いなさい。この場限りにしておくから。」


夏目は少し考えた後、話し始めた。


「すみません。正確には俺の事ではありません。

美雨が通っていたのが、ヨハネの小学校だったんですが、そこで酷い扱いを受けました。狭心症で無理が出来ない事を迷惑だと言われたり、逆に、特別扱いされているなどと陰口を叩かれたりしたので、課外活動の一切、辞退していたんだそうです。

それをやった生徒達には復讐は出来たそうですが、その事を教師達は知っていながら、美雨の病気に関して、子供達に理解させようとか、美雨に優しくしようとかいう指導は一切せず、課外活動の辞退もほっとしていたようだったそうです。

キリスト教の教えにのっとって、友愛の精神だの、思いやりの精神だとかを学ばせるとか、綺麗事ばっか並べ立てて、実際には、自分ではどうしようもない病気を抱えている子供を守って、仲良く出来るようにという事もしなかった。

美雨も言っていましたが、後から思うと、先生方も他の生徒や親の顔色ばかり伺って、ろくなもんじゃなかったんです。

先生がしっかりしてりゃ、美雨は小学校の6年間、遠慮ばっかの辛い思いをしなくて済んだ筈です。

それがあるもんですから、先生達は全員敵に見えますし、あの学校自体が吐き気がする位、胸糞悪いです。

ですから、正直言って、そこで悪さばっかしてた生徒が死のうが、先生達がどうなろうが、どうだっていいと思い、投げやりになっていました。

ただでさえ人数が少ないというのに、支障までもたらしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

改めて、切り離してしっかりやります。ご迷惑お掛けして、本当に申し訳ありません。」


「そうだったのか…。美雨ちゃんはあそこの小学校でそんな目に…。しかし、夏目、支障というかさ、俺たちはお前をかなり頼りにしてるんだよ。だから、いつも通りじゃない夏目だと、普通の捜査員程度になっちまうって、俺たちにとっての支障ってだけで、お前さんが気にする様な支障ではないからね。」


「申し訳ありません。」


霞も深刻な顔で頷いた。


「そうよ、夏目さん。一般的に見たら大した事無い支障です。ただ、あなたは普段だと、とても優秀な人だからっていうだけで…。

でも、そうだったんだ…。美雨ちゃんはヨハネでそんな目に…。辛かったでしょうね。病気抱えている上、そんなに遠慮して生きて来て…。

ん?ちょっと待って…。」


「どうした、霞ちゃん。」


「ヨハネはそういう意味で、元々問題がある学校…。なんか引っかかるわね…。」


「霞ちゃん?どったの?」


霞はブツブツ言っていて、ちっとも答えてくれない。


「甘粕う~。」


太宰が甘粕に助けを求めたが、甘粕は笑って首を横に振った。


「ダメですよ、課長。ああなったら、暫く何も聞こえませんから。」


「んじゃあ、手分けして、先生の所行こう。夏目は霞ちゃんと、この半分の先生の所回ってくれ。出来るかな? 」


「はい。気合い入れ直します。」


「よし。頼んだよ。」




車に乗り込み、甘粕と2人きりになった太宰は、待ってましたとばかりに、いきなり聞いた。


「でっ!霞ちゃんとなんか進展があったのかい!?誰にも言わないで置いてあげるから、おじさんに正直に言いなさい!」


「ええ!?なんですか、いきなり!」


「だって甘粕おかしいもん!」


「う…。」


甘粕はカミングアウトする前から真っ赤になって、しどろもどろに話し始めた。


「き…昨日会った時に…。」


「うん!」


「どうにかこうにか、好きだと言いました…。」


「おう!そんで!?」


「かっ…霞さんも好きだと…。」


「うおおおおお!そんで!?」


「そっ…それだけです…。」


太宰は最初、恥ずかしくて、これ以上は言えないという事なのかと思ったが、甘粕に何か隠している様子は無い。


「そんで…?付き合う事になったのか?」


「いえ…。」


「ーんっ!?好き合ってるというのは、確認しあえたんだよな!?」


「はい…。」


「そんで、付き合うって話には!?」


「なってません…。本当にそんだけ…。」


「じゃ…じゃあ、その手を繋いだり、それ以上の事は…。」


甘粕は運転中にも関わらず、首を横にブンブンと振った。


「おま、お前、中学生じゃねえんだからさあ!」


「そ、そうなんですけど、それ以上ってなんかどうしたら良かったんでしたっけ…。こんな緊張を強いられる様な女性との触れ合いって初めてで、訳がわからなくて…。」


「わ…訳が分からないって、お前いくつだよ…。」


「28です…。」


「えええええ…。そ、そんだけなのに、あんなお幸せになっちまってんの?お前は…。」


「はい…。すみません…。」


太宰は思わず頭を抱えてしまった。

甘粕の恋路はとても険しい道程の様だ。




霞は車に乗るなり、校長の自宅に行こうとした夏目にいきなり言った。


「ごめんなさい、夏目さん。美雨ちゃんに話を聞かせて貰うのはダメかしら?」


「ーヨハネの事ですか?でも、小学校ですし、卒業したのも、大分前ですが。」


「それでもいいの。私立だから、先生の入れ替わりは少ないでしょう?ちょっと聞きたい事があって…。嫌かな。思い出したくもないかな、やっぱり…。」


「いや、その辺は大丈夫かと思いますが…。じゃあ、うちに先に行っていいんですね?」


「はい。お願いします。」




美雨は驚いた顔で、霞を出迎えた。


「お電話で一通り達也さんから聞きましたけど、私でお役に立てる事があるんですか。」


「うん。あのね、美雨ちゃん。美雨ちゃんの他にも、もっとその学校のせいでって思う様な酷い目に遭ってる人っていないのかなと思って…。

ちょっとごめんなさい。私も上手く考えがまとまってないんだけど、学校の体質っていうのかな。美雨ちゃんにしたみたいな扱いが物語ってる気がするんだけど、そういう被害にあって、学校を卒業しても恨んでる様な子とかっているかなって。」


「ーそうですね…。結構多いのではないかとは思います。お姉さんて、一度、皆さんにもお世話になった龍介のお母さんで、私の従姉妹なんですが、その人が卒業式に出てくれた時に言っていました。事なかれ主義もいい所だって。

その子一人一人がいい子か悪い子かではなく、問題が起きるか起きないかで、その子の良し悪しを判断しているって。

ですから、虐めの加害者だけでなく、被害者も同じ様に、学校の厄介者扱いなんです。

私のは虐めとかとは違いましたけど、わたしの病気の事で、配慮したり、他の子に迷惑がかかったりするので、私も同様の厄介者だったようです。

入る時には、病気の事は気をつけます、他の子にもいい勉強になるでしょうとか言っていたんですけどね。母がそれに気付いて、『そんなにご迷惑でしたら、転校させますが!』と怒ったら、先生方の対応は少しマシになりましたけど、直ぐ元に戻りました。」


「なんでそんななのかしら。」


「お姉さんと叔父が言うには、私立の悪い所なんだろうって。要するに、生徒も生徒の親も大事なお客様なんですよ。だから、転校されたり、悪い噂を流されて、学費が入って来ないのが1番困る。その為には問題が起きない方がいいし、起きても、積極的に加害者側を糾弾する事も表だっては出来ない。加害者もお客様なのでって事ではないかと。また、私の場合に関しては、同じ学費を払っているのに、その子だけ対応良くするなみたいな事言われるのが怖かった様です。」


「んまあ!それが教育者のあるべき姿なの!?私も私立だったけど、うちの学校の先生は、生徒や親より強かったわよ!?」


夏目も頷いた。


「英学園もそうでした。」


「そうよねえ!」


美雨は笑った。


「そうですね。私も英に入って、学校のあるべき姿というのを初めて見ました。」


「うーん、なるほど…。小学校から腐ってると…。経営者は誰なのかしら?」


「理事長という事ですか?確か、どっかの神父さんだったと思うんですが…。」


「聖職者ねえ…。はーん…。」


「霞さんも段々達也さんみたいに…。」


「だって、んなカネカネ言ってばっかの学校の経営者よ?ロクなもんじゃないでしょう?ま、置いといて。理事長は、小中高、同じよね?」


「はい。あ、あの、今の中高の校長は、私が居た頃、小学校で教員をしていました。駒木先生。」


「えっ。そうなの?とんでもない先生だったんじゃないの?」


「私は接点の無い先生でしたけど、噂があったので、覚えています。」


「噂。どんな?」


「小学校は男性の先生の方が多い位で、その中で、体育の先生で、凄くかっこいいって評判の先生が居たんです。私は全く興味ありませんでしたが、その人と付き合ってて、振られたので、中高に移ったって。実際、その体育の先生は、別の先生と結婚していました。」


「ほおおお…。凄くかっこいい体育教師ね…。」


霞と夏目の脳裏には、駒田教諭が浮かんでいる。

クリスチャンでも無いのに、駒木与志恵が一発合格にした駒田。

若き日の思い出が蘇り、採用したのではないのか。

そして、その振られた相手への思いが、いつしか駒田へと代わり、近付く女生徒への嫉妬を滾らせた…。


「いい情報だわ。有難う。」


「霞さんは、犯人は学校に恨みを持っている誰かだと思っていらっしゃるんですか。」


「うん。今の所、カンでしか無いんだけど、確かに、駒木校長達数人の先生は、怪しげな悪魔教だかなんだかの儀式をして、林田さんの制服を鶏の血で染めたり、今回の被害者の清水さんの血を抜いたりした。

でも、その先の殺害や死体遺棄に関しては、違う、学校を陥れたい人物がやった事じゃないかと思ってるの。

だから、今頃、校長と、悪魔教教師達は、戦々恐々としてるはずじゃないかしらとね。

校長のあの事件直後の慌てっぷりも、そういう動揺なら納得が行くわ。調べれば調べる程、生徒を心から心配してってキャラじゃないもの。」


「そっかあ…。でも、卒業してからもそんなに恨むってよっぽどですよねえ…。」


「そうなのよね。それで美雨ちゃんにもお話し伺いたくて。でも、学校の体質は分かったから、間違い無い気が。」


「ちょっと待って下さいね…。それ、女性でないとまずい?男性ではないです?」


「ん?美雨ちゃん何か、心当たりが?」


「いえ、達也さんが帰って来て話してくれるの聞いてたら、私も女性が犯人。エリザベート・バートリ系で、先生達だろうと思っちゃってたんです。あの学校には不信感しかないので、あそこの先生ならって思っちゃって。でも、もし男性なら…。」


「何!?何!?」


「ー小学校の時、隣のクラスの子で、変わった男の子が居ました。下の名前は忘れてしまったけど、落合君て言ったと思います。彼、性同一性障害だったんですね。でも、酷い扱いを受けて、虐めもあったみたいですが、学校はそんな感じで…。

男子でしたから、当然他学に行きましたが、彼にばったり、ヨハネの近くで会ったんです。そしたら、事務員さんしてるんだって聞きました。中高の方の。」


「あら…?男性は駒田先生だけだったんじゃ…。居たのを隠してるのね。何かあるんだわ…。ええ。それで?」


「ヨハネ、潰したいでしょって言って来たんです。だから、私は今更いいよって言ったんですけど、彼は先生にも酷い仕打ちを受けたらしくて、駒木が校長やってる時に潰すんだ、絶対って…。彼は駒木先生が担任でした。でも、私にそんなポロっと喋っちゃう人の犯行とも思えないですけど…。」


「いや、でも、ポロっと何処かでってのはある事よ。その、美雨ちゃんが今更いいよって言った時の、彼の反応は?」


「凄くびっくりしていました。」


「仲間に引き込めると思っていたのね…。だからポロっと言ったんだわ…。それ以外は?」


「いえ。たったそれだけなんですけど、事務員さんにまでなって入り込んでっていうのが、ずっと引っかかってしまっていて…。」


「有難う!すごい有力情報だわ!直ぐ調べて貰うね!」




「課長~。原田でーす。」


移動中、原田が電話を掛けてきた。


「おう。どした。」


「さっき、ライバルから電話あってさあ。」


「ああ、あれだろ?先生方、血を抜いただけなのに、なんで死んでるって戦々恐々としてるだろうから、揺さぶりかけてみろって…。」


「ああ、そっちじゃなくて、あたしの方に頼み事がってさ。その結果。課長にも知らせてって言うから。」


「おう、なんだ。」


「男性職員、駒田スケベ教師の他に、男はもう1人だけいたの。事務員。そいつね、月曜から行方不明。」


「行方不明?なんで校長は言わねえんだ。」


「そこに鍵あり。そして、ライバルはその事務員の落合敬太の家に夏目と行ってから回るってさ。」


「了解。つーか、なんで霞ちゃんはこっちに直接連絡して来ねえんだよ。」


「知らないよ。んな事。あ、先生達に、落合敬太に関しても揺さぶり掛けてって言っといてだって。」


「んん~?」


「課長、言ったからね?あたし。落合敬太については、引き続き調べます。」


「おう。ありがとな。」


電話を切りながら、太宰は唸った。


「どったのかしら、霞ちゃんは…。どう思う、甘粕。」


「さあ…。今回、確かにプロファイリングしようが無い感じです。もしかしたら、彼女は犯人探しをして…。」


「して?」


「夏目が一緒なのをいい事に…。」


「いい事に?」


「確保してみたいのでは…。」


「えええええ!?そら無茶だろう!?」


「そう思います…。」


「は…早いところ、先生達の方終わらせて、霞ちゃんとっ捕まえよう…。」


「はい…。」






















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