真犯人は…
甘粕は、夏目に運転させ、村井の家に向かいながら、原田にもう一度電話した。
「はいはーい。ダーリン、ちゃんと寝てる?」
「ごめんな。忙しいのに。喜多の顔写真送って欲しいんだけど。」
「ごめんね。それがなかなか見つからないのよ。」
「見つからない?妙だな。運転免許証の写真は?」
警察では、運転免許証の写真は、前科がある無しに関わらず、データ化されて、保存されているはずだった。
それに、警視庁の採用試験は、普通免許は持っていた方が有利とされているから、大抵が受ける前に取っているはずだった。
「ーあのさ…。押田さんが殺された時、I.D盗まれたでしょ…?」
「ああ…。まさか!」
「そうなの…。押田さんが殺されたって発覚する前なんだけど、警視庁のコンピュータから、運転免許証の顔写真が部分的に消されてるのよ…。」
「部分的にって?もしかして、喜多もか!?」
「そうみたい。うちの採用試験を受けたっていうのも、名前と本籍と住所、試験結果の内容が書かれた文書をやっと掘っくり返して見つけただけで、顔写真は無いし、履歴書も無いの。」
「そんなもんがあったんなら、俺たちの苦労は!?」
「いや、これ、見つけたのも偶然だったんだよ。このデータ化するのも、1年前に止めちゃってて、このデータも、ほぼゴミ扱いで、引っ張り出したんだもん。知ってたら教えるよお…。」
「そうだよな…。ごめん…。よくやってくれた。流石だな。」
「ううん。ダーリンの為だもん。でね、喜多の運転免許の有無調べたけど、免許は持ってるの。なのに、免許証のデータが無い。これは、あの時に消されたんじゃ無いかって思って…。」
「他にも消されてる人間がいるのか?」
「分かんない。調べておくね。」
「仕事増やしてごめんな。宜しく。」
「それと、あと、なんか変は変なのよね。喜多の自宅。光熱費が殆どかかってないの。住んでる感じじゃないよ?」
「宮田の家に厄介になってるからか…?でも、生活してた感じじゃねえんだよな?」
霞に確かめると、霞も頷いた。
「長く生活している感じでは無かったわ。ちょっとたまにお泊り程度って気がしたの。」
「他にまだヤサがあんのかな…。ともかく、有難う。」
「ん。じゃ、早くうん。」
「あ…有難う、ハニー…。愛してるよ…。」
「はーい!すっごい元気出たあ!頑張るね!」
更に顔色の悪くなった甘粕を心配そうに見つめながら、霞は甘粕の脈を取りつつ言った。
「I.Dを盗んだのが、顔写真の消去が目的だとしたら、喜多が何故顔を隠さねばならないのかが重要になってきますね…。」
「うん…。夏目。喜多の自宅には?」
「内田さんが何人か連れて向かってます。」
「ん…。じゃあ、安心だな。課長は?」
「皆川と、宮田の事を教えてくれたグループに話を聞きに行くと連絡がありました。」
「1人で大丈夫かな…。」
「そうですね…。ちょっと心配ではありますね…。ヤバイ連中だって話ですから…。」
「うん…。」
座っているのも辛そうな甘粕を、見ていられない様子になった霞は、いきなり甘粕の頭を押さえ付け、強引に膝枕をさせてしまった。
「ええっ!?」
「い、いいの!黙って着くまで寝てて下さい!」
そう言った霞の顔も真っ赤である。
膝枕をされている甘粕の顔も、負けない位真っ赤だが。
夏目1人がニヤリと笑った。
その頃、太宰はまだ車を走らせていた。
「皆川君、府中まで来ちゃったんだけど…。」
「府中なんですよ。そのヤバイ奴で、宮田がツイッターでやり取りしてた喜多って男は。」
「そうなんだ…。」
太宰は段々と、違和感を感じて来ていた。
自分でもよく分からない。
初めの内、本当はいい奴で、ついていないだけと思っていた皆川だったが、ドライブが長引き、太宰が皆川の言うままに車を走らせる様になって来ると、徐々にその印象が変わって来たのだ。
偉そうに、大きな態度で助手席で足を組みだし、目つきも変化していた。
あの凶暴ではあるが、純粋な目は、もうそこには無かった。
太宰が自分の言うなりに動くのが、面白くて堪らないという感じに、楽しんでいる様に見える。
もうそこに、押田の死を悲しむ様子は微塵も感じられない。
そして、皆川の正体を現しつつある自信過剰な、妙に魅力的なこの目を、太宰は知っている。
ーあいつの目と同じだな…。さて…どうすっか…。
甘粕達は、村井の家に到着した。
村井は甘粕を見ると、懐かしそうに出迎えてくれたが、甘粕のワイシャツの中に見える包帯や、顔色を見て、心配そうな顔になってしまった。
「どうしたんだ、甘粕君…。また無茶苦茶やったのかい?」
「いえ、違いますって、俺はそこまで無茶苦茶してませんよ?」
「してたじゃないか、新人時代。
容疑者が逃げたってなって、咄嗟の判断で、容疑者の行く道筋を予想して、1人で回り込んで、容疑者と一対一でやりあって、五針縫ったとか。
その度に太宰君に大目玉くらってたじゃないか。」
「う…。そうでしたかね…。あ、今日はその話でなく…。」
「ああ、喜多晃の事だね。よく覚えてるよ…。
君たちは、この間の14歳のサイコパスで、実際に見たんだろうが、私が初めて見たサイコパスというのは、多分、あの男だ…。」
お茶を淹れながら話し始めた村井に、甘粕が聞き返した。
「喜多はサイコパスだったんですか。」
「恐らくね…。切れやすいとか、凶暴だとか、そういう一般的な心理検査では落ちないんだ。
演じるって事にずば抜けた能力を発揮してね。
甘粕君も受けただろ?集団テスト。
アレ、私が勝手に入れて貰ったものなんだが…。」
「はい。犯人役と刑事役、人質役に適当に分けて、人質を取った状態の中で、説得して逮捕するというシュチュエーションでしたね。
ペイント弾の拳銃を持たせたのは、使ってしまうかどうかを見るためですか。」
「そうだ。人間、誰しも持っていたら使いたくなる。しかし、警察は滅多に撃ってはいけない。それを踏まえた上で、どうするかも見たかったんだ。
喜多は頭はとてもいいんだ。だから、その試験まで毎回行くんだが、そこで露呈してしまうんだ。彼の本性が…。
1回目の時は、刑事役だった。説得する別の子の横で、犯人を観察していたんだが、犯人役が盾にしている人質1人を犠牲にする形で容疑者を確保と言うか、射殺だ。それも、確保してから射殺した。
その時の顔がね、異様だったんだよ。
恍惚の表情というかね…。
嬉しそうどころじゃないんだ。
犯人役の子が無抵抗になっているのに、銃を突き付けて、
『本物の弾だったりしてな。』とか言って脅しているのを、私は聞いてしまった。その上で撃ったんだ。」
「なるほど…。それはサイコパスを疑いますね…。」
「うん。その後も、犯人役、人質役と、全部になったが、どれも役になりきりつつ、人格の壊れた一面を露呈していた。
人質なのに、犯人役に突っかかって行って、銃を奪って、犯人を皆殺しとかね。
犯人役の時が1番生き生きしてたかな。
いきなり人質1人撃って、要求飲まなきゃ、3分おきに1人殺して行くとか言ってさ。
彼が入ると、毎回異様な空気になってしまった。
そして彼自身は、なんていうのかな、若い人がよく言うだろ。精神がイカレタ状態の事…。ラリってるじゃなくて、上手い言い方…。」
「あ、いっちゃってるですか?」
「そう。それだ。そんな感じだった。正直、まともな人間の目ではなかったよ。
彼は普段は、普通というか、寧ろ、魅力的な人物なんだ。
相手の望む通りの人間になれるし、なんというのかな。カリスマ性の様な物があって、人を惹きつけてしまう。
だから、そこまで残るというのもあったんだけど、他の受験者の試験に支障が出るし、彼は人格異常だから、書類選考で落とすべきだと総監に言ってね。そうして貰ったんだ。」
「そうだったんですね…。よく分かりました。有難うございます。」
「いやいや。もっと早く書類選考で落とすというのを思いついていればよかったんだが…。」
「いえ、そんな…。それで、喜多の顔、覚えていますか。写真が見つからないんだそうです。」
「覚えているよ。背丈は190近くあったな。プロレスラーの様な体型だったね。がっしりとして、重そうな感じで。髪は長めで、目が隠れ気味。その目は、大きくもなく、小さくも無く、上がり目で、ちょっとエラの張ってる顔だったな。鼻は高くて、横にも大きい。口も大きめかな。だが、唇は薄い。」
その特徴を聞いていた夏目と、霞の顔色が変わった。
甘粕も、アレッという顔になった。
「どうかしたかね。」
甘粕が、持ち歩いていた一枚の写真を出そうとしたところで、原田から電話が入った。
「ダーリン!大変だよ!」
「どうした!?」
「もう仕方ないから、喜多の顔、高校とかのアルバム引っ張り出してもらって、調べたの!そしたら…。」
そこに、喜多の自宅へ行っていた内田からも、夏目の携帯に電話が入った。
「喜多は居ねえ!近所の話じゃ、ここ1年は殆ど帰って来てねえとよ!ただ、その代わり、腐乱死体を発見だ!」
甘粕はその知らせを受けて、ある確信を持ち、早口で、原田に言った。
「喜多の顔は、俺たちが皆川って思ってる奴の顔なんじゃないのか?そして、内さんが見つけた死体は本物の皆川なんじゃないか。」
「死体は分かんないけど、でも、そうなの!顔は皆川だよ!それに、皆川の運転免許証のデータも消されてた!」
「ー課長が危ない!原田、課長はどこだ!」
「府中方面!細かい位置は、今、GPSで探す!」
「内さん!本ボシは課長と居る皆川です!直ぐ課長を追って下さい!俺たちも行きます!」
「ちょ…ちょい待ち、甘粕!どういうこったい!」
「後で説明します!」
言いながら出ようとする甘粕に、霞は強硬策を取った。
いきなり全身を甘粕に載せて、押し倒したのだ。
「夏目さん!誰かと向かって下さい!ここは私が!」
若干呆気にとられつつも、夏目は直ぐに動いた。
「はい。」
もがく甘粕。
普段なら霞の重さなど、容易く除けられるが、今の状態ではそれもままならないし、そもそも打撲した内臓やら骨やらがとても痛い。
甘粕はもがくのを止め、夏目が走り出たのを見ると、霞の身体にそっと手を置いて微笑んだ。
「確かに霞さん程度、跳ね除けられないようじゃ、かえって足手まといだ。夏目に任せるよ。」
「ああ、良かったわ…。案外物分りが良くて…。ごめんなさい。痛いよね。」
霞がどき、甘粕が起き上がるのを手伝うと、霞は苦しそうな顔になった。
「ーどうして皆川を見た時に気づかなかったのかしら…。全て演技だったんでしょうに、何故…。」
その問いには、村井が答えた。
「分からなくて当然だよ。喜多のは演技ってレベルじゃない。
本当に別キャラクターになりきれちまうんだから。
あなたが読めなかったとかじゃないよ。
だって、現に、この道20年の太宰君だって、騙されちゃったんじゃないか。」
「でも…。」
「お嬢さん。喜多を5回も面接してきた私が言うんだ。間違いない。さて、どうするね、甘粕君。」
「地固めですね…。課長の事は夏目に任せるしかないし、課長なら意外と乗り切れそうな気もするし…。」
「私もそう思う。」
「えっ?」
心配しきりの霞が驚いた様子で聞き返すと、2人共笑った。
「霞さんは、まだ課長のしぶとさを分かってないんだな。あの人、ただですんなりやられるタマじゃないよ。」
「そう。おじさんの癖に可愛い顔して、優しげな風貌に似合わず、意外と強烈な面も持ち合わせている。
じゃなきゃ、一課の課長として、あの保身しか考えていない刑事部長と渡り合って、身体壊さないなんておかしいでしょう。」
「は…はあ…。」
「じゃあ、原田君と電話をつないで、アームチェアディテクティブと行こうか。」
原田は太宰の居場所を直ぐに突き止め、知らせてくれた後、甘粕に電話して来たので、オンフックにし、村井家の居間は、捜査本部となった。
村井の奥さんが楽しそうに笑いながら、お昼を用意してくれている。
「ダーリン。喜多の購入した物が大体分かったよ。ネットで買い物した物に限るけど、内訳は、刃渡り30センチのアメリカ製サバイバルナイフ、4つ。鑑識の人が使う足袋、手袋を20組入りを2セット。使い捨てビニールスーツ20着。保冷容器二個と保冷剤20個。」
村田の眉間に皺が寄った。
「一課の人数は20人だったね…。一課全員をターゲットにする気だったのか…。」
「その様ですね…。原田。皆川について、調べて貰えないか。」
「皆川ね…。皆川は、うちの採用試験は実質一回しか受けてないね。過去に受けた形跡はこの、掘っくり返したデータにも無いよ。その後、本当に、解体工場に就職してるし、つい最近までは仕事ぶりも真面目だったみたい。」
「それで、皆川の顔写真はどうなってる?消されてるか?」
「消されてるね。」
甘粕は、皆川の履歴書の写真を村井に見せた。
「うん。喜多だ。間違いない。」
「既に1年前に、皆川になりすまして、採用試験受けてたって事か…。じゃあ、本物の皆川は、試験は受けてないんだな…。
皆川は心理テストの段階で落ちてるんだよな?集団心理テストまで行ってないよな?」
「えーっと、だね。切れやすいでひっかっかってるね。」
喜多が皆川になりすまして受けたのだとすると、その結果はわざとだろう。
警察が疑いを持ち、後で接触してくる様に、試験の結果を操作したと考えられる。
「原田。皆川と喜多の接点はあるか。」
「えーっと、ちょっと待って下さいよ…。あ、これ、皆川だ。1年半前、皆川が喜多のツイッターグループに乱入して、凄い怒ってる。
押田さんみたいないい刑事さんだって沢山いるし、落ちたのも、それなりの理由があるはずだ。だったら刑事は潔く諦めて、刑事さんに迷惑かけないよう、何かあった時は、役に立つ位の気持ちで、しっかり生きて行くべきだって、凄いマトモな事言ってるよ。
勿論、こんなバカ共のグループの中だから、凄い勢いで言い返されてるけど、時々乱入しては怒ってる。
課長が信じた皆川のキャラ、そのまんまなのかね、これ。」
「だと思うわ。そんな感じの人だったもの…。」
「ライバル。元気出しなよ。あんたのせいじゃないよ。あの課長ですら騙されたんだよ?あんたが分かんなくたって、仕方ないよ。」
「有難う…原田さん…。ところで、宮田はどんな役割なのかしら?」
「こいつはバカなんじゃないのかね。話が複雑になって来ると消える。単なる薄汚い悪口になると、出て来る。喜多のイエスマンて感じだね。」
「原田さん、素人の人が、ツイッターのやり取りから、身元を割り出すなんて出来るの?」
「うーん、この喜多って、満更素人でもなさそうだよ?大学落ちて、システムエンジニア養成スクールみたいなの行って、1番で卒業してるし、その後、セキュリティー会社のシステムエンジニアで三ヶ月位働いてる。
それに、うちのパソコンで、運転免許証の顔写真を特定の人物のだけ消すなんて、喜多がやったんだとしたら、それだけでも、相当な手練れだと思うよ。」
今度は村井が質問した。
「そのセキュリティー会社は、何故三ヶ月で辞めているのかな?」
「あら!村井のおじ様!えっとですね。事実上の解雇ですね。顧客の個人情報を抜き出したり、監視カメラの映像を勝手に録画して持ち帰ったりしていたのが、バレたようです。」
「成る程。喜多ならやりそうだ。皆川の顔写真は見つかりそうかな?」
「それが、あったんですよお!意外な所に!皆川が勤務する解体工場会社のシステムに入っていました。これです。」
霞の携帯に写真が送られてきた。
体型や顔も、どことなく喜多と似ていた。
続けて送ってくれたのは、作業中の社員の様子を写したものだが、これで喜多が皆川になりすましているのが可能だった理由が分かった気がした。
作業中は防塵メガネに、防塵マスクにヘルメット姿だ。ぱっと見、誰が誰やら分からないし、体型や雰囲気が似ていると、別人とは思えないだろう。
それに加えて、あの喜多のなりきり加減。
オフの時の接触を避ければ、先ずバレる可能性は低い。
職場の人間が、皆川から喜多にすり替わっていたのに気がつかなったのも分かる。
増して、皆川の近所の人ともなれば、尚更顔は見て居ないだろうから、先ず分からないだろう。
喜多は皆川を自宅で殺し、まんまと皆川になりすましつつ、宮田には喜多として接し、拠点にして、犯行を行っていたと考えられる。
だが、何故、皆川のアパートがあるのに、宮田の自宅が必要だったのか。
いざという時、両方に罪をなすりつけるつもりだったのか。
それにしては、太宰達が喜多扮する皆川に接触した時の、協力的な態度はなんだったのか。
その疑問を原田が口にすると、甘粕が答えた。
「そこがサイコパスなんだよ。
宮田を操って、犯行の片棒を担がせって、まあ、どの程度担がせたのかは未だ分かんねえけど、そうやって、共犯者にして、味方を作っておきながらって感じなんだろう。
いざという時、罪をなすりつける事も出来なくもないのかもな。
さっきお前が調べてくれた様に、宮田はサイコパスにとって、最も都合のいい人格の様だし。
命令して、部屋も自分の好きな状態に維持させた。いつ来ても大丈夫な様にとね。
もしかしたら、犯行の秩序性と、宮田の部屋を秩序立てて、2つを関連づける事で、宮田犯人説を通りやすくする為だったのかもしれないが。
皆川になりすましての一連の行動は、捜査には協力したい、関わりたいってのが、サイコパスの特徴なんだ。自己顕示欲の表れなんだろうけどな。
捜査の撹乱てのもあるんだろう。」
「じゃあ、押田さんを殺したのは?本村さんはいいけど、押田さんは酷いよ…。」
「邪魔だったんだろう。いい刑事ってのが。
刑事は無能で、ダメな奴、自分より劣っているっていう、奴の信念が脅かされるからだ。
皆川がツイッターで名前出す位、信奉している押田は邪魔でしかなかった。
ただそれだけの為に、あんないい刑事が殺された。確かにやりきれないな…。」
押田は、原田にも親切で、普通に接する数少ない刑事の1人だったらしい。
「課長もいい刑事だから、狙われてるのかな…?」
原田の声が不安そうに震えた。
「ーそうだな。それと、話題の五課の課長だ。奴の中のくだらねえハク付けだろう…。」
「課長、大丈夫かな…。」
「うん…。」
さっき霞をああ言って励ました甘粕だったが、甘粕とても、不安には変わりなかった。
自分が動けないのが、尚更辛い。
ー課長…、無事でいて下さい…。
そう、祈らずには居れない甘粕だった。




