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片角の鬼  作者: よし餅
3/5

第3話

 走り出したユーリ。


 ユーリは今までに無いスピードで熊に体当たりを食らわせた。


「ガアッ!」


 熊は後ろ倒れ、槍が深く刺さり握りは途中で折れた。


「はあ……はあ……はあ」


 ユーリの息は荒い。目付きは鋭くいまだに熊から目を離さない。ギュッと強く握られた拳から血が流れる。

 熊が起き上がろうと動くが、その前にユーリは熊の目の前に凄いスピードで近付き拳を熊の顔面へ叩き込む。


 ボキボキと骨が折れる音がはっきりと発せられた。ユーリはそれを気にした様子も無く、次は左の拳を叩き込む。


 数秒の出来事だったがフミノフには長い時間にも感じた。

 熊の頭は既に原形を留めていなかったが、ユーリの拳が止まる事は無かった。


「や、やめるだユーリ。もういいだよ」


 フミノフはユーリに近付きながら声を掛けた。するとユーリの動きがピタリと止まる。


 ゆっくりと振り返るユーリの顔にフミノフは初めてユーリに恐怖を感じた。


 黒髪の隙間から深紅に染まった瞳がフミノフを射抜く。


 ギュッ


「大丈夫だぁ。もう大丈夫だから。ありがとうユーリ。助けてくれで、ありがとう」


 フミノフはユーリをギュッと抱き締めて優しく語りかける。

 ユーリは徐々に目を閉じていき、完全に目が閉じると眠ってしまった。


「……………ユーリ」


 フミノフは腕の中で眠ったユーリを優しく抱き上げ家路についた。










 真っ白な空間にユーリは一人立っていた。


「父ちゃん。父ちゃんどこにいるの!!父ちゃ〜〜ん」


 声を上げるが返事はない。


「………父ちゃん」


 うな垂れるユーリは気配を感じそちらに目を向ける。するとそこには知らない男が立っていた。

 腰まで伸びた黒髪を一纏めにしており、額には角が3本生えていた。そして深紅の瞳は強さを感じさせた。

 身長は高く2mはあるだろう。鍛えぬかれた筋肉は美しくもあった。


「あなたは……誰ですか?」


 ユーリの問いに男は答えない。黙ってユーリを見下ろすだけだった。










「……………うん」


「起きたかユーリ」


 ユーリが目を覚ましたのはあれから2日後だった。

 ユーリが始めに感じたのは身体の怠さだった。体重が倍になったのではないかという程の重さを感じた。


「調子はどうだぁ?」


「…少し怠いかな。父ちゃんは大丈夫?」


「がははは、お前のおかげでこの通りだぁ。ありがとうな」


 フミノフは服を少しめくり古傷のようになっている傷を見せた。フミノフ特製の薬の効果なのはユーリもよく知っていた。


「良かった。父ちゃんが生ぎででよがっだぁぁぁぁ」


 ユーリは泣き出してしまった。それを見たフミノフは泣き止むまで優しく頭を撫で続けた。





「所でユーリよぉ。お前目どうしたんだ?」


「目?」


 ユーリは首を傾げる。ユーリ自身、目に違和感は特に無かったからだ。


「なんだぁ、自覚は無いのか。ほら、鏡だ見てみろ」


 ユーリはフミノフから鏡を受け取り、顔を見た。するとユーリは驚いた。黒色だった瞳は深紅とも呼べる色に染まっており、僅ながら角も伸びていた。更に、鏡を握った爪も黒く鋭くなっていた。


「…………」


 ユーリは声が出なかった。

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