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二章 第三軍団の進撃




 第三軍団が森へ入った初日。

 単発の戦闘はあったが、集団戦となるような戦いはなかった。

 いずれも斃した相手はオーガである。

 進化したオーガではなかった。

 夜、森の各地に点在しながら、第三軍団の面々は野宿を行った。

 さすがに何も用意していないということはなかった。

 三日分の携帯食を持ち歩いていたが、それも計画的に飲食をすればという話である。

 第三軍団の兵士たちは、思い思いに食事をとった。

 隊長らもそれを注意することはない。

 彼らの食事も似たようなものだった。

 おそらく翌日の夜までにはすべての携帯食はなくなっていることだろう。

 いや、昼にはもうないかもしれない。

 それほど飲食の管理は――いや、飲食の管理も杜撰であった。


 翌日、昼に散発的に魔獣と遭遇する。

 いずれも機敏な魔獣で、逃走されればとどめを刺すのが難しかった。

 魔獣を狩ることができた者たちのみが、豪華な食事にありつけた。

 保管することや、配給することなどは、誰も考えていないようだった。

 また、そういった命令も一切下っていない。

 七割の団員がすでに携帯食をすべて消費していた。

 彼らのやり方は現地調達主義である。

 自身で調達できないならメシにはありつけないということだ。


 三日目、未だ、進化型のオーガとの接敵はない。

 第三軍団の進軍速度がさらに高まった。

 理由ははっきりしている。

 全員の携帯食がなくなったからだ。

 飲まず食わずの進軍は、夕方になる頃には、限界に達することになる。

 目立って足の動きが重くなり、第三軍団は完全な息切れを起こした。

 すでに森の相当に深い位置まで侵入している。

 この時になっても、未だ軍団長から指示はまったくない。

 それどころか、誰も軍団長の位置を知らないありさまだった。


 三日目の夜、むろんこの日も野営である。

 彼らは素人ではない。

 むろん、歩哨の兵が周囲を警戒していた。

 だが、彼らに注意深さを期待するのは難しい。

 不十分な飲食と休憩しか与えられていない。

 そしてこれまでほとんどまともな戦いを行っていないという状況がそれに加わる。

 危険をまったく感じていなかったのだ。

 兵士たちは警戒をしているものの、それは形だけのものになっていた。

 多くの者が愚痴をこぼすばかりで、役目をまっとうしてはいない。


 深夜、第三軍団の状態を暗闇から観察する無数の目があった。

 その大柄な人影たちは物音ひとつ立てず、完全に森へ溶けこんでいた。

 月が完全に雲に隠れ、わずかな星明りのみが樹木の葉先を透かしている。

 大柄な影たちがいっせいに立ちあがった。

 そして、動きだす。

 統率のとれた動きである。

 彼らの視線の先には、ばらばらに野営する第三軍団の兵士たちの姿があった。









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