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命約  作者: 翡翠蝶
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幼馴染と新たな情報

「お~い、憂羅~★」

雷蛇を宮へ帰し、境内のそうじをしていると声が聞こえた。いや、正確には上から降ってきた。

憂羅はその聞き覚えのある声にいささかドンヨリしながら上を見上げた。

青く澄み渡った空を背景にホウキに乗った人物が手を振りながら飛んでくる。

「憂羅~面白い噂、聞いてきたぜ~!」

ホウキに乗った人物はそう言いながら地面に降り立った。肩には、れいという左が赤、

右が黄の瞳の(オッドアイといいます)黒猫が乗っている。黒猫の青緑の首輪には

卵型のエメラルドが付いている。

(このエメラルドには意味があるがそれはまた後で説明しよう)零はテレパシーで人と会話することができる。降り立った人物は、黒の魔女帽子を整えた。

「あら、またなの?いい加減にして。だいたいあんた、いちいち噂教えに来なくて

 もいいわよ!それに噂って言ってもデマが多いじゃない!」

 憂羅は、腕組みをして珠洲宮魔奈里すずみやまなりを睨みつけた。

「まぁ、怒らない、怒らない。今度のはホントだって。信用してくれよ!」

憂羅は怪しげに目を細めた。

「だけどね、私はその言葉を信じてきてどれほど裏切られたことか!」

憂羅は声を荒げた。

“魔奈里、もうやめなよ。憂羅もウンザリしてるんだよ。”

零も宥める。

「けど、聞くだけ聞いてくれよ!」

魔奈里は必死に頼み込んだ。

憂羅はため息を漏らした。

魔奈里はこういう性格だ。きっと憂羅が噂を聞いてくれるまで帰らないだろう。

「いいわ。ただし聞くだけだからね!」

結局、憂羅が折れた。いつもこうなのだ。最後は憂羅が噂を聞くハメになる。

憂羅は噂を聞くまいと努力しているのだが、いつも魔奈里の気迫に押されてしまうのだった。

魔奈里は待ってましたとばかりに話しだした。憂羅はしぶしぶ耳を傾ける。

「あのさ、昨日南の森が妖魔に襲われたって知ってるか?」

(知ってるわよ!ていうか退治したの私だし!)

憂羅はそう言おうとしたが、魔奈里は勝手に話を続ける。

「そんで、その森で修行してた妖怪がいたらしい。ものすごく強い妖怪で偉い奴なんだと。

けど、行方不明で妖怪達があっちこっち探してるみたいなんだ。憂羅知らないか?」

「・・・・・・」

(「その妖怪はここにいます」なんて言えないじゃない!)

憂羅が黙っているのを見て魔奈里は知らないと思ったらしく、

「そうだよな~、知らないよな~。見つけたらそれそうのお礼はしますってあるんだけどな。」

そう言って懐から4つに畳まれた紙を出した。

「それ、何?」

憂羅は尋ねた。

“これ?リューラの街で小妖怪達がばらまいてたんだよ。”

零が答える。

「ちょっと見せて!」

憂羅は魔奈里の手から奪うように取りじっと紙に見入る。

そこには雷蛇の写真と手短な文が書かれていた。

『この妖怪を見つけたらすぐに浪石屋敷ろうせきやしきまで連絡を!

 見つけた方にはそれそうのお礼をさせていただきます。』

憂羅は、小さく呻いた。

(まさか、私が良かれと思ってやったことがこんな騒ぎになるなんて。でもやってしまった

ものは仕方ないし。ここは魔奈里に説明をしてーーーーー)

ところが、タイミングがいいのか、悪いのか丁度、雷蛇が姿を現した。憂羅の所に向かって来る。

「憂羅、少し聞きたいんだが、ーーー」

「ええええぇぇぇぇー?!」

“まぁ!?”

魔奈里と零の声で雷蛇の声は掻き消された。

「はぁ・・・・・・・」

憂羅は、額に手を当てた。

話は、どうやら穏便に済みそうにない。





「・・・・ってワケなの。」

憂羅は、話をそう締めくくった。

魔奈里も零も黙っている。

雷蛇はずっと壁にもたれ、桜を眺めている。

「・・・なんで、黙ってたんだ?せめて私には教えて欲しかったぜ。」

魔奈里は、険しい顔で言った。

「言おうと思ったら雷蛇が来たから・・。言い損なったのよ。」

魔奈里は、険しい顔で何か考えているようだった。

だが、顔を上げると、

「じゃあ、最後に一ついいか?」

と、言った。

「い、いいわよ。」

憂羅は顔を強張らせた。

魔奈里は、チラッと桜を見ている雷蛇を見やると、少し体を寄せて小声で聞いてきた。

「・・・・お前、あいつと一晩一緒だったんだろ?何かしたのか?」

「・・どういう意味よ?」

憂羅は、こめかみをピクピクさせながら聞いた。

「だーかーらー、あいつと何か男と女の事をしたかってことだ。したんだろ?

 キスとか、色々・・・・・・」

「はあーーー!?」

憂羅は、思わず立ち上がった。

「ち、ちがうわよ!そそ、そんなことするワケないじゃない!バッカじゃないの!!」

顔が赤くなっているのが自分でもわかる。

雷蛇が振り向いた。

「どうかしたのか?憂羅、顔が赤いぞ。昨日の疲れが出たのか?」

雷蛇が心配しているのがわかる。けど、その最後の言葉は魔奈里を誤解させてしまう。

案の定、魔奈里は興奮したように憂羅の腕を掴んだ。

「・・・おい!まさか憂羅、お前、あの蛇と・・・・・」

「ちっがーう!!なんでそうなるのよ?」

「だって、あの蛇、けっこう顔イイし。いくら真面目なお前でも誘惑に勝てずにってことが・・・」

「ない!!ぜっっったいにないから!!ああ、もう・・・」

憂羅は、ペタンと座り込み顔を覆った。顔がユデタコみたいに真っ赤だ。

“憂羅、だいじょうぶ?”

傍でずっと話を聞いていた零が心配そうに憂羅の顔を覗き込んだ。

憂羅は、グッタリと首を振った。

零は、魔奈里を振り返ると、

“魔奈里、言い過ぎだよ。憂羅はそんな性格じゃないって知ってるでしょう?”

と、言った。

魔奈里はポンと憂羅の肩を叩いた。

「そういう事にしとこうか?憂羅」

「あんた、全然信じてないじゃない!もう!」

憂羅は、魔奈里を睨みつけた。

「だって、まだ100パー信用できるワケないし・・」

「魔奈里!あんたっていつもーーーー」

お決まりの喧嘩を始めようとした二人を遮るように、

「しかし、珍しいな。妖猫ようびょうとは。」

雷蛇が、関心した表情で言った。

「おう!私の大切な相棒だ!」

魔奈里は、自慢げに言った。

「ほう・・・」

雷蛇は、目を細める。

「ねぇ、雷蛇。妖怪達があなたを探してるみたいよ。どうすんの?」

憂羅の言葉に雷蛇は、驚いたようだった。

「何?・・・どうして妖怪どもが私を探す?ずっと森にこもっていてすっかり忘れられたと思っていたが・・・」

「けど、探してた事はまちがいないぜ。それはこの紙を見ればわかる。」

魔奈里は、雷蛇に探していることが書かれた紙を差し出した。

雷蛇は、その紙を読むと、

岩源がんげん殿の仕業か・・・」

と、呟いた。

「岩源?」

憂羅は、首を傾げた。

“岩源ってここらの妖怪をまとめるリーダーの一人よ。でも、どうしてあなたと

 岩源が知り合いなの?”

零は、不思議そうに言った。

「岩源殿には、助けて貰ったことがある。その後も色々と世話して貰ったんだ。

 だが、とっくに忘れられたと思っていたよ。」

雷蛇は苦笑した。

「まっ、とにかく!さっそく浪石屋敷に行こうぜ!お前を連れていけば・・・」

そう言う魔奈里の顔は、お礼を考えているのか緩んでいる。

「断る。」

雷蛇は、アッサリと言った。

「なんでだよ!?」

魔奈里は、慌てたように言った。

「一度、世話になった所にまた世話になりたくはない。図々しいにもほどがあるからな。

 それに、波莢の巫女と怪我が治るまでここにいると約束したしな。」

魔奈里は、憂羅を見た。 

「ホントか、憂羅?!」

「う、うん。」

憂羅は、戸惑いながらも頷いた。

「なんで、そんな約束するんだよ!」

「だって、傷が治るまでは安静にしといた方がいいかなって思ったから・・・」

魔奈里の迫力に押されつつ憂羅は答えた。

「はぁ~・・・どうしたらいいんだ?なぁ、頼む!雷蛇!屋敷に行ってくれ!」

魔奈里は頼み込むが、雷蛇はなかなか首を縦に振らない。

それを見ていた憂羅が言った。

「ね、雷蛇。せめて、屋敷に行って岩源って人に自分は無事だって伝えよう?

 そしたら妖怪達も安心するんじゃないかな?」

「・・・・そうだな。行って無事だと伝えるくらいなら・・・」

雷蛇は、しぶしぶ頷いた。

「魔奈里もそれでいい?」

「もちろんだぜ!そうすりゃお礼も貰えるだろうしな!」

“あなたの頭には、それしかないの?全く・・・”

零が呆れたように言った。

「とにかく、行こうぜ!浪石屋敷に!」

魔奈里は、勇ましく言った。

「・・・どうなることやら・・」

憂羅は、ため息を漏らしたのだった。



新しいキャラを登場させました。一応魔女です。

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