神櫻の記憶
桜が風に枝を揺らす。
伸ばす手・・・・・・、悲しげで、どこか寂しげな女性の顔・・・・・・・。
待って・・・・・・待ってよ・・・・・母さん・・・・・。
行かないで・・・・・・!
憂羅はそこで眠りから覚めた。
(・・・・・まただわ・・・・・・最近ずっと同じ夢を繰り返し見てる・・・・・けど、この夢には続きがある気がする。なんでか分かんないけど・・・・・)
憂羅はため息を吐いた。寝返りをうつ。
(もうこんなのたくさん!夢を続きを探しましょう!)
憂羅はそう決心した。
「夢に出てきた場所ってここよね?」
憂羅は確認する。
ここは『波莢桜路』。夢で母がいる場所は間違いなくここだった。
憂羅はゆっくり歩いて行く。
「・・・・!」
憂羅は軽い頭痛に顔をしかめた。
その時、憂羅の頭の中に記憶のカケラがよぎった。
桜路で楽しそうに遊ぶ憂羅。傍では母がニコニコと笑っている。
そして、その隣にいるのは・・・・・・・・・、
ジャリ・・・・・小石を踏み締める音が後ろで響いた。
憂羅は振り返らず静かに言う。
「・・・・・・・雷蛇、あなただったの・・・・」
後ろからため息が聞こえる。
「・・・・・・あなたは・・・・母さんを知っていたの・・・・・?!」
憂羅は後ろを振り返る。憂羅の肩は震えていた。
雷蛇が悲しげに俯いていた。
「・・・・すまない・・・・・ずっと隠していて・・・・・」
雷蛇は顔を上げ、憂羅を見つめた。
「私は・・・・確かに、お前の母を・・・・美羅を知っている。」
憂羅は息を呑んだ。
雷蛇は静かに語り出す。
「お前の母は優しい男と結婚しお前を産んだ。
幸せだったんだ・・・・・お前の父が死ぬまでは・・・・」
雷蛇はゆっくり息を吐き出す。
「父が死んだ時、お前はまだ5歳だった。美羅はあえてお前に父が死んだと言わなかった。
自分でも認めたくなかったんだろうな。美羅は一人で子供を育てようとした。自分も体が弱く、限界を迎えたとしても・・・・・」
あの日は、平和な日だった。
とても良い天気で、お前がこの桜路で遊んでいた時だ。妖魔がいきなり襲ってきたんだ。
傍に私と美羅がいて、何とかお前を守ろうとした。
けれど・・・・・、数が多すぎたんだ。
私達はだんだん妖魔どもに押され始めたんだ。
そのうち・・・・美羅が言った。
『この子を守るためよ・・・・。ゴメンね、雷蛇。憂羅を守るためにはこうするしかないの・・・・』
そして・・・・・、自分の命を妖力に変えて、命がけで妖魔を全て封印した・・・・。
お前はひどく悲しんで、食事にも手をつけず、このままでは衰弱してしまう。
私は、お前の記憶の一部を塗り替え、お前の祖母に預けた。
そして、山にこもった。自分の力をもっと高めるために・・・・。
「・・・それが、私の全ての記憶・・・・・。」
憂羅は呟く。その瞳は涙で濡れていた。
「・・・・・お前に隠していた事は本当に悪いと思っている。」
雷蛇はかすれ声で言った。
「・・・・ううん、私、良かったと思うよ。本当の記憶を思い出せて。雷蛇は私のためを思ってやってくれたんでしょ?私、全然責めるつもりなんかないよ。」
憂羅は微笑んだ。雷蛇も微笑み返す。
二人は宮に戻っていった。
「・・・・イイのかよ?アイツらに言わなくて?」
ご神木の枝の上で鏡水は幹に寄りかかったポーズで傍らの少女に聞く。
「・・・良いのです。それに言ったら怒られそうですし。」
ルナは優しげに憂羅達を見送る。
「まぁ、そうだよな。オメーが巫女の夢に記憶のカケラを紛れ込ませた、なんて口が裂けても言えないぜ。」
鏡水は肩をすくめる。
ルナは優雅な笑みを浮かべている。
「けど、なんでオメーがあの巫女の記憶を知ってんだ?オマケに普段なら他人の事なんて眼中にないっていうのに、なんだって、あんなにあの巫女に目ェ掛けるんだ?」
鏡水はけげんそうに尋ねる。
「・・・・・・・・・・・大切な親友との命約を守っているだけですよ。」
ルナは小声でそう言った。
「ああ?」
不思議そうな鏡水にルナは笑いかける。
「何でもありません!さ、鏡水様、もうそろそろ帰りましょう。皆が待っておられます。」
鏡水と共にルナも飛び立つ。
そして、途中で止まり、桜を見下ろした。
「美羅、あなたとの命約は守りました。」
「おい、ルナ早く行くぜ!」
「はい!」
鏡水に返事をし、後を追う。
命約神櫻は、応援するように枝を揺らしていた。
みょんみょんさん!今、思いついたんですがルナさんの秘密は命約Ⅱで書きます!
なので、共同作品はもう少し後になりそうですが良いでしょうか?