表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命約  作者: 翡翠蝶
19/19

神櫻の記憶

桜が風に枝を揺らす。

伸ばす手・・・・・・、悲しげで、どこか寂しげな女性の顔・・・・・・・。

待って・・・・・・待ってよ・・・・・母さん・・・・・。

行かないで・・・・・・!



憂羅はそこで眠りから覚めた。

(・・・・・まただわ・・・・・・最近ずっと同じ夢を繰り返し見てる・・・・・けど、この夢には続きがある気がする。なんでか分かんないけど・・・・・)

憂羅はため息を吐いた。寝返りをうつ。

(もうこんなのたくさん!夢を続きを探しましょう!)

憂羅はそう決心した。




「夢に出てきた場所ってここよね?」

憂羅は確認する。

ここは『波莢桜路』。夢で母がいる場所は間違いなくここだった。

憂羅はゆっくり歩いて行く。

「・・・・!」

憂羅は軽い頭痛に顔をしかめた。

その時、憂羅の頭の中に記憶のカケラがよぎった。

桜路で楽しそうに遊ぶ憂羅。傍では母がニコニコと笑っている。

そして、その隣にいるのは・・・・・・・・・、

ジャリ・・・・・小石を踏み締める音が後ろで響いた。

憂羅は振り返らず静かに言う。

「・・・・・・・雷蛇、あなただったの・・・・」

後ろからため息が聞こえる。

「・・・・・・あなたは・・・・母さんを知っていたの・・・・・?!」

憂羅は後ろを振り返る。憂羅の肩は震えていた。

雷蛇が悲しげに俯いていた。

「・・・・すまない・・・・・ずっと隠していて・・・・・」

雷蛇は顔を上げ、憂羅を見つめた。

「私は・・・・確かに、お前の母を・・・・美羅を知っている。」

憂羅は息を呑んだ。

雷蛇は静かに語り出す。

「お前の母は優しい男と結婚しお前を産んだ。

幸せだったんだ・・・・・お前の父が死ぬまでは・・・・」

雷蛇はゆっくり息を吐き出す。

「父が死んだ時、お前はまだ5歳だった。美羅はあえてお前に父が死んだと言わなかった。

自分でも認めたくなかったんだろうな。美羅は一人で子供を育てようとした。自分も体が弱く、限界を迎えたとしても・・・・・」





あの日は、平和な日だった。

とても良い天気で、お前がこの桜路で遊んでいた時だ。妖魔がいきなり襲ってきたんだ。

傍に私と美羅がいて、何とかお前を守ろうとした。

けれど・・・・・、数が多すぎたんだ。

私達はだんだん妖魔どもに押され始めたんだ。

そのうち・・・・美羅が言った。

『この子を守るためよ・・・・。ゴメンね、雷蛇。憂羅を守るためにはこうするしかないの・・・・』

そして・・・・・、自分の命を妖力に変えて、命がけで妖魔を全て封印した・・・・。

お前はひどく悲しんで、食事にも手をつけず、このままでは衰弱してしまう。

私は、お前の記憶の一部を塗り替え、お前の祖母に預けた。

そして、山にこもった。自分の力をもっと高めるために・・・・。



「・・・それが、私の全ての記憶・・・・・。」

憂羅は呟く。その瞳は涙で濡れていた。

「・・・・・お前に隠していた事は本当に悪いと思っている。」

雷蛇はかすれ声で言った。

「・・・・ううん、私、良かったと思うよ。本当の記憶を思い出せて。雷蛇は私のためを思ってやってくれたんでしょ?私、全然責めるつもりなんかないよ。」

憂羅は微笑んだ。雷蛇も微笑み返す。

二人は宮に戻っていった。





「・・・・イイのかよ?アイツらに言わなくて?」

ご神木の枝の上で鏡水は幹に寄りかかったポーズで傍らの少女に聞く。

「・・・良いのです。それに言ったら怒られそうですし。」

ルナは優しげに憂羅達を見送る。

「まぁ、そうだよな。オメーが巫女の夢に記憶のカケラを紛れ込ませた、なんて口が裂けても言えないぜ。」

鏡水は肩をすくめる。

ルナは優雅な笑みを浮かべている。

「けど、なんでオメーがあの巫女の記憶を知ってんだ?オマケに普段なら他人の事なんて眼中にないっていうのに、なんだって、あんなにあの巫女に目ェ掛けるんだ?」

鏡水はけげんそうに尋ねる。

「・・・・・・・・・・・大切な親友との命約を守っているだけですよ。」

ルナは小声でそう言った。

「ああ?」

不思議そうな鏡水にルナは笑いかける。

「何でもありません!さ、鏡水様、もうそろそろ帰りましょう。皆が待っておられます。」

鏡水と共にルナも飛び立つ。

そして、途中で止まり、桜を見下ろした。

「美羅、あなたとの命約は守りました。」

「おい、ルナ早く行くぜ!」

「はい!」

鏡水に返事をし、後を追う。

命約神櫻は、応援するように枝を揺らしていた。



みょんみょんさん!今、思いついたんですがルナさんの秘密は命約Ⅱで書きます!

なので、共同作品はもう少し後になりそうですが良いでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ