妖魔は人の心なり
「何か変じゃない?」
憂羅は険しい顔で言った。
「変って何が?」
魔奈里はポカンとした。
「・・・・・・・・・・この頃、妖魔が増えてきた事か。」
雷蛇が言う。
“そう言えばそうだわ。なんでかしら?”
零は首を捻った。
「たまたまじゃないですか?」
紅葉はそれが何だと言いたげだ。
「たまたまなワケないでしょ。そんなテキトーな理由で妖魔に出てこられたら、たまったもんじゃないわ。きっと、誰か主犯がいるはずよ。探しに行くわよ!」
憂羅は立ち上がった。
「・・・・・・・だからと言って吾輩の所に来るな。来られたって吾輩が困る。」
岩源は腕組みをして言った。
「まぁ、そう言わずどんな事でも良いから気になる事があったら言って!」
「と言われてもな・・・・・・」
岩源はジッと考えこんでいたがふと言った。
「関係ないかもしれぬが、馬鹿蛙の所の妖怪の中に妙な動きをする奴がいたと思うぞ。」
「妙な動き?」
「ああ。馬鹿蛙が文句を言っていたな。アイツはそのうち俺を裏切るだの何だの・・・・・」
「ありがと!」
「サンキューな!」
憂羅と魔奈里は飛び出して行った。
「待って下さ~い!」
“二人とも早いって!”
紅葉と零も後を追う。
岩源は苦笑する。
「お前も大変だな。雷蛇。」
「はあ・・・・・・。」
雷蛇も苦笑して出て行った。
(馬鹿蛙とは鏡水の事です。分かると思いますが。)
鏡水の屋敷は明るい感じの屋敷で岩源の屋敷とは真逆だった。
憂羅達はルナに付いて鏡水の元に向かう。
ルナは大きな襖の前で止まった。
「鏡水様。巫女達がお見えでございます。」
「いいぜ。入れ。」
中から返事が返され、ルナは襖を開けた。
「何か用か~?」
相変わらずやる気のない顔で鏡水は座っていた。
「単刀直入に言うわよ。あんたの所に妙な動きをする妖怪がいるらしいわね。誰なの?」
憂羅の問いに鏡水は答えた。
「カラカサの事か?確かにアイツは怪しいけど。」
「そいつよ!そいつが妖魔を増やしてるのよ!」
憂羅は大声を上げてしまう。
“カラカサってカラカサお化けの事なの?”
「そうです。カラカサさんは以前から変な動きが多くて、怪しいと思っていたんです。ですが、妖魔と繋がっていたとは・・・・・・。考えもしませんでした。」
「カラカサの妖怪は今どこなんだ?」
魔奈里が尋ねた。
「さあね。アイツとはあんまりウマがあわなくてな。アイツの事は何にも知らねーんだ。」
鏡水は退屈そうに言った。
「もしかしたら西の洞窟かもしれません。鏡水様、行った方が宜しいのでは?」
ルナが淡々とした口調で問う。
「う~んそうだなぁ~。面倒だが行ってみるか。」
鏡水はノロノロと立った。
「ここのハズですが・・・・・」
ルナはポッカリ空いた洞窟の前で足を止める。
「ここ?」
憂羅達も洞窟を見る。
“・・・・・・・・・いるわね。物凄く邪悪な気配がする。”
零は強張った表情で呟く。
「ええ。さっさと片付けましょ。」
憂羅は大幣を構え、声を張り上げる。
「妖魔達!あんたらがいる事は分かってんの!出てらっしゃい!」
すると、洞窟の奥から邪悪な妖気が押し寄せてくる。
『なぜだ・・・・・・なぜ我々の居場所が分かった・・・・・』
妖魔の一匹が悔しげに言う。
「そんな事は話す理由が無いのよね。とっとと消えちゃいなさい!」
それを合図に皆、一斉に攻撃を始める。
(面倒なので、戦いのシーンは省きます。なのでご想像にお任せします。)
「ふぅ~・・・・・やっとおわっったわ。」
憂羅は腰の手をあてる。
「はい。裏切り者も捕まえましたし。」
そう笑顔で話すルナの手には傘の妖怪がぶらさがっている。
きっと、今からタップリルナに拷問される事だろう。
「でも、こんな事したって妖魔は消えねーんだけどな。」
鏡水はポツリと言った。
「仕方ないでしょう。妖魔は人や妖怪の心の闇から生まれるもの。妖魔を消すには、人や妖怪も消えなきゃいけないんですから。」
紅葉はあくびをする。
「それに、いざとなれば巫女がいるしな!」
魔奈里は呑気に笑った。
「そうね。妖魔がいなくならない限り、巫女もいなくならない。」
憂羅は空を見上げた。
「・・・・・・・・・それって良い事なのかしら・・・・・?」