第9話 帰宅
「やっと…やっと着いたよ。
予備燃料多めに持っといて助かったよホント。
まさか途中で補給出来ないとは……たどり着けてよかった。」
アルはげっそりと疲れた笑顔をしている。
「大丈夫?」
「ヤバいかも。」
所属している特殊部隊[world protection mechanism]の本部の前で、
そんな会話を交わす2人。
本部の建物はそれほど大きくはなく民家が6つ連なったような物がある程度だが、
庭は模擬訓練をするためにかなりの広さがある。
部隊に所属する者は
「家」と呼んで慕っている。
いきなりドアがバン!!と開いた。
「アル!!アルじゃない!…と確かハル君!!遅いわよ!心配したのよ!!?」
家から飛び出してこっちに走って来たのは精悍な顔立ちで、
カーゴパンツにTシャツというラフな格好をした少女だった。
「お〜!モモ〜。」
両手を広げてモモと呼ばれた少女を抱き上げたアル。
「心配かけてゴメッ!!?んなぁ!!?」
ミシィ……
隣でその光景をポカンて見ていた
ハルには骨が軋む音が確かに聞こえた。
「ちょっ!待っ、ゴメン!!タンマ、話を!話を聞いて!話……」
アルがぐったりとして動かなくなった。
「……アルさん?」
返事が無い、ただの屍のようだ。
「ふー、とりあえず気がすんだ。さて、『ついでに2人目いっとくかぁ』。」
気を失ったアルとは対照的なすがすがしい顔でモモはハルを見た。
ハルには少女が『ついでに2人目いっとくかぁ』 そう言ったのが確かに聞こえた。
「ハル君、なんで帰るのが遅かったか教えて貰えるかしら?
3秒以内に!!!」
モモはハルに、コーヒーを『余計な物』扱いした時にアルがした笑顔と同じ顔をしていた。
「2…1…」
「ひっ…」
「0……タイムオーバーね…残念だわ。本当に。」
モモに抱きすくめられたハルの体に少しずつ力が込められていく、
「うっ…」
短い悲鳴を上げて全身から力が抜けた。
2人を気絶させたモモは
「ん〜〜!よし!おじさんのトコまで引っ張ってくかぁ!」
満足気に伸びをした後、清々しい顔で2人の襟を掴み、
ズルズルと家の中まで引っ張っていった。