第51話 知ってるか?
葵にそう指摘されて注意して見ると胸が静かに上下している上に弾丸が当たった額からは血が流れず青痣が出来ているだけだ。
「……眠って…る……?あ、アルさん、縄」
「そう、情報も出来るだけ手荒な方法を使わずに欲しいしこんだけ離れてたらもしかしたら今回の標的じゃないかもしれない。お、サンキュー。それに、もし今回の標的じゃないなら俺達を狙った理由も知りたいしね。さて……」
そう言うと眼帯を着け直したアルは手早く2人を縛りあげた。正座で手を後ろに回された状態で手足をがっちりと固定させている縄は芯に細い鋼鉄のワイヤーが入っている丈夫な物で、道具を使わなければ人間の力で切ることはまず不可能だ。
「よっし!起こすか、和秋、その辺に倒れてて、交渉がしやすいから。アオちゃん、和秋の上脱がせて包帯をなんかで赤くして巻いといて、モモ、水ちょうだい」
「オッケー!!任せて!!!」
「嫌な役………アルめ…覚えとけよ…」
「はい、無駄使いしないでね」
「ん。サンキュ、」
アルは和秋に倒れるように指示すると縛りあげた幼い2人の内歳上と思われる方の頭から服を濡らさないように気を付けながら水を被せた。
「………ん……うぅ……?」
水を被った少年は焦点の定まらない虚ろな目で自分達を撃った張本人を不思議そうに見つめる。
「やぁ少年、おはよう。気分はどう?」
「…ん……怒りに…燃える…高…潔な…蛇を知、って…るか……?」
アルのフレンドリーな問いかけに寝惚けた幼い少年は半分寝言のような小さな声で質問をしてきた。意味の分からない質問をしたあと少年は、また眠そうに黙り込んだ。